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建物だけじゃない!国立西洋美術館がすごい理由

BEST TIMES 8/15(月) 12:00配信

中世から現代までの西洋美術史がざっくり学べる

 いわずと知れた、わが国を代表する美術館の一つです。上野エリアの中核的ミュージアムでもあります。2016年5月、世界遺産の諮問機関イコモスによって世界遺産リストへの記載が適当であるという勧告が出され、7月、ついに世界遺産への登録が決定されました。今後ますます注目を集めることになるでしょう。

 国立西洋美術館では大規模な企画展が開かれていますが、常設展も大変充実しています。自館コレクションだけで中世末期から20世紀初頭にいたる西洋美術史を網羅できる美術館は、日本ではここだけです。そういう意味から、実際の作品をリアルに眼にしながら西洋美術を丸ごと学ぶことのできる美術館といえます。

 ビザンチンやゴシックの作品は敬虔な信仰心を偲ばせる古い時代の素朴な味わいを纏っています。ルネサンスになると構造化された絵画へと進んできます。

 ジョルジョ・ヴァザーリの《ゲッセマネの祈り》もその一つで安定感のある三角形の構図が見て取れます。マニエリスムの時代には次第に人物の手足が引き延ばされ動的な表現に変化していきます。

 その様子はエル・グレコの《十字架のキリスト》によく表れています。バロックを経てロマン派にいたると色彩の表現性が際立つようになり、ウジェーヌ・ドラクロワの《墓に運ばれるキリスト》においても色彩同士の関係がよく計算されていることがわかります。

 印象派の時代が到来すると、現実の再現描写にはこだわらなくなり、クロード・モネの《ウォータールー橋、ロンドン》では画家の関心はその場の空気感のようなものへと向かっています。
 
 さらにミロのような現代アートと呼ばれる領域に入ってくると、もはや現実からは切り離された絵画そのものの世界が追求されていることがわかる──と常設展を見ていくうちにおのずと学びが得られるわけです。

 ちょっと教条的すぎる見方を書いてしまいました。別にそんな見方をしなくても全然構わないのはいうまでもありません。それでも、ただ楽しんで見ていくうちにも、何となく美術史の流れが見えてき、見る眼が分厚くなることが期待されます。当館の常設展のボリュームと内容はそれだけのものがあります。

 案外見過ごされがちなのが屋外展示の作品です。ゲートを入ってすぐの前庭右奥にロダンの《地獄の門》があります。ロダンが終生制作に携わった大作で、「考える人」などロダン作品のあらゆるモチーフが含まれています。現在、世界で七つしか鋳造されていない貴重な作品です。

 企画展もいいのですが、日本最高レベルといっても過言ではない国立西洋美術館の常設展、料金も安価ですし、楽しまない手はありません。

 

 国立西洋美術館

〒110-0007
東京都台東区上野公園7-7
03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.nmwa.go.jp/

 

 

営業/9:30~17:30、冬期は~17:00、金曜日は~20:00 (入館は閉館30分前まで)

休/月曜日(祝日は開館、翌平日休館)、12月28日~1月1日、その他臨時休館あり

料金/常設展 一般430円 企画展は別料金となります。

アクセス/電車:JR上野駅(公園口)より徒歩1分、京成電鉄京成上野駅より徒歩7分、東京メトロ銀座線および日比谷線上野駅より徒歩8分

 

*この記事はヴィジュアル新書『企画展がなくても楽しめるすごい美術館』より抜粋したものです。

 

文/藤田 令伊

最終更新:8/16(火) 10:33

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