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スカウトも困った「投打の能力」。東邦・藤嶋健人の適性はどっちだ?

webスポルティーバ 8/14(日) 15:04配信

 迷いやためらいは一切なかった。

 打球が左中間を抜けたことを確認した藤嶋健人(東邦)は、一気に二塁ベースに到達した。スタンドは「また打ったよ」という驚きと、「二塁に行っちゃったよ」というどよめきが交錯していた。この打席の前に、藤嶋はすでに三塁打、本塁打、二塁打を立て続けに記録。あとシングルヒットを打てばサイクルヒットを達成できたにもかかわらず、藤嶋は二塁打を打ってしまったのだ。

【写真】「高校BIG3」のひとり、最速152キロ右腕の横浜・藤平尚真

 試合後のお立ち台でのコメントがまたふるっていた。

「ベンチでは『サイクル狙えよ』と言われていたんですが、僕が二塁に行けばまたチャンスが広がると思いました。二塁ならワンヒットで1点が取れる。自分のためよりチームのためなので、何とも思っていないです」

 サイクルヒットを達成するよりも価値のある二塁打を打った男──。大会記録には残らなくても、大会が続く限り語り継がれてほしい名シーンだった。

 この日、4番・ライトとして6打数4安打6打点と大暴れした藤嶋だったが、背番号1を着けているように、本来は東邦のエース・4番・主将の三役を担っている。そして「藤嶋は投手か、打者か」という議論は、スカウトやドラフトマニアの間で昨秋あたりからずっと続いており、その意見は真っ二つに分かれている。

 総合力が高くクレバーな「投」を取るか、爆発的な飛距離を誇る「打」を取るか……。大谷翔平(日本ハム)のように、「二兎」を追えるタイプではない。それぞれに長所がある一方で、投手としてはスケールが小さいという見方もあり、打者としては足が遅く、守れるポジションが限られるという弱点がある。あるスカウトは夏の大会が始まる直前、「この夏が最後の見極めの場になる」と語っていた。

 だが、愛知大会での藤嶋は投打で明暗が分かれた。「投」は34イニングで2失点といつも通りの安定感だったが、「打」は5試合に出場してわずか1安打に終わっている。打率は.077。チームの4番打者としては頼りない成績だが、チームメイトはどのように見ていたのか。

 東三河ボーイズ時代から藤嶋とチームメイトの二塁手・鈴木理央は言う。

「藤嶋はゼロで抑えてくれれば、打てなくてもいいかなと思っていました。いつ打つかわからないですし(笑)。本人も打てないことをネタにしたりしていましたし、暗さを表に出して雰囲気を悪くすることは一切ありませんでした」

 当の藤嶋も、試合開始前の取材で清々しい表情を見せていた。

「難しいことを考えずに、ラクに考えてフルスイングをしたいです。県大会では打てなくて考えることもあったんですけど、それよりも思い切ってやることが大事だなと。1年夏の甲子園は緊張感のほうがありましたが、今は緊張ゼロで、楽しさしかありません。最後なので、みんなで楽しんで思い切りやりたいと思います」

 春以降、藤嶋は打撃フォームを変えていた。グリップの位置を下げ、重心を低くしてガニ股に構える。このフォーム修正によって、今までよりもボールを手元まで呼び込めるようになった。

 甲子園春夏連続出場のプレッシャーから解放された精神的なゆとり。そして打撃フォームの修正。これらの要因が重なった結果、藤嶋はスカウトをさらに悩ませる爆発的な打力を見せつけたのだった。

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最終更新:8/14(日) 15:04

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