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GPIFの保有銘柄、個人投資家が真似しようとしたら?

HARBOR BUSINESS Online 8/11(木) 9:10配信

 7月29日、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年3月末時点で保有していた株式や債券の銘柄を公表した。(参照:「2015(平成27)年度 業務概況書 会見※PDF」)ここでは、2016年3月末時点ではなく、2015年3月末時点と、1年4か月前の保有銘柄が開示されたことに注意されたい。なお、GPIFは、保有銘柄のランキングが個別企業に対する評価を表しているものではないとしている。

 株式を中心に記していくが、2015年3月末時点での保有銘柄数は、国内株式が2037社、外国株式は2665社である。国内株式の保有銘柄については、1位がトヨタ自動車で時価総額が1兆5499億円、2位が三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)で8229億円、3位が三井住友FGで5173億円と続く。

○国内株式保有銘柄(時価総額順)

注:保有株数も開示されているが、記載を省略。

銘柄名:時価総額 (億円)

1.トヨタ自動車:15,499

2.三菱UFJFG:8,229

3.三井住友FG:5,173

4.本田技研工業:5,079

5.ソフトバンク:4,805

6.日本電信電話:4,210

7.みずほFG:4,156

8.KDDI:3,911

9.ファナック:3,679

10.キヤノン:3,431

◆外国株式の銘柄は?

 同様に、2015年3月末時点での外国株式の保有銘柄については、1位がアップルで時価総額(円換算)が6025億円、2位がエクソン・モービルで2784億円、3位がマイクロソフトで2777億円と続いている。

○外国株式保有銘柄(時価総額順)

注:保有株数も開示されているが、記載を省略。

銘柄名:時価総額 (億円)

1.APPLE,INC.:6,025

2.EXXON MOBIL:2,784

3.MICROSOFT:2,777

4.JOHNSON AND JOHNSON:2,350

5.NESTLE CO:2,319

6.WELLS FARGO:2,193

7.NOVARTIS:2,029

8.GENERAL ELECTRIC:1,948

9.JPMORGAN CHASE:1,835

10.PROCTER AND GAMBLE:1,819

となっている。

◆銘柄の状況はパッシブ運用を反映

 GPIFの国内株式保有銘柄を見ると、自動車、銀行が上位に来ており、明らかに日経平均の構成銘柄(上位5銘柄は、1位からファーストリテイリング、KDDI、ソフトバンク、ファナック、京セラの順)とは異なる。

 一方、東証株価指数(TOPIX)を見てみると、2014年12月末日時点のデータと若干古いが、構成銘柄トップ10は、1位からトヨタ、三菱UFJ、ソフトバンク、三井住友、本田技研、みずほ、KDDI、NTT、キャノン、日立となっている。(参照「TOPIX」※pdf)したがって、GPIFとTOPIXの構成銘柄トップ10は似通っており、差異は、ファナックと日立の違いだけである。

 同様に、2015年12月末日時点のデータであるが、JPX日経400の構成銘柄トップ10は、1位からJT、NTT、KDDI、本田技研、武田薬品、みずほ、ソフトバンク、三井住友、セブン&アイ、三菱UFJである。(参照:「日経インデックス400ファクトシート」) TOPIXと比較すると、JPX日経400はGPIFの構成銘柄トップ10からの差異が広がっている。

 GPIFの国内株式パッシブ運用とアクティブ運用の割合は、2015年度末時点、パッシブ比率82%、アクティブ比率18%である。パッシブ運用では、従来の TOPIXに加えて、「JPX日経400」、「Russell Nomura  Prime」及び「MSCI Japan Standard」の3つのイン デックスが採用されている。

 以上の通り、GPIFの国内株式運用は、現状ではTOPIXに連動する運用が主となっている。個人が、GPIFの国内株式運用を真似ようとすれば、TOPIXに連動するETFを買えばよいということになる。

 他方、GPIFの外国株式運用については、2015年度末時点、パッシブ比率84%、アクティブ比率16%である。パッシブ運用では、先進国のみで構成される MSCI KOKUSAI(除く日本、円ベース、配当込み、管理運用 法人の配当課税要因考慮後)から新興国も含むMSCI ACWI(除く日本、円ベース、配当込み、管理運用法人の配当課税 要因考慮後)に変更することで新興国の経済成長の取り込みを図っている。

 上記と同様に、個人が、GPIFの外国株式運用を真似ようとすれば、MSCI ACWIに連動するETFを主に買えばよいということになる。このように、GPIFの保有銘柄開示を個人の運用に活用するとすれば、TOPIXやMSCI ACWIに連動するETFでの運用というシンプルな結論へと至ることを確認できたことは有益である。

◆保有開示の目的

 GPIFの保有銘柄開示は、受託者責任が問われ、国民や被保険者へ受託者責任を果たしていることを示す必要性が生じ、基本ポートフォリオの見直し等のニュースから国民の関心が高まり、また、世界の年金基金の標準は保有する個別銘柄情報の全面開示が一般的であることが背景にある。

 保有銘柄開示に関して、期待される効果として、①GPIFの運用に関する透明性や説明責任の向上、②GPIFの運用に対する国民の信頼の向上、③(GPIFの運用に対する信頼が向上することで)国内株式市場・国内企業に対する海外投資家等の信頼の向上にもつながるとされている。

 世界の年金基金の標準は保有する個別銘柄情報の全面開示が一般的であり、韓国を除けば即時開示になっている。各国内の株式資産額に対する年金資産の占有率は、韓国(12.5%)とGPIF(7.6%)は非常に高く、欧米諸国に比べ、影響度が非常に大きい。銘柄開示による市場への影響について、試行・検証が必要である。即時全⾯開示により、アクティブ運用マネジャーの戦略を類推されるといったことも懸念されている。

 GPIFは、毎年7月に前年度末(4か月程前)時点の状況を公表することを最終目標としている。第2回のGPIFの保有銘柄開示は、2016年11月25日に予定されており、8か月前の2016年3月末時点の保有銘柄の情報が開示される。第3回が2017年7月で、2017年3月末時点の状況が公表される。第4回以降は、第3回と同様となる。銘柄開示による市場への影響についての検証結果やアクティブマネージャーに対するヒアリング等を踏まえ、市場への影響等の懸念がないことを確認した上で、次の段階に進む予定となっている。

<文/丹羽 唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/6(火) 17:45

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