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代替案の準備はパフォーマンスの低下を招く?“プランB”は不要なのか

@DIME 8/12(金) 8:09配信

今取り組もうとしている計画がもしうまくいかなかった場合に頼りになるのが代替案や“プランB”である。常に最悪の事態を考えた用心深くフレキシブルな態度は危機管理のうえで確かに素晴らしいもののように思える。しかし、あまりにも念入りにプランBを考えるのは、本当にしたいことをぼやけさせてしまうことにもなりかねず、場合によっては本末転倒になるのかもしれない。

■“プランB”の用意がパフォーマンスを低下させる

 科学系オンラインジャーナル「Scientific American」に先日掲載された記事は“プランB”を用意することに対してアメリカで行なわれた最新を研究を紹介し、きわめて懐疑的な論説を展開している。

 大学生を募って行なわれた実験では、単語単位でバラバラに分解された文章を再び組み立てる課題が参加者に与えられた。成績が良かった者にはSOYJOYのようなお菓子のバーが報酬として与えられることが課題の前に約束された。

 そして実験参加者は2つのグループに別けられた。1つのグループはそのまま課題に挑戦してもらったのだが、2つめのグループは、課題に挑む前にこの報酬のバーを手に入れる他の手段を考えてもらったのだ。実験に参加せずに短時間アルバイトをして得た金でバーを買うことから、実際に行なえば犯罪だが店でバーを盗んだり、持っている者から奪い取ったりとさまざまなことが考えられるだろう。つまりこれが“プランB”だ。

 そしてどちらのグループも課題に取り組んだのだが、成績に明確な違いが出たのである。“プランB”を持った状態で課題を行なったグループのほうがおしなべて成績が低かったのだ。他の手段のことなど考えずに、とりあえず目の前の課題に素直に取り組んだほうが良いパフォーマンスを発揮できることがわかってきたのだ。

 背水の陣、火事場の馬鹿力などという言葉もあるように、この実験結果は本来怠け者である人間の心性を鑑みれば、納得のいくものではないだろうか。直面している課題に対して、プランBという“保険”をかけた状態だとつい手ぬるくなってしまい、100%のパフォーマンスを発揮できなくなるということだろうか。

 もちろん、現実の生活においてさまざまな“保険”は必要であるし、日々の仕事も全部が全部“真剣勝負”というわけでもないだろう。しかし、ここ一番の局面にあってはあまり余計なことは考えずに“前進あるのみ”で取り組んで正解ということのようである。

■プランBは不安を払拭し成功の原動力を失わせる

 当然この“プランB”問題は、ビジネスの分野でこそ真剣に考察されなければならないだろう。スモールビジネスと起業を支援する「MOBE」のサイトでもまた、プランBが本命の“A案”へ及ぼす悪影響についての見解が述べられている。

 プランBの問題を取り沙汰する前にまず、A案とは何かを明確に定義しなければならない。ビジネスマンとして、あるいは起業家としてチャレンジしたい大本命のA案には、自分の情熱をできる限り盛り込むべきものであるということだ。したがってA案を立案した後は、その代替案となるプランBは残りカスのようなものであり、気持ち的には立案しようがないというのが人情であるという。

 考えに考え抜いたA案だとしても、もちろん上司やクライアントから却下されることはあるだろう。むしろ却下されることのほうが多いとすらいえる。それでもこのA案を本気で立案したからこそ、その後に決してプランBではない別のA案を立てることができるということだ。ということは企画をあらかじめ複数用意するのではなく、却下されてからまた同じ情熱を持って“A案”を何度も企画立案すればよいということにもなるのだ。記事では“A案”を貫き通した2人の人物を紹介している。

●ジェームズ・ダイソン(ダイソン創業者)

 デュアルサイクロン掃除機で有名なダイソンの創業者、ジェームズ・ダイソン氏だが、工業製品デザイナーとして最初の成功を収めるまでに5126案もの掃除機のデザインを却下されたという。もちろんすべて本気で取り組んだ“A案”である。

 ダイソン氏がデザインを売り込む際には、代替案を一緒に提示することなどはせず、常に自信を持った1点だけであったという。そして5127点目の掃除機のデザインが遂に採用され、今日のダイソンの成功に繋がったのだ。

