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謎に包まれたハウスミュージックの奇才Zhu、その音楽性とバックグラウンドについて語る

ローリングストーン日本版 8/15(月) 17:00配信

ロサンゼルスに拠点を置く謎のプロデューサーが、最新作『Generationwhy』について語る。

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ロサンゼルスに拠点を置くプロデューサーのZhuが2014年に発表した、不穏なベースラインと中毒性のあるループがクセになるシングル『Faded』は、メインストリームのダンスミュージック・シーンを席巻した。ディスクロージャーの『ラッチ』がHot 100で7位にランクインするなど、新世代のアーティストたちによるヴォーカル・ハウスが勢いを増しつつあった当時、『Faded』はビルボードのダンス・クラブ・チャートでトップに躍り出た。

Zhuはダンスミュージックのシーンにおいて極めて異質な存在だ。その素性を明かすことなく、たった1曲の大ヒットでコロムビアとのレコード契約を果たした。2014年発表のEP『The Nightday』に漂う不穏でダーティなムードは、ディスクロージャー、デューク・デュモント、クリーン・バンディットといった同世代のライバルたちの音楽性とは一線を画していた。

先週金曜にリリースされたZhuのデビューアルバム『Generationwhy』でも、EPで示してみせた独特の官能的なムードは顕著だ。淫らな『Faded』の続編ともとれる『In The Morning』における"君に電話をするのは孤独を感じる時だけ"という、切実に他者を求めるフックはザ・ウィークンドを思わせる。しかし『Generationwhy』におけるZhuのファルセットとアッパーなシンセ・ディスコ・サウンドには、彼のよりポジティブな一面を垣間見ることもできる。

ローリングストーン誌のインタビューに応じたZhuは、『Faded』の成功からピンク・フロイドに受けた影響まで、自身の言葉で語ってくれた。

ー素性を明かさないまま作品を発表したことには、どういった経緯があったのでしょうか?

『The Nightday EP』はすごく匿名的な作品だった。まるでシークレット・エージェントのように、素性を明かすことなく息を潜めていたいと感じる時って誰にでもあると思うんだ。安っぽい言い方かもしれないけど、正体不明の存在ってやつだよ。あの作品に漂うムードには、そういうキャラクターが必要だった。デヴィッド・ボウイやプリンス、そしてピンク・フロイドといった僕が敬愛するアーティストたちが、音楽性に応じてキャラクターを作り上げたようにね。

ー『Faded』の大ヒットの後は、素性を隠したまま活動を続けることが難しくなりましたか?

急激な環境の変化はできる限り避けようとしたんだ。長期的に見れば、早い段階での極端な成功がネガティブな影響をもたらす場合もあるからね。僕は勢いに乗った一発屋になるよりも、時間をかけてアルバムや他のプロジェクトにじっくりと取り組みたかった。その決断のせいでさまざまなオファーを断らなくてはならなかったし、素性を明かすこともできなかった。でも金儲けのために、『Faded』の成功に便乗するようなことはしたくなかったんだよ。

--{謎に包まれたハウスミュージックの奇才Zhu、その音楽性とバックグラウンドについて語る(2)}--

ー昨年発表した『Genesis Series EP』には、『Faded』でつきまとうようになったイメージを払拭する目的があったのでしょうか?

その通り。あとコラボレーションを通じて、多様なサウンドを模索するっていう狙いもあった。『Faded』の別バージョンばかりを作り続けるような真似は絶対にしたくなかった。アーティストは常に進化し続けるべきだからね。

ーデビューアルバムとEPの違いはどういったところにあるのでしょう?

あまりフロア向けではないところだね。このアルバムの雰囲気には、クラブよりもコンサート会場のほうが似合うんだ。

ークラブミュージックのプロデューサーというイメージを払拭するのは困難だと思いますか?

正直なところ、今はクラブ向けの音楽を作ることにあまり興味がないんだ。そういう音楽を作ることは楽しいし、ダンスミュージックが自分のバックグラウンドの一部であることは確かだよ。『The Nightday EP』を作った頃、僕はクラブカルチャーにどっぷり浸かっていた。でも今は劇場やフェスティバルで演奏することのほうが多いんだよ。そういう場で触れる音楽の多くは、クラブで流行っているようなものとは違うからね。

ー他のアーティストとのコラボレーションでは、自身のアプローチを変える必要がありましたか?

学ぶことはたくさんあったよ。自分の声の使い方とかね。『Good Life』なんかでは、僕は時々ボソボソと呟いてるだけで、ほぼまともに歌っていないんだ。曲が自分の声を必要としていないと感じたからね。(ブルーズの)ジョージアの声はすごくパワフルで、僕の出る幕はなかったんだ。

ー『Generationwhy』というタイトルには、マニフェストのような響きがあります。

リスナーに何かを問いかけるようなアルバムにしたかったんだ。新しい物事は何かに対する疑問から生まれるものだと思うし、この作品がそういうきっかけになればと思っているよ。

ーリスナーが具体的にどんな疑問を抱くことを期待しますか?

理想の音楽とは何か、言葉にできない内容を表現するような音楽とはどういうものか、そういうことだね。ドクター・ドレーの『2001』を聴くと、当時のロサンゼルスがどんな場所だったか目に浮かぶんだ。それと同じように、このアルバムから現在のこの街の空気を感じ取ってもらえたらと思っているよ。今のロサンゼルスに漂う孤独感をね。

ー世界中を旅して回る今の生活において、ロサンゼルスというアイデンティティをリアルに保つことに困難を覚えますか?

このアルバムの一部はニューオーリンズで制作されたんだ。明日にはサンタフェでセッションすることになっているし、ロサンゼルスで過ごす時間が少なくなっているのは事実だね。でもこの作品の大部分はロサンゼルスで作ったし、この街に漂う孤独感、そして一体感が宿っていると思うよ。

ー現在のエレクトロニック・ミュージックのシーンにおいて、自身の立ち位置をどう捉えていますか?

特定のジャンルやシーンの一部となることには興味がないんだ。僕はいろんなタイプの曲を作るからね。言葉で表現しようのない音楽にこそ、僕は魅力を感じるんだ。

Translation by Masaaki Yoshida

Elias Leight

最終更新:8/15(月) 17:10

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