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中国映画界で起きている“日本映画バブル”その理由を探る

HARBOR BUSINESS Online 8/13(土) 9:10配信

◆来年にはアメリカを抜き、中国が世界一の映画大国に⁉

 中国映画界に異変が起きている。’16年春、昨年日本でも大ヒットした『ビリギャル』が公開されるやいなや、約3800万元(約6億円)の興行収入を記録し、中国国内の日本実写映画の歴代興行記録を更新。さらに人気少女漫画『イタズラなKiss』や手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』など、日本産コンテンツの中国版の実写映画化・ドラマ化が次々と進められている。

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 これまでは日本のコンテンツは中国のネット配信では人気だったが劇場での公開は稀であった。日本コンテンツのリメイク実写映画の躍進にはどのような背景があるのか。中国で圧倒的な人気を誇る『イタズラなKiss』の日本映画製作とその中国販売を手掛けるアジアピクチャーズエンタテインメント・上野由洋CEOに話を聞いた。

「中国が空前の映画ブームの渦中にあることが前提にあります。現在の世界の映画市場規模は米国が1位ですが、中国は国策で映画産業の育成を進め、スクリーン数でも米国の4万を上回る10万スクリーンを目指す構え。’17年には米国を抜いて中国が世界一の映画大国になるといわれています」

◆ウケているのは「中国人にない発想」

 事実、中国の映画興行収入記録は年々更新を続けており、今年公開された『美人魚』は540億円以上と、’15年に公開され過去最高といわれた『モンスターハント』の約381億円を軽々と超えた。こうした活況は製造業、不動産に続く中国第三のバブルとまで呼ばれるが、問題となるのがコンテンツ力なのだという。

「いまや中国映画一本の平均興行収入は30億円前後。『映画は儲かる』が若手実業家の共通認識となり次々と映画制作会社が誕生していますが、オリジナルコンテンツを製作する土壌はまだまだ未成熟。結果として彼らは海外コンテンツのIP(知的財産権)を獲得しようと血眼になっているのです」

 ユニークなのは、あくまでIPを獲得し、中国人キャストでリメイクする場合が多い点だ。現地の人気俳優を使うことでより集客が見込める意図もあるが、中国では1年間に上映できる外国映画が34本までと決められており、リメイクし国産映画として上映することで制約を回避しているのだという。

「特にニーズがあるのはアニメや漫画、東野圭吾や村上春樹など、すでに中国で知名度のある作品。人気作ともなると1億円の値がつくケースも。とはいえ『日本には中国人にはできない発想の作品が多い』といわれ、総じて日本産コンテンツへの関心度は高い。ただ制約も多く、戦争や歴史、ホラー、血が流れる描写などはタブー。タイムスリップも禁止です。実は数年前、登場人物が高所から飛び降りることでタイムスリップする映画が流行り、その真似をして死亡者が出たため。多くの中国人はまだ映画に耐性がなく、現実と虚構を混同してしまうのだそうです」

◆一方で消極的な日本のコンテンツホルダーたち

 しかしこの状況でも、多くの日本のコンテンツホルダーは二の足を踏んでいる。その理由は中国に対する不信感だというが、「それは双方にとって損失」(上野氏)。

「確かに以前はプロジェクトが空中分解したり、詐欺が横行したりすることもありました。しかし近年の中国人は自分たちのイメージが悪いことを理解しており、ビジネスマナーが劇的に向上しています。実際、現在の中国の映画業界はハリウッド並の厳格な契約社会。信頼関係のあるトップ同士で話している弊社ではこれまで契約の不履行や入金の遅れといったトラブルはありません」

 上野氏は「あと2~3年もすれば中国は独自の良質コンテンツを増産し始める」と予言する。そうなれば日本産コンテンツの需要にブレーキがかかることは明白だ。この商機を生かすか殺すか。

【上野由洋】

毎日放送記者を経て、中国へ日本コンテンツの輸出などを行う株式会社アジアピクチャーズエンタテインメントを設立。大手新聞社・テレビ局からも相談を受けている。

<取材・文/HBO編集部>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/13(土) 9:50

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