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残りものに福あり、住友重工の幸運

Wedge 8/12(金) 16:10配信

 「これこそ『残りものに福があった』ということではないでしょうか」ーー。

首位固めに走る

 造船・重機業界関係者の一人は苦笑気味にこう話した。今、住友重機械工業の新居浜製造所(愛媛県新居浜市)にある住友重機械搬送システムのクレーン製造工場はフル操業が続いている。ゴライアス(門型)クレーンなど造船所向けの需要が好調なためだ。造船所向けのクレーン需要は相次いだ造船不況の直撃を受け、造船業界の投資意欲が低調だったため、事業からの撤退が相次いだが、住重はしぶとく生き残ったうえ、昨秋には三菱重工業のクレーン事業部門(三菱重工マシナリーテクノロジーのクレーン部門)を吸収合併し、三菱重工が得意としていたコンテナクレーンなど港湾クレーン分野などにも業容を拡大、総合クレーンメーカーとしての立場を一段と強めていく方針だ。

 国内の造船業界は今年5月末で、「約3400万総トンとほぼ3年分の受注残を抱えフル操業状態が続いている」(日本造船工業会関係者)状況にある。ただ足元の受注動向をみると、世界的な海運市況の低迷もあって不振が続いているが、「昨年末までのIMO(国際海事機関)による船舶の環境規制強化などにより需要の前倒しなどによって昨年の受注量が約2000万総トンと急増した」(同)ためだ。

 こうしたなか、国内の各造船所は「深刻な人手不足に見舞われている」(日本造船工業会関係者)ほどのフル操業が続いている。さらに各社ともこれまで主力商品としてきたバラ積み貨物船が中国経済低迷の直撃などを受けて、需要が急減。LNG(液化天然ガス)運搬船、コンテナ船、自動車運搬船、フェリーなど新たな船種が建造できる体制作りを急いでいる。

 こうした背景もあって、今、国内の造船所では久方ぶりに設備投資意欲が盛り上がっているのだ。なかでも業界最大手の今治造船(愛媛県今治市)が大型コンテナ船を連続建造できる大型ドックを丸亀事業所(香川県丸亀市)に新設しているほか、旧ユニバーサル造船と、IHI・マリンユナイテッド(IMU)が合併して業界2番手に躍り出たジャパン・マリンユナイテッド(JMU)や常石造船(広島県福山市)、名村造船所、サノヤスなども老朽化した設備の更新や省力化に向けた設備投資を計画している。

 設備投資の中心となるのが、造船所のドックをまたぐように設置されている巨大なゴライアスクレーン、ドック脇を走行して船体ブロックなどを運搬するシブ(肘)クレーンなどのクレーン類、かって国内で造船所の新設が相次いでいた時期には住重のほか、三菱重工、IHI、三井造船など造船・重機大手を中心に手がけるメーカーも多かったが、1970年代以降の造船不況のなかで、撤退するメーカーが相次いぎ、しぶとく生き残り、技術を磨いた住重はゴライアスクレーン分野では三井造船が自社の千葉事業所向けに制作したものを除くと、国内向けではシェア100%。

 特に今治造船が丸亀事業所に新設中の大型ドック向けの1330トン吊りという世界最大級のゴライアスクレーン3基も同社が一括受注しており、現在、新居浜製造所で製作中だ。また、ドックサイドを走行し、ブロックなどを吊りあげ運搬するジブクレーンでも国内造船所向けで80%近いシェアを持ち「手持ち受注残も24基に達している」(住重関係者)という。

三菱重工のクレーン事業を吸収

 こうしたなか、住重ではこのクレーン事業(住友重機械搬送システム)を、今後の中核事業として育成、強化していく方針だ。具体的には昨秋までに三菱重工の産業用クレーン事業(三菱重工マシナリーテクノロジーのクレーン事業)を住友重機械搬送システムが分割吸収したのを機に、これまで三菱重工が得意としていた発電所向けの揚炭クレーン、港湾荷役用のコンテナクレーンなどの分野まで業容を拡大していく考えだ。

 とくに分割吸収によって「三菱から約140人の設計部門を含めた技術者を新たに受け入れ、クレーン事業の技術力は格段に強化された」(住重関係者)としており、今後は海外市場を含めた対応力をさらに高めていく考えだ。

葉田邦夫 (経済ジャーナリスト)

最終更新:8/12(金) 16:10

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