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4年後の東京五輪はテロの“衰退期”。だが組織分裂の飛び火も?

HARBOR BUSINESS Online 8/14(日) 16:20配信

◆脅威となるのは組織を渡り歩く“フリーランス過激派”

 7月1日、バングラデシュで日本人7人が殺害された無差別テロ事件が日本へ大きな衝撃を与えたが、それ以降もフランスのニースやドイツ南部ミュンヘン、アフガニスタンでもテロが発生するなどテロ脅威が拡散している。

⇒【資料】近年のテロによる犠牲者数

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「テロの危険地域は世界全域であり、今や安全な場所はありません」と話す。

 「ISを中心した過激思想に感化された、いわば『テロ志願者』が起こす無差別テロは大流行期に入っています。志願者は必ずしもISに属しているとはかぎりません。彼らはISから直接命令を受けなくても、世界中で頻発するテロに影響を受けて自発的にテロを起こします。ISではこれら志願者もISのメンバーと位置づけ利用しています」

 イスラム過激派組織の共通目的は「全世界のイスラム化」、「イスラム国家建設」であり、攻撃対象は「十字軍」、つまり欧米のキリスト教中心の国々とその有志連合である。

 当然、十字軍の「異教徒」が多く集まり、堕落した空間と考えるようなリゾート地や高級ホテル、空港、レストランなど場所は狙われやすい。また、企業についても「日本企業は標的にはなりづらいのですが、欧米系企業とプロジェクトを組んでいると巻き込まれる可能性が高まる。日本人7人の犠牲を出したアルジェリア人質事件は、イギリス系多国籍企業のプロジェクトへ参加した日揮の関係者が犠牲になりました」という。

 さらに、テロの危険は、イスラム圏の国々だけでなく、イスラム系移民が多い国々でも高い。

「イスラム教徒が多く住む国は当然ながらテロ志願者が生まれるリスクが高いですが、欧米諸国でも、たとえばフランスもドイツも移民を多く受け入れている国であるだけに、テロの温床が増しているといえます」

◆イスラモフォビアを煽らないのが絶対条件

’20年の東京オリンピックへ向けさらに訪日外国人が増えると予想される中で、日本がテロに対処していくには、テロ組織の基本構成を知ることが重要となる。

「イスラム過激派の世界では、組織のコアな構成員だけでなく、周辺に多くのシンパがいます。また、構成員であっても、比較的自由に組織間を移動したりもします。ファジーな同好会のようなものなのですね。そして、現在はさまざまな過激派組織の人脈に連なる人間が、最も勢いのあるISの流れに乗っかっているのが現状です」

 一見、結束力の弱いこうした組織構成はテロの流行期を過ぎると、予測不能な脅威になりやすい。

「テロで社会をひっくり返すことはできませんから、流行は何年後かには下降期に入ります。もしかすると、東京五輪開幕の頃にはピークは過ぎているかもしれない。しかし、過去の事例からみると、流行の下降期こそ危険でもあります。社会から孤立し、組織が分裂し、弱体化が進むと、組織に残ったコアなメンバーが逆に先鋭化し、大がかりで過激な行動に出る傾向があるからです」

 現在のところ、公安警察もイスラム系住民に対しては徹底的に身元調査をしており、地理的条件などからも日本でテロが起きる可能性は低いが、イスラム教徒に対する偏見などで、たとえばイスラム教徒に対するヘイトクライムなどが起きると、そのニュースがあっという間に世界のイスラム圏に拡散され、過激派を刺激し、テロの口実を与えかねないと黒井氏は話す。4年の間に、テロのリスクを最小限に抑えるには、日本人の意識と国際感覚も少なからず問われてきそうだ。

【黒井文太郎】

軍事ジャーナリスト。安全保障、国際紛争等に精通。紛争地域を中心に約70か国を訪問、約30か国を取材。近著に『イスラム国「世界同時テロ」』(KKベストセラーズ)

<取材・文/HBO編集部>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/14(日) 16:20

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