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なぜ会社にクレームを入れる超過保護な親が増えているのか?

@DIME 8/12(金) 11:10配信

最近では、超過保護の親が、わが息子・娘のことで会社にクレームを入れるという話も珍しくなくなってきた。実際に、このことをおもしろおかしく書きたてるメディアも少なくない。だが、企業を取材していると、事態はもっと深刻なようだ。親が子どもの上司や会社の人事部などに「うちの息子になぜ、こんなことをするのか!」と、怒りの電話をするといったことが少しずつ増えているのは事実である。しかし、その理由やいきさつを知ると、長時間労働やいじめ、パワハラなどが見えてくる。今回は、そういったクレーマーの親たちの実態について紹介したい。皆さんは、何を感じるだろうか。

■「過労死になったら、許さないからな!」

 2009年、大手家電メーカー(社員数5000人)の営業部に勤務する、30代前半の男性社員の上司のところへ、その父親から電話が入った。

「ウチの息子の残業が多すぎる。家に帰るのが、深夜1時になる時もある。あなたは、管理職として労務管理ができていないのではないか。いつまでこんなことが続くのか。万が一、息子が過労死したら許さないからな!」

 上司によると、たしかにその社員の残業は多かったという。実際に、600名いる営業部員の半数以上が平均で月50~70時間の残業をしていた。30代前半のこの男性社員の残業時間も、そのくらいだったという。しかし、そのことを父親から指摘されるとは想像もしていなかったそうだ。結局、部下の男性は他部署に異動させることにしたという。

■「転勤させる理由をもっと丁寧に説明してほしい」

 2014年、大手精密機器メーカーの東京本社営業部に勤務する20代後半の男性が、長野県の支社に転勤になることが決まった。翌日、男性の母親から上司に電話が入った。

「息子は、20代後半ですでに3度目の転勤となる。その理由をもっと丁寧に説明してほしい。転勤を命じるタイミングもあまりにも急で、会社はこちらのことなど考えていないのではないか」

 上司は母親に対して、丁寧に説明したという。しかし、冷静な話し合いにはならなかった。そして、上司はこう話した。

「本来、あの男性社員が自分に直接、言うべきことであり、母親が直接クレームを入れてる内容とは思えない」

 その後、男性社員は会社の辞令どおり、長野県に赴任し、現在もそこに所属しているという。

■「なぜ、辞める時まで説教されないといけないのか?」

 都内でカレーライスのチェーンを経営する40代の男性社長が、2014年に取材で話してくれたケース。フリーターとして働いていた男性(20代後半)が無断欠勤を繰り返し、連絡がとれなくなった。そこで社長自身が彼の家まで行ったところ、母親と口論になった。

「息子の使い方に問題がある。店長が息子に厳しい物言いをする。それが度重なり、嫌気がさしている」

 社長は、その場で「息子さんの勤務態度に大きな問題がある」と説明したところ、母親は「たとえ、それが事実であったとしても、丁寧に教えるのが雇う側がするべきことではないか」と反論した。「しかも、なぜ会社を辞める時まで、あなたに説教されないといけないのか?」と興奮し、強い口調で返してきたという。社長は普通に話し合うことができる相手ではないと察し、その場を離れたという。

■「どうして、息子をいじめるのか?」

 テレビ局で報道番組などを作る制作会社がある。キー局の関連会社で社員数は300人程度。ここで2015年に、退職強要があった。これは、本人の意志に反して退職を迫ることで、「不当な行為」ともいわれる。被害にあったのは、30歳前後の男性だ。

 当事者は、中途採用で入社し、3年目だった。上司である40代後半の副部長や、その言いなりになる40歳ほどの男性プロデューサー数名によるいじめが執拗に行なわれていたという。できない仕事を大量に与えられる。しかも、その多くはしなくともいいような仕事である。少々のミスであろうと罵声を浴びせられる。そのような日々が2年も続いたある日、母親から電話が入った。

「うちの息子をなぜいじめるのですか?何がいけないのですか?そのあたりを説明してほしい」

 ところが、上司は要領を得ない対応をしていたという。その部署にいる女性の契約社員が証言をし、その後、男性社員は弁護士を通てじ、内容証明郵便を社長宛に送ったという。結局、いじめは止むことなく、男性社員は退職した。

 今回、紹介したのは、私がこの10年間の取材で知った事例のごく一部である。親の側に常識を超えた行動があり、理解に苦しむものも少なくない。しかし、会社の側にも責められるべきことがある。この親たちを「クレーマー」として片づけるだけで、問題は解決するだろうか。そもそも親が介入する以前に、上司は管理職である以上、問題を解決する責任がある。そのあたりは、会社全体で考えられてしかるべきだ。

文/吉田典史

@DIME編集部

最終更新:8/12(金) 12:46

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