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ドナルド・トランプ、ヒラリー暗殺を示唆する問題発言でテロを扇動

ローリングストーン日本版 8/11(木) 15:00配信

大統領選の共和党候補ドナルド・トランプは、憲法修正第2条擁護派の人々やヒラリー・クリントンへ向けた発言により、暗示的にテロ行為を扇動している。

ゲーム理論で読み解くドナルド・トランプの戦略

2016年8月8日(米現地時間)、ドナルド・トランプは共和党の基本経済政策について予め用意したプロンプターを棒読みし、選挙活動の"再起動"図ったが、その翌日、これまでにないほど酷く危険な言葉をアドリブで発した。選挙活動中にトランプは他にも、ジョン・マケインの戦争捕虜経験を批判し、メキシコ人をレイプ犯呼ばわりし、イスラム教徒を国から締め出すと発言し、ゴールドスター・ファミリー(名誉戦傷勲章受章者の家族)を批判したり、ロシアに対し大統領選のライバル(クリントン)へのハッキングを促したりと、数々の問題発言を放ってきた。

8月8日、ノースカロライナ州ウィルミントンで行った演説でトランプは、最高裁をはじめとする判事をヒラリー・クリントンが指名することに対する憂慮の意を表明した。「もしヒラリー・クリントン氏が判事を指名する立場になったら、我々には為す術がなくなる。(武器携帯の権利を定めた)憲法修正第2条を擁護する人々には、それを止める手段があるかもしれない。私にはよくわからないが」。

よく考えてみて欲しい。2大政党のひとつの大統領候補者が、憲法修正第2条擁護派に対し、政敵への"行動"を促しているのである。トランプ陣営の選挙対策チームによると、(発言は)憲法修正第2条を擁護する人々に政治的な結束を呼びかけたものである、としている。一方でクリントン陣営や、ネット上の声はそれとは異なる解釈をしている。つまりトランプ氏の発言は明らかに「政敵に対する暴力を示唆している」と見ている。

「クリントンや判事たちに対して武器を取れ」というトランプの発言

今回の騒動では、クリントン側の肩を持たざるをえない。トランプの発言は、銃の所持を支持する特定のグループが、クリントンや彼女の指名する判事たちに対して何か事を起こすように仕向けている。そのグループができることとは? 銃の使用に他ならない。

「クリントンや判事たちに対して武器を取れ」というトランプの発言を、多くの人々は無意味な発言として受け止めるだろう。ほとんどの人々はジョークとして受け流すだろうが、中にはトランプ氏の発言を真剣に受け止め、行動を起こす可能性を探る人も必ずいるはずである。

つまりトランプはテロ行為を扇動したのである。法にも引っかからない暗示的なstochastic terrorism(暗示的なテロの扇動)については、この10年以上に渡り学会でたびたび論議されてきた。その言葉が今回はぴったり当てはまる。stochastic terrorismについては、数年前にとあるブロガーが取り上げ、「言葉やその他の方法で不特定の人々を扇動し、暴力やテロ行為を起こすように仕向けること。統計学的に予測することはできるが、個別には予測不可能」と定義している。

トランプ氏の今回の発言をもう少し掘り下げてみよう。彼の発言に従ってクリントン氏や判事らに対する暴力行為を起こす特定の個人を予測することは、統計学的に不可能である。しかし、どこかの一匹狼がいつかトランプ氏が示唆したような暴力行為を起こす可能性があることは間違いない。

言い換えれば、トランプ氏はどの犬が聞いているかもわからず、やみくもに犬笛を吹いているのである。

妊娠中絶反対派による暴力行為に反対する人々は、残念ながらこの状況をよく理解している。ヴァレリー・タリコは、2015年11月にコロラドスプリングスの中絶関連施設プランド・ペアレントフッドで発生した銃撃事件を受け、暗示的なテロについて書いている。彼女が挙げているテロのパターンは100%、ドナルド・トランプと彼の支持者に当てはまる。ただ、実際に暴力沙汰が起きていないだけである。

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最終更新:8/11(木) 15:00

ローリングストーン日本版

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