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日本人のルーツを探ろう

Wedge 8/11(木) 11:20配信

 日本人は、いつどこから来たのか?

 約3万年前に台湾から渡来した沖縄ルートを検証するため、7月17日に国立科学博物館チームによる航海再現実験が行われた。

 草舟による人力の航行で、まず与那国島・西表島間の約75キロに挑んだのだが、強い潮流で北に流され、安全のため漕ぎ手が伴走船に移動。翌18日に航海断念が発表された。

 残念だが、次回の試みに期待したい。

直毛と天然パーマ

 ところで私は、今回のプロジェクトを率いた科博の海部陽介氏(人類史研究グループ長)の名前には聞き覚えがあった。

 昨年12月、沖縄県で発掘相次ぐ旧石器時代の人骨を取材すべく、那覇市の沖縄県立博物館・美術館を訪ねた時のことである。

 博物館の港川人の人骨展示コーナーに、肉付けし復元した港川人の模型が2体あった。どちらも裸体で、ボサボサ髪の髭面だが、一方の頭髪は直毛なのにもう一方は天然パーマ。天然パーマの方がやや外国人っぽい。

 1970年に民間人の大山盛保によって沖縄県南部の具志頭村(現、八重瀬町)の港川採石場で発見された人骨=港川人は、一緒の地層の木炭の年代測定により約2万年前のものとされ、日本を代表する旧石器時代人だ(沖縄の石灰岩土壌はアルカリ性で人骨が残りやすいが、九州以北は骨の溶ける酸性土壌なので、旧石器時代遺跡が1万カ所以上あるのにもかかわらず、人骨は約1万7000年前の静岡県の浜北人の1例のみ。しかも断片であり、港川人のような全身骨格ではない)。

 2体の復元模型のうち、直毛の方は2007年に博物館が製作したもので、本土の縄文人系である。天然パーマは、下顎骨の特徴から港川人をオーストラリア・アボリジニ集団と近縁と見る科博の海部陽介氏らの説を採用した、2014年版の港川人だ。

 つまり最新の学説では、港川人はアジア南方起源と見なされているわけである(航海実験は、その証明の一環でもある)。

 案内してくれた研究者によれば、「お客さんの感想はどちらもウチナンチュー(沖縄人)」(笑)らしいが、それはともかく、2体で目立つのは持ち物の違いだった。

 2007年版は片手に木の槍、もう一方の手にヤンバルクイナ2羽を持っていて、2014年版の方は片手にオオウナギ、もう一方の手にモクズガニ3匹を吊り下げている。

 なぜ獲物が変化したのかといえば、2009年に発掘調査されたサキタリ洞遺跡(南城市)の約2万年前の炭化層から、大量のモズクガニのハサミや巻貝の殻、オオウナギの骨などが出土したからだ。港川採石場とサキタリ洞は同じ雄樋川下流域にあって、約1・5キロしか離れていない。サキタリ洞はかつての港川人の生活域と考えられたのだ。

 私たちのイメージする祖先の姿は、新発掘・新学説によってガラリと変わってしまう。

 サキタリ洞遺跡の発掘は画期的だった。シカやイノシシを主な食料とする本土の旧石器人と異なる食生活だったことが一つ。

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最終更新:8/11(木) 11:20

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