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オバマ大統領の理想と米国の核兵器の現実

JBpress 8/11(木) 6:10配信

 オバマ大統領が広島を訪れた際に語った「核兵器のない世界の実現」という言葉は、今年の広島原爆の日に広島市長によってなされた「平和宣言」や、同じく安倍首相の「あいさつ」でも繰り返して取り上げられた。日本では、アメリカにそのような方向へ向かってほしいという期待を込めて、オバマ大統領の広島訪問や「核兵器のない世界の実現」という言葉は評価されているようである。

 しかしアメリカでは、オバマ大統領の理想はあまり関心が持たれていない。

 オバマ大統領が日本やヨーロッパで口にしている「核兵器のない世界の実現」といった表現や、広島訪問というパフォーマンスをきっかけとして核軍縮を実現させようという反核団体なども存在する。だが、軍事関係者も一般の人々も、「核兵器のない世界」が実現するとは到底思っていない。

 その最大の理由は、多くのアメリカ国民は、アメリカ軍が7100発もの核弾頭を保有し、ロシアや中国の核戦力に睨みを効かせている現状を知っており、「核兵器のない世界」が異次元の世界に感じられるから、ということであろう。

■ 1538発の核弾頭が実戦配備中

 「アメリカが7100発の核弾頭を保有している」という表現は軍事的には正確性を欠いているといえるかもしれない。7100発(正確には2016年夏現在で7071発)のうち2500発が「退役済み核弾頭」だからだ。これらの核弾頭は、もはや実戦用兵器貯蔵庫に収納されておらず、廃棄処理を待っている状態である(ただし、それらの核弾頭は解体するまでは現役復帰させて再び使用することも不可能ではない)。

 そして、4571発が「現役の核弾頭」である。そのうち1538発が実戦配備中であり、3033発が兵器庫に貯蔵されスタンバイの状態の核弾頭だ。

 ちなみに、アメリカ以外の核保有国の「現役の核弾頭」の推計値(米国防総省や米国務省の資料などを基にArms Control Associationが推定)は、ロシアが4500発(そのうちの1648発が実戦配備中)、フランスが300発、中国が260発、イギリスが215発、パキスタンが120発、インドが110発、イスラエルが80発、そして北朝鮮が8発(最大で)と見積もられている。

 このようにアメリカが依然として世界最大の核弾頭保有国であるという事実がある以上、いくらオバマ大統領が「核兵器のない世界の実現」などと口にしても、多くのアメリカ人にとっては絵空事に映ってしまうのである。

■ 米核戦略の基本方針は不変

 核弾頭保有数に加えて、日本やヨーロッパにおけるオバマ大統領の非核化宣言が、少なくともアメリカ国内では全く空虚な絵空事と受け止められてしまっているのは、オバマ政権がペンタゴンにゴーサインを出している米軍核戦略と、「核兵器のない世界の実現」とが矛盾しているからだ。

 アメリカ軍が保有している各種核弾頭や、それらを運搬し発射するプラットホーム(弾道ミサイル、巡航ミサイル、戦略原潜、爆撃機、ミサイルサイロ施設など)の多くが耐用年数に近付きつつある。そこで、アメリカ国内では、核兵器の老朽化を契機として核兵器保有に関して再考すべきであるという声が、反核団体だけでなく軍関係者の中からもあがった。

 1つの立場は、「老朽化した核兵器を新型に変えるにあたって、大幅に保有数を削減すべきである」という立場である。反核団体などは、このような流れが実現すれば、やがて核兵器廃絶へとつながるものと期待した。

 それに対して、老朽化した核兵器をすべて新型核兵器に置き換えるのは財政的にはきわめて困難であるが「予算の許す限り新型兵器の開発を続けつつ、現存の核兵器を近代化させていく方式をとるべきである」という立場がある。

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最終更新:8/11(木) 6:10

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