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同窓会にはご注意を!背筋も凍るある物語

JBpress 8/13(土) 6:00配信

 先日、地元で旧友たちと飲みました。社会人に成りたての頃までは往来があったのですが、その後はお互いの転職や結婚、そして先の大震災やらで、しばらく音信不通になっていました。

記事中で紹介する本の書影(画像)

 久しぶりに顔を会わせたのですが、懐かしさと安心感がすぐに空白を埋め、お互いの近況から昔話まで、その後の話題は尽きません・・・。

 翌日の二日酔いも後悔にならないほど、楽しい一夜でした。あらためて、同窓会を開きたくなってしまったものです。小学校を卒業してはや30年弱。実家ごと地元を離れた友人たちが多いため連絡も取りにくく、なかなか難しいですが・・・。

■ 「田村」はまだか

  そんな同窓会を舞台にした小説の1つが『田村はまだか』(朝倉かすみ・光文社)。

 舞台は、札幌のススキノにあるスナック「チャオ!」。その小さな店内のカウンターを占めるのは、40代の幼馴染みたち。小学校の同窓会から流れて来た彼らは、酒がまわりながらも、友人の「田村」を待ち続けていました。

 父親がおらず、家庭的には恵まれなかった「田村」。しかし、その境遇にも負けない実直で真摯な人柄は、周りの友人たちに大きな影響を与えていました。

 大雪で列車が遅れ、同窓会に参加できなかった「田村」を今か今かと、首を長くしながらチャオで待つ面々。

 果たして、「田村」は無事に合流することができるのでしょうか。そして、なぜに彼らはそこまで「田村」を待ち焦がれているのでしょうか・・・。

 話は戻って、前述の旧友たちとの飲み会。まさか、自分たちが仕事や家庭、健康の話題で盛り上がるとは、夢にも思っていませんでした。仕事や家庭の話は「大人」がするもので、子どものころは、目の前には真っ白な世界が広がっていました。

 いざ、自分があのころ見上げていた「大人」の年齢に差し掛かった現在、果たして精神面は現実に追いついているのだろうか、という不安が常につきまといます。

 それでも、久しぶりに旧友たちと飲んだことで、自分の立ち位置が確認でき、あらためてまた日常に向き合える気持ちになれました。

 恐らく、チャオにいる面々にとっては「田村」がそのような存在なのでしょう。その「田村」はというと、ページが進むにつれ、ようやく姿を現しますが・・・。

 その場にいない人物を中心に据える展開が、物語に深みを与えている本書において、実際に本人が現われるラストに向かう下りには、賛否両論があるかと思います。しかし、それを差し引いても、人生の機敏を見事にすくい取った展開は素晴らしいです。

 チャオにいる面々と共に、なかなかやって来ない「田村」にヤキモキしながら、ぜひ自分だけの「田村」を思い浮かべながら読んでみることをお勧めします。

■ 好きな先生、嫌いな先生

 ところで、旧友たちとの飲み会になると、必ず話題に上がるのが、それまでお世話になった先生方の思い出話。もう一度会いたい先生がいる一方で、やはり苦手な先生もおり、その暴露大会で盛り上がりました。

 誰にでもある先生との関係をモチーフにした小説が、『まっぷたつの先生』(木村紅美・中央公論新社)。

 同じハウスメーカーに勤務する建築士の吉井律子と派遣社員の猪俣志保美。年齢も働き方も違う2人でしたが、それぞれの子ども時代、一時的に中村沙世が担任していたという共通点がありました。しかし律子と志保美は、入り組んだ事情から、その共通点には気づいていません。

 一方、2人の共通の担任だった沙世は、その後、教師という職業に挫折し、前を向けなくなっていました。その3人に、ベテラン教師の堀部弓子が絡み、物語は進んで行きます。

 弓子の教え子でもあった律子は、沙世に好印象を抱いています。逆に、志保美は、沙世には嫌な思い出しか残っていませんでした。

 考えてみれば、生徒にとってはたった1人の先生でも、先生から見れば多数の生徒のうちの1人。しかも相性の問題があるので、どの生徒ともうまく接するというのは、実はなかなかハードルの高い事なのかもしれません。

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最終更新:8/15(月) 12:50

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