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乃木坂46の舞台公演が相次ぐ背景 アイドル×演劇は新たな成熟期へ

リアルサウンド 8/14(日) 17:01配信

 乃木坂46のメンバーが9月~10月にかけて出演する舞台公演が、今月に入って相次いで発表された。

 『嫌われ松子の一生』(9月29日~10月10日:品川プリンスホテル クラブeX)では桜井玲香・若月佑美がWキャストで主演を務め、『墓場、女子高生』(10月14日~22日:東京ドームシティ シアターGロッソ)には伊藤万理華、伊藤純奈、井上小百合、斉藤優里、新内眞衣、鈴木絢音、能條愛未、樋口日奈が出演する。企画としてはこれらは、昨年10月にメンバー8人が出演した舞台公演『すべての犬は天国へ行く』の流れをくむ、小劇場系の名作を乃木坂46メンバー中心で再演するものになる。

 乃木坂46は昨年から、演劇公演について二つの流れを作ろうとしている。ひとつは「乃木坂46」としての枠組みを重視し、彼女たちがアイドルグループであることを前提とした公演、すなわち昨年の『じょしらく』から今年5月上演の『じょしらく弐~時かけそば~』へと続くシリーズである。『じょしらく』シリーズは、実質乃木坂46メンバーのみでキャストが構成されたトリプルキャスト制が敷かれていることも手伝って、乃木坂46というグループ内のダイナミズムを舞台に重ね合わせながら観るという趣きが強い。同時に、乃木坂46が「アイドル」であるという前提を活かし、彼女たちの身体が表現する演劇性や刹那性の意味を問いかけるような構造を作劇に織り込んでみせたのも、この『じょしらく』シリーズである。アイドルがアイドルとして演劇の舞台に立つことの充実感と可能性とを追求するタイプの流れと言えるだろう。

 そしてもう一方の流れが、昨年の『すべての犬は天国へ行く』から、今秋上演の『嫌われ松子の一生』『墓場、女子高生』へとつながる作品群だ。『じょしらく』シリーズとは対照的に、これらの公演では乃木坂46というアイドルとしてあることそれ自体が、そのまま作品にプラスの作用をもたらすわけではない。さらにいえば、アイドルグループのメンバーでとしての肩書は、イメージ上むしろマイナスに働く局面もあるはずだ。また、サポートも兼ねて経験の豊かな舞台俳優をキャストに配し、それらの俳優たちと一線に並べられることで、時に彼女たちの経験の浅さが浮き彫りにもなるだろう。それらのリスクを負ってでも、乃木坂46は演劇への志向を発展させることを重視し、昨年の『すべての犬は天国へ行く』ではケラリーノ・サンドロヴィッチの名作を、緊張感を保って成立させた。今年は葛木英(『嫌われ松子の一生』脚本・演出)、福原充則(『墓場、女子高生』脚本)、丸尾丸一郎(同、演出)ら、さらに若い世代の作家・演出家陣を招聘し、近年の話題作上演を通じて、その流れを推し進める。

 乃木坂46は、結成当初から演劇への志向を明確に打ち出していた。ただし、一方で最も基本的な活動はコンスタントな楽曲リリースを軸にしたアイドルグループとしてのそれであり、その活動との連携や両立も求めざるを得ない。その前提の上での模索が、デビューの年から3年間続いた実験的な企画『16人のプリンシパル』シリーズだった。グループが知名度を獲得しながらキャリアを重ね、またメンバー個々のキャリアが追いついてきたことで、スリリングさと同時にいびつさもはらむ『プリンシパル』シリーズから、本格的に演劇公演へとようやく展開できたのが昨年だったと見ることもできるだろう。昨年と同じ二本の流れをくむ演劇公演が今年も企画されたことで、乃木坂46の演劇に対する姿勢はまた一段、成熟してきたといえる。

 もちろん、こうした演劇を経験することは、メンバーがグループを卒業して以降の活動を見据えるものでもある。アイドルグループ時からステップを重ねつつ演劇分野でキャリアを積む例は、乃木坂46に限らず少なくない。アイドルグループ以外にも枠を広げれば、若手シンガーとしてスタートし、その後ミュージカルで頭角をあらわした知念里奈やソニンらの系譜を想起することもできる。今月、帝国劇場で上演されているミュージカル『王家の紋章』に出演している宮澤佐江は、AKB48グループからそうした道を歩みつつある直近の例だろう。そのような流れを考えるとき、先ごろ発表された生田絵梨花の2017年版『ロミオ&ジュリエット』そして『レ・ミゼラブル』出演は、彼女および乃木坂46の未来にとって、さらなる展望の広がりを見せるものだ。これまでに上演が繰り返され、そして今後も再演されていくはずのこうした作品にあっては、まずはキャスティングに名を連ねること自体が大きな一歩となる。彼女が今後、これらの作品に再度キャスティングされてゆくとすれば、本格ミュージカルの方面にも道を拓くことになり、グループ在籍時と卒業後との活動をごく自然につなげていくものになるだろう。グループに在籍している現段階で、その一歩となる前例を作ったことがまずもって重要だ。

 すでに一昨年、若月が前田司郎作・演出『生きてるものはいないのか』出演を経験しているように、乃木坂46はグループ主導の企画ではない作品への出演の幅が広いのも特徴であり、生田のミュージカル方面の開拓もその大きな一手である。それはもちろん、演劇に重きをおく乃木坂46の、一貫した志向性のあらわれだろう。グループ全体が円熟期を迎え、個々の能力も充実していく中で、その強い志向の継続がどのように花開くのか。今年から来年にかけて発表されている公演で、その成果を確かめたい。

香月孝史

最終更新:8/14(日) 17:01

リアルサウンド

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