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大森望「私が選んだベスト5」 夏休みお薦めガイド

Book Bang 8/11(木) 8:00配信

 夏休み、時間を気にせず読み耽りたい大作と言えば、ドナ・タートの世界的ベストセラー小説『ゴールドフィンチ』全4巻。題名は、17世紀オランダの画家ファブリティウスの名画「ゴシキヒワ」を指す。A4サイズより少し大きいぐらいの小さな油絵だが、主人公テオは、13歳のとき、メトロポリタン美術館でこの絵と運命の出会いを果たし、その日を境に人生が一変する。ディケンズ『大いなる遺産』の現代版とも評される、恋あり犯罪あり活劇あり、波瀾万丈の人間ドラマ。

 対する東山彰良『罪の終わり』は、22世紀のアメリカが舞台。文明崩壊後の世界を描く超弩級の傑作『ブラックライダー』の前日譚にあたるが、『ゴールドフィンチ』と同じく、こちらも導入部は瑞々しい少年小説。15歳の主人公が、拾ったバイクを動かすエンジンを求め、荷車つきの自転車で片道80キロの道のりを旅する挿話から、物語の世界にぐいぐい引き込まれる。

 同じ“文明崩壊後”ものでも、北野勇作の連作短編集『カメリ』はペーソスあふれる日常の物語。赤いリボンをつけた模造亀(レプリカメ)の女の子を主役に、人間がいなくなった世界の奇妙に懐かしい風景が描かれる。

 柳下毅一郎『皆殺し映画通信 冥府魔道』は、邦画メッタ斬りレビュー集の第3弾。今回は、「寄生獣」「さよなら歌舞伎町」「ジョーカー・ゲーム」「劇場版MOZU」などの有名作品から、聞いたこともない企画ものまで、2015年の50本を斬りまくる。けだし、修羅の道は果てしない。

 南波一海『ヒロインたちのうた』は、アイドルソングの作り手(作曲家・作詞家)23組のインタビュー集。昨年、彗星のごとくデビューした謎の新人(経歴が謎すぎて、誰か有名作家の変名では……とも噂された)星部ショウの初インタビューなど、貴重な証言満載。

[評者]――大森望(翻訳家・評論家)

※「週刊新潮」2016年8月11・18日夏季特大号

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最終更新:8/11(木) 8:00

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。