●シルベスター・スタローン(俳優)

 映画『ロッキー』や『ランボー』シリーズで知られる俳優のシルベスター・スタローンも常に“A案”しか考えなかった人物であるという。

 俳優、監督として成功を収める前のスタローンはホームレス寸前の窮乏状態にあったというが、それでも定職に就くことはなく映画界に企画を提出し続けたという。この時期にもしスタローンが何らかの仕事に就いてしまえば、あの『ロッキー』は生まれなかったということだ。貧窮状態にあるからこそ“A案”を出し続けることができたのだ。

 ここから学ぶことができる知見とは何か。それは、もしかしたら失敗するかもしれないというある程度の“不安”が、成功へ繋がる努力の原動力になっているということである。

 とはいえ不安を払拭したいのは人情であり、そのためにプランBが立案される。リスクをなるべく回避したいのは、もちろん人間の理性的な行為でもある。しかし、このプランBは、同時に成功の原動力をなくしてしまうものでもあったのだ。つまりプランBを立案する時点で“A案”の真剣さが薄れてしまうということだろうか。

■行き先が決まってなくとも会社を辞めてよい

“プランB不要論”を極論すれば、いかに目の前の挑戦に対して高いパフォーマンスを引き出せるかという問題になってくるのだろう。“保険”をかけたおかげて真剣味に欠けるくらいならプランBなどいらないということでもある。そしてこれは転職の際にも当てはまる傾向であるということだ。

 ヘッドハンティングなどの場合を除き、転職を考える場合、理性的な態度としては当然ながら辞める前に次の職場を探すことが意識されてくるだろう。転職のリスクを最小限に抑えるための方策としては当然のことのように思える。しかし今の仕事を辞めたいという思いが生じていながら、次の職場のことを考えてグズグズと思い煩っているようなら、プランがなくとも思い切って辞めてしまったほうがよいという声もあるようだ。キャリア情報サイト「Jobs&Hire」の記事では、辞めてしまっていい5つのケースを解説している。

●危険を回避するため
 仕事においても身の安全が第一である。高い賃金と引き換えに身を危険に晒してはならない。この危険は、物理的に危険な職場環境という意味もあれば、周囲に危険な人物が多いという意味もある。いずれの場合においても身の危険を感じることがあるのなら今の職場をすぐに離れるべきだ。

●健康を損なわないため
 今の仕事と職場環境に健康を損なう要素があるのなら、すぐに辞めてしまってもよい。長期的にみて健康を損なえば仕事でパフォーマンスを発揮することがどんどん難しくなっていく。無理して留まらずに別の環境で活躍すべきだ。

●生活のため
 現在の仕事でもし家計が赤字になっているのであれば、それは辞めるべきサインになる。ある程度高い収入を得ていても、ストレス解消のための衝動買いや遊行費、あるいは医療費が増えるなどして家計が赤字になっているケースもあり、健康と個人の財政のためにも仕事を辞めることを考える良い機会になる。

●人生の犠牲者にならないため
 仕事、人間関係、家庭にすべての労力を費やしてしまっていると自覚した時、まさに「もううんざりだ」と痛感したとき、それは仕事を辞める契機になり得る。人生の犠牲者になる前に仕事を辞めるべきだ。

●惰性に流されないため
 消耗するばかりで、自分の成長が見込めないどころか能力を鈍らせ、淀んだ気分になる仕事であればすぐに辞めるべきである。

 ビジネスの上で忍耐や辛抱が必要とされることもあるが、上記のようなケースでは、次の行き先が決まっていなくとも早く今の職場を離れたほうがよいということだ。確かに迷いながら意に沿わない仕事を続けるのは人生の無駄遣いということにもなるだろう。もちろん最終的な判断を下すのはそれぞれの個人であり、あくまでもこれらはアドバイスである。人生が毎度毎度“リア充”な状態ばかりでないことも現実であるが、プランBという“保険”に頼りすぎることなく仕事にもプライベートにも“グッドパフォーマンス”を発揮したいものだ。

文/仲田しんじ

@DIME編集部

最終更新:8/12(金) 8:09

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