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猛暑日に犬が他人の車で置き去り 窓を割り救ったら罪になるか

NEWS ポストセブン 8/15(月) 7:00配信

 暑さが続くこの季節になるとよく目にするのが、「車の中に置き去り」というニュース。乳幼児が熱中症にかかって亡くなることもあるが近年は、啓発活動によりその危険性はかなり周知された。ところで、猛暑日に犬が車中に置き去りになっているところを目撃し、窓を割って救出した場合、罪になるか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【質問】
 草野球の帰り、車の中に犬が置き去りにされていました。その日は猛暑で車内の犬はグッタリ。一刻も早く助けないと死んでしまうと思い、バットで窓を割ったのですが、20分ほどして戻ってきた車の持ち主は激怒、弁償しろと詰め寄られました。こういう場合でも、弁償しなければいけないのでしょうか。

【回答】
 ある人の身体や財産に故意、または過失で損害を加えれば、本来は不法行為となります。しかしながら、その人による加害行為から自分や他人を守るためのやむを得ない行為である場合は、正当防衛として賠償責任を免れます。

 今回の場合、犬が高温の車内に閉じ込められて瀕死の状態になっても車の持ち主の財産ですから、仮に故意過失があっても加害行為にはならないので、車を破損したのが犬を助けるためでも正当防衛は成立しません。

 しかし、民法720条2項は「前項の規定(正当防衛の規定)は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する」と定めています。つまり、物によって差し迫っている危険を回避するため、その物を壊しても賠償責任がないのです。

 緊急避難が成立するためには(1)物による危険が急迫していること、(2)その物を壊すほか危険回避の適当な方法がないこと、(3)守る利益と壊す物の価値との間にある程度の均衡が保たれていること、(4)壊すのは原因の物であることです。

 閉じ込めた自動車による危険状況は物によるものといえます。その急迫性の程度とも関連しますが、犬を救う方法としてできたのが窓を壊すことだけであれば(2)は充足すると思います。(3)の点も、助けるのは犬ですから、窓ガラスと均衡が取れないほど価値が低いとはいえません。(4)は問題ありません。

 結局、「急迫の危難」といえるかが問題で、社会常識を備えている人から見て、警察や駐車場管理者に通報したり、開扉技術者などの協力を待っていたら、犬の死亡という結果が回避できないと認識するまでの様子ならば、緊急避難が成立するといえます。しかし、実際には窓越しの判断では難しく、可哀想ですが、警察に連絡するのが最適な手段だと思います。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年8月19・26日号

最終更新:8/15(月) 7:00

NEWS ポストセブン