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AIに「やる気」は実装されるべきか

ローリングストーン日本版 8/16(火) 16:00配信

ローリングストーン日本版 2016年6月号掲載

人の操る「言葉」とはまったく異なる「プログラム」で設計されたAIが、自律的な活動を始めた。AI駆動型の「第4次産業革命」はもう間近に迫っている。AIに、どこまでを実装すべきか。論点の一つに「やる気」がある――。

AI、人工知能革命の内幕:スペシャル・レポート(パート1)

チェスや将棋、クイズ。これらの領域では、人間のトップクラスがAIに敗北してきた。ただ、打ち手が10の360乗もある囲碁だけは別で、「まだ10年は人間が勝てる」と考えられてきた聖域。しかし、前提はあっさり覆された。この3月、「人類最強」と呼ばれたイ・セドルが、アルファ碁(AlphaGo)に1勝4敗と完敗したことは、大ニュースになった。これまでAIが社会に与えたインパクトでは、もっとも大きなものだろう。

英ディープマインド社がつくったアルファ碁が実装するのは、「ディープラーニング」という技術だ。2000年代半ばに考案された技術で、データ分析のみならず、画像認識にも強い。近年の技術革進は目覚ましく、米グーグルでも写真から状況説明する技術を確立している。たとえば、「少女が、かわいいぬいぐるみを抱いて、部屋で座っている」という写真がある。5年前の技術はこの状況説明さえできなかったが、今では容易くやってのける。グーグルのマイク・シュスターはこう言った。「近い将来、文章から写真(絵)を表現することも可能でしょう」

AIに「やる気」は実装されるべきか(2)

AIは世界を認知し、表現する段階に入りつつある。このことは、三次元の世界で活躍するロボティクスが爆発的に進化することも示唆している。この2月に公開され、衝撃を与えた「Atlas」(米ボストン・ダイナミクス社)の稼働動画は、すでに実証段階に入ったのだと推察できる。二足歩行のロボットが、森や斜面の複雑な地形を自律的に判断して歩いているのがその根拠だ。

AIがここまでくると、「これだけはやめてくれ」と人間が懇願する機能も出てくる。それは「やる気」の実装である。

囲碁を打つ。地面を歩く。AIはあらゆることをこなすが、今のところ人間が「ここで、これをやれ」と指示を出さない限り、何もできない。そこに「意欲」「欲望」まで実装したらどうなるか。彼らは人の指示を待たずに、あれこれ勝手に始めるだろう。やる気は人間の誇る創造性の源。これさえも代替されてしまったら、もう何のために生きているのかわからなくなる。むろん、これが実装されるには、AIが意志に近いものを獲得しなければならず、現時点では飛躍した想像でしかないけれど、ここまで技術革新が早いと現実味もなくはない。

この手の話を人前ですると、誰もが不快な顔をする。そりゃ、そうだ。AIの成長物語を聞くのは自分を否定された気分にもなるからだ。短期的には、自分たちの首を絞めるかもしれないのに、開発をやめられない——ところで、なぜ技術革新はとまらないのか。このぼんやりとした疑問を理解するうえで、国立情報学研究所の教授・新井紀子さんの言葉が重い。「主に産業革命以降、文明が発展する時のベクトルに『利便性』が入っているから」

人類史上、不便がいいと考えた人はいるだろうか。ソローはそう考えただろうが、多くの人はそうではなく、今もそれは続いている。だから、AIという「人類最後の発明」も進展がやむこともないのだ。

やる気までもが実装されたその日、人間は何をしているのだろうか。

Edit by Shun Sato

Toshihiro Okamoto

最終更新:8/16(火) 16:00

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