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ガラス瓶入りコーヒー飲料はいまだに健在! 懐かしの昭和の「ジュース」に想いを馳せる一冊

ダ・ヴィンチニュース 8/12(金) 17:30配信

 日本の「ジュース史」は、1853年に浦賀へペリー艦隊とともにやってきたレモネードに始まるという。黒船に検分のため乗船した幕府の役人と通訳が、炭酸入りレモネードの提供を受けたのだ。当時はコルク栓で閉められていた瓶を開けると「ポンッ!」という音がして、役人たちはひどく驚いたとか。どうやら銃声と勘違いしたらしい。この『日本懐かしジュース大全』(清水りょうこ/辰巳出版)はそんな日本の「ジュース史」ガイドに始まり、昭和から続く懐かしい「ジュース」たちをジャンルごとに写真入りで紹介している。

 タイトルにもあるように、本書では「ソフトドリンク全般」を「ジュース」と称しているが、現在「ジュース」の名称は食品表示基準上「果汁100%使用の品」と定められている。しかし、著者である清水りょうこ氏のこだわりから「昭和の庶民感覚」として、「ジュース」と呼称している。確かに、平成の現在でこそ「ソフトドリンク」の呼称は広まっているようだが、昭和の世なら果汁飲料は勿論、炭酸飲料もコーヒー飲料もまとめて「ジュース」と呼んでいたのだ。ゆえに本記事内でもそれに倣い「ジュース」で統一する。

 さて、これら「ジュース」の花形といえば、やはり炭酸飲料だろう。業界団体による清涼飲料水品目別生産量推移を見ても、炭酸飲料が群を抜いており、本書も「ジュース史」の後は炭酸飲料から紹介が始まる。その先頭に立つのが「ジュース」の草分けであるラムネだ。昭和に比べ、かなり市場規模が縮小しているものの、いまだに縁日の定番として根強い人気があり、スーパーやコンビニでも扱われている。本書では昔ながらのオールガラス製のラムネ瓶、現在主流となっている樹脂製飲み口となったラムネ瓶、そしてペット樹脂のラムネ瓶を並べて紹介している。見比べると、ペット樹脂瓶もしっかりラムネ瓶としてのデザインを再現しており、商品の魅力としてパッケージデザインの重要性を再認識させられる。

 昔ながらのオールガラス製瓶は、飲み口の感触がとても滑らかでファンも多いのだが、残念ながら現在はそれを作る機械自体が既に無く、もう再生産ができない。だからガラス瓶ラムネを扱っている店で、瓶の持ち帰りは厳禁である。ちなみにラムネの定義だが、中身にサイダーとの差異はなく、要は「ラムネ瓶を使用しているか否か」だそうだ。そして、その大きな特徴が栓代わりのビー玉である。炭酸ガスの圧力がビー玉を押し上げ、内側からしっかり密閉される仕組みだ。子供のころ、上手く栓を開けられず溢れさせてしまい、手がベタベタになった経験は、小生だけではないはず。

 炭酸飲料に次いで大きなシェアを占めているのがコーヒー類である。本書では世界初の缶コーヒーにして、3年で姿を消した幻の「ミラ・コーヒー」の紹介や「UCCミルクコーヒー」の各種タイアップデザイン缶、更に男性の「顔」でお馴染み「ポッカコーヒーオリジナル」の12代にわたるデザインの変遷などを掲載。驚かされたのは王冠で蓋をするジュース瓶入りのコーヒー飲料が、今でも売られていることだ。広島県尾道市にある後藤鉱泉所の「ヤポネコーヒー」である。以前は全国の駄菓子店で扱われていたが、缶やペットボトルに押され、現在は工場直売所とその近隣の飲食店のみになってしまったという。勿論、ラムネ瓶同様に瓶の持ち帰りは厳禁。この工場で生産される各種の瓶入り製品を並べた写真は、昭和にタイムスリップした感覚も味わえる。

 本書を読めば、今までいかに数多くのブランドが生み出され、そして消えていったかがよく分かる。大手メーカーでも短命な製品は結構あるもので、あのコカ・コーラ社でさえ1993年に「タブクリア」という無着色コーラを発売したが、1年も経たず販売終了。それでもメーカーは、競って新製品を開発し新規需要の開拓に挑む。ヒット商品はそうした中から生まれるのだ。消えていった商品たちも無意味ではない。その存在は無くなっても、そこにつぎ込まれた情熱は新しい製品へ、確実に受け継がれているのだから。

文=犬山しんのすけ

最終更新:8/12(金) 17:30

ダ・ヴィンチニュース

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