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ゲーム、エンジン、ツールからデバイスまで。最新リアルタイムGCが集結した「Real-Time Live!」

CGWORLD.jp 8/16(火) 16:39配信

2016年7月24日(日)から7月28日(木)までの5日間にわたり、アナハイムで「SIGGRAPH 2016」が開催された。会期中、3日目となる26日(火)には、「Real-Time Live! 」と銘打って、多くのセッション形式のコマとは異なる趣向で、アワード形式のイベントが行われた。「リアルタイムで処理されるグラフィクス」であること、「新しい技術を採用したインタラクティブなアプリケーション」であることが、審査の基準となっており、昨今のトレンドを受けて本年のエントリー作品には、VR技術を活用したものが多数見受けられた。総勢で13チームが実際に目の前でパフォーマンスを披露するという催しは、多様な展示が用意されている「SIGGRAPH」と言えども他にあまり例を見ないことから、遅ればせながら本イベントの模様をお伝えしたい。

圧巻のパフーマンス!『Hellblade』のライブパフォーマンスキャプチャ

結果から先に言うと、本年の最優秀作品は、Ninja Theory、Epic Games、Cubic Motion、3Lateral Studioの4社がコラボレートして開発中のゲーム『Hellblade』のライブパフォーマンスキャプチャが受賞した。「From Previs to Final in Five minutes: A Breakthrough in Live Performance Capture」と題した『Hellblade』の持ち時間では、「GDC 2016」と同様にステージ袖で、ヒロイン役を演じる女優がまさにリアルタイムでゲームのカットシーンに演技を付け、命を吹き込むというパフォーマンスをやってのけた。昨年の最優秀作品に、Epic GamesによるUnreal Engine 4(以下、「UE4」)世代の技術デモである『A Boy and His Kite』が選ばれていることから、Epic Gamesは2年連続の受賞ということになり、リアルタイムCGの分野におけるUnreal Engineの強さを見せつける格好となった。

「Real-Time Live!」でのプレゼンテーションの傾向は、大きく分けて3つある。1つ目は、ひたすらリアルタイムレンダリングで間に合う範囲のグラフィクス品質をアピールしたものだ。冒頭で述べた『Hellblade』のライブパフォーマンスキャプチャは、この傾向のものに、さらに付加価値をもたせたものと考えていい。2つ目は、昨今のトレンドを受けてVR/AR技術を応用したもので、新しいユーザー体験を意図したものから、コンテンツの制作環境においてVR/ARを活用しようというものまで、多くの作品がエントリーしていた。3つ目は、従来からあるオーソドックスなスタイルのゲームでありながら最新の工夫を凝らし、リアルタイムだからこそできる要素を強調したものだ。ひとくちに「リアルタイム」と言っても、その取り組みには大きな幅があり、どの作品からも各チームの個性が強く感じられた。

これらの中で(というか、全エントリー作品の中で)、やはり頭ひとつもふたつも抜きん出ていたのは、『Hellblade』のライブパフォーマンスキャプチャだろう。会場の空間にゆとりがあったからか、今回のライブキャプチャでは、ゲーム開発に活用されているのと同じキャプチャ環境が用意されていたようだ。「GDC 2016」の際には、会場の関係から、加速度センサー式のキャプチャシステムを用いており、ヒロイン役の女優が動き回って立ち位置を移動しながら演技するようなシークエンスではなかった。ところが、今回のライブパフォーマンスキャプチャでは、光学式のキャプチャシステムを用いており、カメラアニメーションも合わせて、実際の撮影現場さながらにライブキャプチャを行なっていた。

シークエンスは、鏡に映し出された自分の姿と対峙したヒロインの女戦士セヌアが、鏡の中から抜け出した幻影の自分が発する制止の言葉を振り切り、決意も新たに果敢に鏡の中に進んで行く、といった筋書きで進行するのだが、この場面に登場するキャラクターは結局のところセヌアひとりであることから、実体と幻影の双方をひとりの女優が演技する。プレゼンテーションでは、まず鏡の中から出てくるセヌアの幻影の演技から撮影が行われ、続いてセヌアのアップカット、最後にセヌアの実体の演技と続いた。最初に撮影された幻影の演技とカメラのキャプチャストリームは、即座に「UE4」開発環境に取り込まれ、女優の前に設置したモニタにフィードバックされる。続く実体の撮影では、モニタを見ながら演技することによって、直前にキャプチャされた自身による幻影のセヌアとの息のあった掛け合いを無理なく実現させていた。

このライブパフォーマンスキャプチャは実にパワフルで、実際にはここまでリアルタイムで撮影する必要はないことから、多くのモーションキャプチャの現場で活用できそうだと感じられた。もちろん、すでにあるキャプチャ環境に合わせ込むための検証が必要で、Epic Gamesによる協力の下、万全の体制で制作している『Hellblade』のようにはいかない部分はあると思われるが、収録直後に、実際の出力画面に近いかたちで演技の確認ができることと、モーションアクターに対して自身や他のアクターの演技をフィードバックできることは非常に大きい。事後的なキャプチャデータの加工作業とのバランスも大きく見直せるのではないだろうか。極端な話、映像、ゲームを問わず、レンダラとしてUE4をまったく使わないプロジェクトだったとしても、モーションキャプチャの収録現場にUE4を活用したインスタントレビューを導入する価値があるように感じられた。

谷川ハジメ

最終更新:8/16(火) 16:39

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