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道徳に厳密さと厳格さを求めるカント哲学

NHKテキストビュー 8/12(金) 15:00配信

2016年8月の『NHK 100分de名著』は、カントの『永遠平和のために』を取り上げます。講師を務める津田塾大学教授の萱野稔人(かやの・としひと)さんに、カントの生い立ちと人となりについて伺いました。



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イマヌエル・カントは、1724年にプロイセンのケーニヒスベルク(現・ロシア領カリーニングラード)で生まれたドイツの哲学者です。父は実直な馬具職人、母親は熱心なキリスト教徒という敬虔(けいけん)な家庭に育ったカントは、幼い頃から勉学に励み、16歳のときにケーニヒスベルク大学に進みます。もともとは神学を志して入学したものの、当時ニュートンの活躍が大きな話題になっていたこともあって、大学ではニュートンやライプニッツの自然学などを熱心に学んだと伝えられています。



卒業後しばらくは家庭教師などで生計を立てていましたが、その後、大学講師、王立図書館司書を経て、46歳のときに母校ケーニヒスベルク大学の哲学教授に就任。以後は哲学のほか、地理学や自然学などさまざまな講義を行いながら、研究に没頭する日々を過ごすことになります。



その後10年ほどは学術的にはさほど目立った活動はありませんでしたが、1781年に『純粋理性批判』を刊行したことで、一躍カントの名は哲学界に知れ渡りました。この本は、人間の理性は何を知ることができ、何を知ることができないかを考えて、知の限界を確定する──といった認識論について書かれたもので、のちに発表された『実践理性批判』『判断力批判』とともに「三批判書」と呼ばれ、その後の哲学(ドイツ観念論哲学)の大きな流れをつくることになりました。



カント哲学の大きな特徴としては、道徳的な考え方を重視し、道徳に厳密さ、厳格さを要求した点が挙げられます。嘘をつくことは道徳的にはいけないことですが、「時と場合によっては嘘をついても許されるのではないか」と多くの人は思うのではないでしょうか。しかしカントは、「いかなる場合であっても絶対に嘘はついてはならない」と考えました。



カントが、厳密かつ厳格な考え方を愛したことは、彼の墓に墓碑銘として刻まれた次の言葉からもうかがえます。



「我が上なる星空と、我が内なる道徳法則、我はこの二つに畏敬の念を抱いてやまない」



この言葉を読むと、天体が一定の法則性のもとで動いているのと同じく、人間のなかにある道徳にも厳密な法則性が存在する──とカントが考えていたことがわかります。彼は、人間の内面にある法則性を発見することこそが、人間の知性の営みであるととらえていたのです。



カントは私生活においても徹底して厳密さ、厳格さにこだわり、規則正しい生活を自らに課していました。毎朝決まって早朝5時に起床し、書斎に入ってまずは紅茶を2杯飲んでから講義を行い、昼食後はどんなに悪天候の日であっても同じ時間に同じコースを散歩するのが日課だったとか。彼が散歩する姿をみて、近所の人は時間を確認したといいますから、時間へのこだわりは相当のものがありました。また、カントは研究に没頭して恋をする暇がなかったのか、79歳で亡くなるまで独身を貫きました。



こうしたエピソードを聞くと、人付き合いが苦手な、とっつきにくい堅物(かたぶつ)をイメージしますが、実際にはそれほどでもなく、友人や学生たちと食事をともにしながらウィットに富んだ会話を楽しんだようですし、カントの大学の講義は話題豊富で面白いと評判を呼び、常に満員だったという話も伝わっています。



■『NHK100分de名著 カント 永遠平和のために』より

NHK出版

最終更新:8/12(金) 15:01

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