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新業態、実験店…「イオン化」進む杜の都。対コンビニ用小型イオンも

HARBOR BUSINESS Online 8/14(日) 16:20配信

 前回までの記事では、仙台市各地の再開発や震災復興計画に参画するかたちで生まれようとしている3つの「復興・防災型イオン」計画と、郊外との競争に加えて中心部どうしとの競合にさらされながらも奮闘する中心商店街エリアの「旧型イオン大型店」の様子を追った。

 しかし、杜の都・仙台における「商業のイオン化」は、こうした大型店のみに留まらない。今回は、コンビニとの徹底抗戦を掲げて仙台市中心部で出店が進められている新業態の「小型化イオン」を追うこととする。

◆「小型化イオン」でコンビニと徹底抗戦

 仙台市郊外~近郊地域で3つのイオン大型店計画が持ち上がっているなか、仙台市の中心部では「小型化イオン」の新規出店が相次いでいる。

 仙台市中心部のとあるオフィスビルの下層階にある「イオン」の文字。到底従来の「イオン」が出店しているようなビルには見えないが、これは、イオンリテールが仙台市などで実験的に展開する小型化イオン「イオンエクスプレス」の店舗だ。

 イオンエクスプレスの店舗は売場面積150~250㎡程度で、コンビニエンスストアとほぼ同規模。東京都内で良く見かけるイオンのミニスーパー「まいばすけっと」にも近い業態で、コンビニに対抗すべく、イオンのスーパーが得意としている弁当や総菜と言った「すぐ食べられる商品」を充実させていることも特徴の1つだ。

 このイオンエクスプレスは、仙台市内では2013年に若林区荒町に1号店がオープンし、これまでに中心市街地の花京院、立町、五橋などから、宮城野区平成などの郊外商店街にも出店を開始、2016年6月現在で7店舗を展開している。

 イオンリテールでは、仙台地区でこうした「小型化イオン」を2019年までに30店舗ほど出店させる計画で、これまでイオンの影響力が比較的弱かった中心市街地にドミナント出店を行うことでコンビニエンスストアに徹底抗戦を仕掛ける構えだ。

 ちなみに2015年現在、宮城県内で一番多いコンビニエンスストアはイオンの最大のライバルである「セブンイレブン」となっている。

◆郊外駅チカには新業態の「都市型ミニスーパー」

 仙台市では「イオンエクスプレス」のほかにも、また異なった業態である「小型化イオン」の出店が行われている。その1つが、2015年12月に太白区の地下鉄南北線富沢駅近くに開業した「イオンタウン仙台富沢」の核店舗であるスーパー「イオン仙台富沢店」だ。

 イオン仙台富沢店はイオンリテールの運営で、同社では初出店となる新業態の「都市型ミニスーパー」。売場面積は840㎡しかなく、先述の「イオンエクスプレス」よりは広いものの、一般的な「マックスバリュ」と比較すると半分程度の面積にとどまる。

 実は、これまで仙台市周辺にはイオン系列の食品スーパーはそれほど多くなかった。2016年現在、宮城県内にはイオングループが全国展開する食品スーパー「マックスバリュ」の店舗は1つも存在せず、かつてあった「ウェルマート」も消滅済み。イオン系列の食品スーパーはマックスバリュ南東北が運営するディスカウントストアの「ザ・ビッグ」が主流で、イオングループは宮城県での食品スーパー展開に遅れを取っていたといってもいい状況だ。

 この新業態の都市型ミニスーパーは売場面積1,000㎡未満を基本としており、出店には大規模小売店舗立地法による規制が適用されないため、出店手続きも比較的容易なものとなる。今後、イオンリテールはこういった都市型ミニスーパーをドミナント展開していく方針を掲げており、こういった「小型化イオン」がこれからの宮城県内での食品スーパーにおける新たな潮流となっていく可能性がある。

◆イオンの「ショールーム」と化す杜の都

 ここまで3回に亘ってまとめたように、杜の都・仙台では、郊外地域から中心市街地まで、あらゆる店舗形態による「商業のイオン化」が急速に進んでいる。

 こうした「商業のイオン化」は仙台のみに限らず全国的に起きていることであり、かつての小売業の雄であったダイエーがイオンへ変わりつつあることを見てもそれは明らかである。

 しかし、そこは21世紀の小売業の雄であるイオングループ。仙台での事例を以て示したように、当然ながらその出店は決してやみくもなものではなく、店舗ごとに地域の実情にあった開発手法や業態を熟考したうえでの出店であるということがよく分かる。

 仙台市では、再開発事業や震災復興需要を見越したうえでの「復興・防災型イオン」の出店・開発戦略と、他地域では展開することのなかった、いわば実験的店舗とも言える新業態の「小型化イオン」により、新たな形での「イオン包囲網」が敷かれようとしており、既存のイオンモールや、イオン流に改装された旧ダイエー店舗などの「旧型イオン大型店」も含めるかたちで、仙台のまちはイオンの小売事業における、いわば「ショールーム」とも言える状態になりつつある。

 杜の都に吹き荒れる「イオン旋風」は、仙台のまちの姿をどこまで変えてしまうのか。

 100万仙台市民は、新たな店舗に対する期待と、将来の「まち」の変貌に対する不安を胸に、これからのイオングループの動向を見守っていくしかない。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中

・西武百貨店、筑波西武・八尾西武を閉店へ-百貨店リストラに突き進むセブンアイ

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ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/14(日) 17:41

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