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水沼史郎 ≒ 風間俊介こそ最強の“メガネ男子”だ!『コクリコ坂から』

リアルサウンド 8/12(金) 6:00配信

 ジブリ作品といえば、人々が憧れるイケメン男子がどの作品にも必ずと言っていいほど登場している。その中でも最高の“メガネ男子”と言えるのが水沼史郎だろう。宮崎吾朗監督作品第二作目『コクリコ坂から』(「金曜ロードSHOW!」日本テレビ系列/本日よる9時~ノーカット放送)の、前回(2013年1月)のテレビ放映時の視聴率は13%。ジブリ作品としては決して高いとはいえない数字だったが、SNSを中心に多数の反響を呼んだ。そして、公開後のTwitterホットワードで、「コクリコ坂」を抜き1位を記録したのが「水沼」だった。ヒロインのメルこと松崎海でもなければ相手役の風間俊でもなく、二人の友人である“メガネ男子”水沼史郎だったのだ。

 水沼史郎は、生徒会長を務める頭脳明晰な、見かけに違わぬ秀才キャラだ。しかし、彼はただの真面目系文系男子ではない。本作は1963年の横浜を舞台に、取り壊しが決まった学校の古いクラブハウス“カルチェラタン”の存続に向けて奔走する高校生たちの恋と友情、そして家族の絆を描いた物語だ。カルチェラタンの存続運動を起こす筆頭人物が、主人公・メルが恋する風間俊と、その相棒の水沼史郎である。学校側が振りかざす権力へ反旗を翻している中心人物というだけで、水沼がただのメガネ男子ではないことは明らかである。いやむしろ、彼はまったく“おとなしい”キャラクターではないのだ。

 メルの妹・空が男子の巣窟であるカルチェラタンにやってきた際には、肩に手を回し、「出口までエスコートしよう、哲研に捕まると大変だからね」の一言とともに、玄関まで送り届けるという何ともキザな行動を見せる。後にメルの家で身内の送別会が行われるのだが、ちゃっかり俊と共に参加し、帰り際には妹の空を赤面させているのだから、まったく隅におけない男なのだ。あの“エスコート”の後に何かあったのかと思わず勘ぐりたくなってしまうのは筆者だけだろうか。そうした女性に対する接し方にただならぬ達者さが見える一方で、友情に熱いところも人気を集めている理由のひとつだろう。俊がメルとの関係に悩んでいるのを察すると、さり気なく俊の立ち小便の横に付き、視線は合わせず「なにかあったのか」と尋ねる。俊が答えなくても、余計な詮索もしない。この“分かっている”距離感が同性の支持も集めているのだろう。

 多くの女性がメガネ男子に惹かれる理由として、“ギャップ萌え”が挙げられる。水沼は知的でありながら行動的であり、クールに見えてワイルドな一面もあるという、まさにギャップの塊である。その水沼の最大の見せ場が「白い花の咲く頃」(昭和初期に流行した岡本敦郎が歌った歌謡曲)の独唱シーンだ。カルチェラタン存続か、取り壊しかで紛糾する学生たちの討論会を視察に来た先生たちを前に、全員が一体となって万事うまくいっているとアピールするため、彼の独唱で場をまとめる。この度胸と機転の利かせ方には誰もが惹かれてしまうはずだ。そして、この水沼に生命を吹き込んでいるのが、ジャニーズきっての演技派・風間俊介である。

 風間はテレビアニメ「遊☆戯☆王」シリーズで主人公・武藤遊戯の声優を務めるなど、声優としても確かな実績をもっており、本作でもその存在感は際立っている。“歌わない”ジャニーズである風間の美声を聴くことができるのも今作の注目ポイントだ。水沼の第一声は「諸君!時間だ」と男子生徒を先導し、続けて「行きたまえ」と俊の飛び込みを促す。この登場シーンから水沼は圧倒的存在感を示すのだが、このキザ過ぎる台詞が思わず納得してしまう説得力を備えているのは、幾多の演技経験を積み重ねてきた風間俊介だからこそである。

 一方で、長澤まさみが声優を務めた主人公・メル、岡田准一が演じた風間俊も、多くの人が憧れを抱くキャラクターだ。炊事洗濯など家事全般をこなし、弟の靴下に穴が空いていれば裁縫をし、誰かが困っていれば自ら進んで助けを申し出る“イマドキ”ではない女の子。対する俊も学園のヒーローとして、同性からも異性からも慕われるカリスマ性の持ち主。しかし、そんな主役の二人に負けないくらい強い印象を残すのが、水沼というキャラクターのすごさである。彼の最後の台詞、「閣下、あの二人に人生上の重大事が発生しました。二人は駆け付けねばなりません」と、文字に表すと非常に浮いているようにも見えるが、本作では最も印象に残る台詞のひとつとなっている。風間の低音でありながらも、伸びやかさのあるその声が、走りだすメルと俊を後押ししているように感じるのだ。
 
 本作の舞台となった1963年は、東京オリンピックの前年。そして本作の企画・脚本を手がけた宮崎駿が、東映動画に入社した年でもある。劇中で描かれる、希望に溢れるまっすぐな若者たちの姿は、当時の日本国民が抱いていた未来像や、宮崎駿自身の回想が投影されているのだろう。カルチェラタンの取り壊しを救う徳丸理事長のモデルが、スタジオジブリ設立の大スポンサーである徳間康快であることが明らかにされていることからも、宮崎駿のノスタルジーが随所に織り込まれている作品と言えそうだ。風間俊と水沼史郎のコンビも、東映入社後コンビを組むことになった高畑勲と自身をモデルにしているのかもしれない。

石井達也

最終更新:8/12(金) 6:00

リアルサウンド

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