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地方再生なのに一極集中が続くわけ --- 岡本 裕明

アゴラ 8/13(土) 7:10配信

かつて地方の人からすると東京は「恐ろしいところ」と言われました。東京出身の者としては聞き捨てならないわけですが、理由は(人間が)冷たそう、(人々の動きの)スピードが速そう、複雑すぎて難しそうでついていく自信がない、というわけです。

最近、この言葉を聞かなくなったのは若い人を中心に情報が行きわたったことがあるかと思います。東京がどんなところか詳しく見えるようになり、マイナスイメージよりも「面白そう」「おいしそう」で僕も私も東京へ、ということなのかもしれません。むしろ、地方の疲弊ぶりは深刻で駅前のかつての繁華街にはコンビニと食堂が寂しげに営業し、人が集まるのはパチンコ屋だったりするわけです。これでは若者を地方に括り付けておく方が難しいというものでしょう。

月曜日の日経トップは「企業の首都圏転入最多」となっています。サブタイトルが「昨年13%増、働き手確保狙う」で「一極集中歯止めかからず」とあります。企業業績はおおむね良好で攻める経営が重視されています。攻めるならば顧客、取引先、さらには情報が集中する東京はうってつけでありましょう。また、名刺に記載される本社の住所が「東京都港区…」ならば格好いい上に凄そう、儲かっていそう、信頼できそう…となるわけです。

新聞記事にある転入転出のグラフが日本経済の歩みを見せているかのようです。80年代初頭から03年ぐらいまでは地方の時代でありました。つまり、企業が首都圏の外に本社を動かす流れです。その後、今日に至るまで東日本大震災の直後を除き一極集中が続きます。80年代は不動産の高騰という問題がありました。多くの企業は高すぎる東京本社の維持費に悲鳴を上げ、地方に向かいました。また、当時はまだまだ日本は若く、地方でも活力がありました。

その後、政治機能を首都から移転するという議論もありました。かなり本格的な議論が進み、日本は本気でブラジルが意図的に作り上げた政治機能都市、ブラジリアのような街を作るのかと思いきや、地方移転したくない政治家や官僚がせっかくの盛り上がりをあっさり潰してしまいました。

地方勤務をするサラリーマンの方が思うことは「いつかは本社に」ではないでしょうか?同様に会社が首都に移転するその意味は人が首都を目指しているとも言えます。それに対して地方は「都落ち」であって日本の歴史背景が反映されているかもしれません。

アメリカの都市を考えてみるとNY、ワシントン、ボストン、アトランタ、シカゴ、ロス、サンフランシスコ、シアトルなど巨大都市があちらこちらで成長し、かつ、それぞれの都市に特徴が見られます。金融であり政治であり、ITであり、製造業であったりするわけです。あるいは教育というのもあるかもしれません。お国自慢ではないですが、それぞれの都市に地域特性を持たせています。

カナダでも経済のトロント、フレンチカナディアンのモントリオール、アジアゲートウェイのバンクーバー、資源のカルガリー、政治のオタワなどそれぞれ性格が全く違う都市であります。では日本をそのカテゴリーで分類できるかといえばとにかく巨大な東京、製造業の名古屋、商人の大阪、アジア大陸との接点の博多となるのでしょうか。しかし、札幌、仙台、高松といった都市はその特徴を書き出しにくいでしょう。その地域の中心ではありますが、それ以上のものもない気がいたします。

何故、地方に色が出ないのか、といえば役人も企業も東京中心主義であり、地方を理解し特徴を持たせた都市づくり、地域経済づくりを進めなかったことはあろうかと思います。例えば一時話題になった徳島。IT普及率が高く、関連の起業者も多かったのですが、その後、話題になりません。それはせっかくのチャンスを魅力ある政策等でさらに引き付け、面白い街づくりを進めなかったからでしょう。極端な話、徳島と東京を結ぶLLCをはじめ、特定産業誘致の優遇税制、不動産のあっせんや人材確保、さらに遊びを充実させたり夜の徳島を魅力的にするということも必要でした。またこれらは官民合同で進めるべきでした。

官民と申し上げたのは官の仕事は原理原則に従い、骨格を作るのが得意ですが、そこに魅力はありません。民間はその骨格にボディという形を上乗せすることで一般人がわかりやすい内容に仕立てあげることができます。

日本はどうしてもお役所主導でことが進みます。そして業界団体などとの軋轢の中でギリギリの調整が進むというのがいつものパタン。それゆえ例えば民泊のルール作りもいつまでたってもはっきりしないわけです。こんなことしていればせっかく盛り上がった民泊ブームも消えかねません。(いや、たぶん、あと1年ぐらいでブームは終わると思っています。)

地方再生は官が主導するというより官民一体化で投資を呼び込む仕掛けが必要だと思います。やみくもに地方の時代を作ろうとしても何も生まれません。その場所だからその産業が必要だ、と思わせる論理性も必要でしょう。

早く地方再生を進めないと疲弊は思った以上に加速度を増して進んでいるような気がいたします。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人(http://blog.livedoor.jp/fromvancouver/) 8月12日付より

岡本 裕明

最終更新:8/13(土) 7:10

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