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マンガの主戦場は紙からアプリへ。作品性だけが求められる時代は終わった?

HARBOR BUSINESS Online 8/15(月) 16:20配信

◆マンガアプリのシェアは四つ巴の様相

 無料でマンガを読めるスマホアプリが“戦国時代”の様相を呈している。「comico」(NHN comico)は16年6月に1300万ダウンロード、「マンガボックス」(DeNA)は同年4月に1000万ダウンロードを突破。こうしたIT系企業にやや出遅れてサービスを開始した大手出版社系アプリ・少年ジャンプ+(集英社)、マンガワン(小学館)も、ともに550万以上のダウンロードを達成するなど、これまで紙媒体が主だったマンガの戦場はアプリへと移行しつつある。

 マンガ産業の最前線では何が起きているのか、マンガ関連のコンテンツプロデュースやキュレーションなどを手掛けるレインボーバード合同会社代表・山内康裕氏に話を聞いた。

「現在のマンガアプリのシェア競争は書店系、広告系、IT系、出版社系の四つ巴になっていますが、サービス開始時のそれぞれの思惑はまったく異なります。書店系は電子書籍の購入アプリとしてスタートしており、消費者の囲い込みが目的。広告系は過去のマンガを無料公開し、広告収入を得るモデルだった。IT系の目的は二次利用を念頭に置いたコンテンツを育てること。既存のキャラやコンテンツを利用すると多額のロイヤリティが発生するため、自前のマンガアプリ上でヒット作をつくり、ゲームや映画などに発展させようという計画だったのです」

◆やはりノウハウの蓄積がある大手に分があるか

 当初、マンガアプリはこの3勢力が共存する形だったが、状況を大きく変えたのが大手出版社の参入。

「他業種のマンガアプリが1000万ダウンロードされるような状況になると、全盛期といわれた90年代半ばの少年ジャンプすら発行部数は650万部ですから、アプリやWebでマンガを無料公開して単行本で回収した方が効率がよいという打算が働きます。過去の人気作品の無料公開で読者を集め、持ち前のノウハウで新作も多く投入し、さらに電子書籍の販売までを行う複合的なプラットフォームを展開することで、他の勢力を凌駕する可能性があります」

 現に、15年は出版社以外の業態からのアプリへの参入が見られず、業界関係者を驚かせた。これにはIT系の勢力が目的としていた二次利用を念頭にしたマンガ制作が、実は割に合わないと思い始めたのではと推測できる。『comico』で最も人気が高い『ReLIFE』が16年7月にアニメ化されるなど、一定の成果はあるものの、ヒット作をつくるのには非常に時間とコストがかかる。さらに、優れた人材はブランド力のある大手出版社に集中しやすいことも逆風だ。

 つまりところ大手出版社のコンテンツパワーが他を圧倒しつつある構図だが、山内氏曰くそれは現代のマンガ産業を織りなす局所的な事象のひとつに過ぎないという。

◆ただ読むだけじゃない、多様化するマンガの機能

「成熟期を迎えたマンガ産業には、『ワンピース』や『ドラゴンボール』のような作品性の高い国民的大ヒット作を生み出すこと以外にも成功できるポテンシャルがある。私は小学6年生から中学2年生までの課外授業を受け持ったのですが、話を聞くと『週刊少年ジャンプ』より『comico』を読む子供の方が多いのです。作品のクオリティを考えれば、『comico』よりも『週刊少年ジャンプ』の方が格段に優れている。しかし子供たちはよく作品を読むことよりも、『comico』がもつコミュニケーションのハブとしての機能を重視している」

 例えば「comico」ではFacebookの「いいね」のようにマンガを「応援」する機能があり、応援が多い作品ほどランキングで上位につける。これによって自分が作品を育てている感覚が味わえるだけでなく、そうした体験を知人と共有することが、現在のマンガの楽しみ方のひとつなのだという。

「先述の以外にも、エリアマネジメントと組み合わせたり、教育と組み合わせたりすることも考えられる。例えば私が現在手がけているビジネスに、一般のマンガを学びという視点からキュレーションするというものがあります。『宇宙兄弟』から宇宙開発や人生における『夢の実現』を学べるように、現代のマンガは教材として多彩な可能性をもっている。マンガが共通言語となった今だからこそ、作品性だけでなくその機能面にも着目すべきタイミングだと思います」

 紙からアプリへの転向は序章に過ぎず、マンガ産業の一大変革期は今これから始まろうとしている。

【山内康裕】

マンガナイト/レインボーバード合同会社代表。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了(MBA)。マンガ関連の施設・展示・販促・商品等のプロデュース・キュレーション・企画業務等を提供する。

<取材・文/HBO編集部>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/15(月) 16:20

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