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藤原竜也が魅せる社会的存在抹殺された男のサスペンス

Wedge 8/15(月) 11:10配信

 「ウォー!」――腹の底から絞り出すような叫び声は、前のめりにしなった身体から発せられる。

 大手システム開発会社の社員である、藤堂新一(藤原竜也)は、何者かによって社会的な存在を抹殺された。

 ビルの屋上に呼び出された新一は、スピーカーから流れる誰かわからないように加工された、音声によって脅迫される。

 「我々で組んで世界を支配しよう」と。

 「断る」という新一の胸に、射撃の的を絞るレーザービームが照射される。

 「それじゃあ、しょうがない。前へ進め! 飛び降りてもらおう」

 「わかった、待ってくれ!」

「君はいったい誰なんだ?」

 日本テレビ「そして、誰もいなくなった」(毎週日曜・夜10時30分)の第1回(7月17日)の冒頭は、いまや日本を代表する舞台俳優でもある藤原の劇的な演技で幕を開けた。ドラマは、時間の針を10日前まで戻して、新一がどうしてこうした状況に追い込まれたのか遡っていく。

 会社の役員に呼び出されて、「君はいったい誰なんだ?」と詰問される。

 藤堂新一の公的なパーソナルナンバーの登録者は、同名で婦女暴行容疑者の男だった。

 「えっ! 僕が藤堂新一ですけど……」と答える新一に対して、役員は「事情が明らかになるまで自宅謹慎を命じる」と冷たい言葉を投げかける。入館証もすでに無効である。

 さらに、銀行のキャッシュカードもクレジットカードも使用できなくなった。婚約者の倉元早苗(二階堂ふみ)を母親の藤堂万紀子(黒木瞳)に紹介するため、会食をした費用の決済がカードではできず現金払いするしかなかった。

 新一は本来なら東京大学に合格する実力を持ちながら、新潟の国立大学の理系の学部に進学し、院を卒業して東京のシステム開発会社に入社した。

 数々の伏線は新一に絡み合って、ドラマに恐怖の緊張感を与えている。新一に感情移入した観客は、新一のように幾度も叫び声をあげたくなるだろう。

社会的存在としての自分を失う恐怖

 「そして、誰もいなくなった」のタイトルはいうまでもなく、アガサ・クリスティーの名作と同名である。クリスティー作品では弧島で起きた連続殺人のあげくに、島から誰もいなくなる。

 今回のドラマは、現代の管理社会のなかでも、つながりのあった友人たちを自殺や事故で失うばかりか、社会的存在としての自分自身まで失ってしまう恐怖を味わうことになる。

 「HERO」などで知られる、脚本家の秦建日子が書き下ろし、代表作となりそうだ。

 ドラマの謎の行き着く先には、新一が開発した「ミス・イレイズ」の存在が浮かび上がってくるのだろう。

 「ミス・イレイズ」は本来、個人にとって忘れて欲しいような情報や自分の映像を消し去るシステムだった。さらに、そうした情報を別のモノにも置き換えることが可能である。

 新一の大学の友人で総務省の官僚になった、小山内保(玉山鉄二)はこのシステムに関心を寄せている。ドラマは省内の派閥抗争のなかで、小山内とその上司がこのシステムを利用して敵を追い落とそうしていることがほのめかされる。

 新一のパーソナルナンバーを乗っ取った男は、奇妙にも新一が大学時代に住んでいた同じアパートの一室に住所を置いていた。いったい誰が仕組んだのか。

 大学時代の恋人だった、新潟在住の長崎はるか(ミムラ)が社会から抹殺された新一を助けるようにして、東京出張の偶然を装って新一の前に現れる。さらには、フィアンセの早苗(二階堂ふみ)にも接触してくる。彼女はいったいなにをしようとしているのか。

 新一は自分が追い込まれた状況が、「ミス・イレイズ」を何者かが利用した結果ではないかと疑う。上司の田嶋達生(ヒロミ)の力を借りて会社に入り、「ミス・イレイズ」のプログラムに侵入したログを解析することによって、犯人を特定しようとする。しかし、すべての痕跡は消し去られていた。

 システム会社が政府のシステムを請け負っていたことから、社会的存在を抹殺された人物である新一に対して、公安警察の追及が始まる。新一は逃亡者となる。

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最終更新:8/15(月) 11:10

Wedge

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