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原油価格のさらなる下落が8月危機を招く?

JBpress 8/12(金) 6:10配信

 原油相場に再び関心が高まっている。

 8月1日に米WTI原油先物価格が3カ月ぶりに1バレル=40ドルを割り込み、弱気相場入りしたかと思われた。だが、4日に発表された米エネルギー省の統計でガソリン在庫が再び減少となったことから、原油価格は同40ドル台に回復している。

 8月3日付「日本経済新聞」は、エネルギー分析の第一人者とされる米国の経済アナリスト、ダニエル・ヤーギン氏のインタビューを掲載した。このインタビューには今後の原油市場を占う上で重要な論点が盛り込まれている。そこで、今回のコラムではこれらについて筆者の見解を述べてみたい。

■ 供給過剰は本当に解消に向かっているのか? 

 まず原油市場の需給状況だが、ヤーギン氏は「供給過剰は解消に向け動き始めており、再び(今年2月につけた1バレル=20ドル台に)戻るとは見ていない」としている。

 その理由として、供給面では「米国の原油生産量が昨年4月に比べ日量約100万バレル減少している」ことを強調している。さらに原油価格急落で原油開発関連投資が大幅に減少しているため、「原油の需給環境が近いうちに逼迫する事態も想定しなければならない」と警戒感を強めている。

 これについての筆者の正直な感想は、「今後生産が開始される深海油田のことが考慮されていない」というものである。

 低油価にもかかわらず、世界各地の深海油田の開発は順調に推移しており、2017年にはブラジルやメキシコなどの深海油田の生産開始によって世界の原油生産量は日量約160万バレル増加する見込みである。

 需要面では、ヤーギン氏は「中国は引き続き重要な市場だが、2014年までの10年間のような旺盛な需要増は見られない。今後10年はインドが非常に重要だ」としている。今年第1四半期にインドの原油需要の拡大幅が初めて中国を上回った。直近のインドの原油需要は日量約360万バレルだが、2040年には現在の1.8倍の同約650万バレルに増えるとの予測(国際エネルギー機関(IEA))がある。しかし、筆者が以前のコラム(5月19日付)で述べたように、金融面の脆弱性からインドは「第2の中国」にはなれないと見たほうがよい。

■ サウジの財政は火の車、増産凍結合意は困難

 次にOPECの役割についてである。ヤーギン氏は「2014年11月の減産見送りでOPECは原油価格の調整役としての役割を終えた。原油価格はOPECではなく市場が決めるようになった」としている。

 OPEC諸国は4月の原油生産凍結合意に失敗したが、その後、ベネズエラとエクアドルを中心に一部の加盟国が再び非OPEC産油国とともに増産凍結合意を取りつけようとする動きが出ている(8月5日付ウォ-ル・ストリート・ジャーナル)。イランが9月までに制裁前の原油生産レベル(日量400万バレル)に到達する可能性が高いことから、今度こそイランも巻き込んだ包括的な合意ができるとの期待が高まっているからだ。

 提案国が絶好の機会と考えているのは、9月26日アルジェリアで開催される国際エネルギーフォーラムだ。だが、サウジアラビアが首を縦に振らないことには、物事は何も進まない。ヤーギン氏は「(サウジアラビアが)改革の柱である原油以外の収入の多様化を進めるには、逆説的に原油収入が必要となるため、サウジアラビアは原油の販売量とシェアを重視する」としているが、筆者も全く同感である。

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最終更新:8/12(金) 6:10

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