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英残留派のための新聞「ニュー・ヨーロピアン」快調 --- 小林 恭子

アゴラ 8/15(月) 16:30配信

6月23日、英国でEU加盟の是非をめぐる国民投票が行われ、離脱派が全体の51・9%の票を取得して勝利した。負けたのは48・1%の残留派。

この「48%」に向けて創刊された週刊新聞「ニュー・ヨーロピアン(新欧州人)(http://www.theneweuropean.co.uk/home)」が健闘を続けている。創刊日は7月8日。価格は2ポンド(約280円)だ。

当初は4週間発行する予定で、定期刊行物とまでは言えないので「ポップアップ新聞」(にわかに発行される新聞)と自称してきた。4週間目を超えて、ニュー・ヨーロピアンは黒字化しているという。

創刊号の部数は4万部、その後3万部が発行されている。10号までは続ける予定だ。

発行元はイングランド地方東部ノーリッチに本拠地を置く出版社アーチャント社だ。

9日間で発行までこぎつける

ニュー・ヨーロピアン紙の編集長マット・ケリー氏がBBCラジオの「メディア・ショー」(11日放送)で語ったところによると、同氏が創刊を思いついたのは国民投票の結果が出た翌日だった。

「通りを歩いていて、多くの人が結果に落胆している様子を見た。まるで誰かが亡くなったみたいだった」

「結果に怒りを持ったとき、どの新聞を買って読むだろうか?」ケリー氏は頭を巡らせたが、該当する新聞はなかった。

1986年、インディぺデント紙が創刊されたとき、有名なキャッチフレーズがあった。それは「インディぺデント紙は独立している。あなたは?」である。「インディペンデント」は「独立」を意味する。インディペンデント紙を買って、小脇に抱え、「自分は独立している、自分の意見を持っている」ことを示すのがカッコいいとされた。

「あんな新聞が自分たちで作れないかな、と思った」。

そこで、アーチャント社の上司に新聞の創刊案を話してみた。翌週、会議室で議題にかけられ、創刊が決定された。創刊号が市場に出たのは9日後のことだった。

ケリー氏はテクノロジーの発展があったからこそ、数日で紙面のデザインを作ることができたという。全国に新聞を届けるための体制がアーチャント社にすでに整っていたことも強みだった。

「ポップアップ新聞」とは造語で、何か月もかけて準備するのではなく、面白いアイデアがあったら、すぐに市場に顔を出す新聞、という意味だという。人気がなくなったら、すぐに店を閉じることもできる。

ニュー・ヨーロピアンは48ページ。左派系高級紙ガーディアンのコラムニスト、ジョナサン・フリードランド氏、元官邸の戦略局長だったアリステア・キャンベル氏、バージンメディアグループのトップ、リチャード・ブランソン氏などの著名人によるコラムのほか、欧州ではやっていること、特定の国の紹介など盛りだくさんだ。

筆者は英国での選挙権はないものの残留派を支持しており、毎号手に取ってきたが、ことさら親欧州を強調しているニュー・ヨーロピアンは「偏った新聞だなあ」と常々思ってきた。

英国の新聞は不偏不党が要求されないので、偏っていても構わないわけだが、度が過ぎるとコラムの主張の信ぴょう性が薄れ、つまらなくなる。すべてが親欧州を勧めるためのプロパガンダにも見えてくる。

もう少し落ち着いて、欧州のことを語る論調になってもいいように思うのだけれども、これが一定の人気を得ているのは、おそらく、確かに他にはこういう新聞がないからだろう。

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最終更新:8/15(月) 16:30

アゴラ

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