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ポケモンもイチローも本当は「進化」していなかった

JBpress 8/16(火) 6:15配信

 ブームとしての「ポケモンGO」はともかく、世界を駆け巡った関連ニュースで1つだけ、気になったものがあった。サウジアラビアで、反イスラム的だとして禁止令が出たというニュースである。

 改めて調べると、それはポケモンGOに対してではなく、イスラム教聖職者団体が2001年にポケモンのカードゲームに対して出した宗教令を、再確認したというものだったようだ。

 ポケモンはなぜ反イスラム的なのか。ギャンブル性があるからというのも理由の1つらしいが、ポケモンが「進化」を標榜している点が問題だという。

■ 生態学から見たポケモン

 ポケモンと進化については、個人的にいくらか因縁がある。進化に対するリテラシーを普及する上で活用できないか、何年か前に検討したことがあるのだ。

 「ポケモンといえばピカチュウ」という知識しかなかったため、まずはポケモンについて、小学生だった姪っ子に教えを請うた。その結果、ポケモンワールドはとても教育的であることを初めて知った。ポケモンことポケットモンスターは、ポケモンワールドという生態系を舞台にした進化劇を模したものだったのだ。

 どういうことかと言えば、生物は皆それぞれ、生態系においてそれぞれの居場所を持ち、そこでの独自の役割を担っている。

 アフリカのサバンナに生息する草食性の哺乳類でも、草の葉先を食べるもの、硬い葉を食べるもの、茎を食べるものというように、1本の草を食べ分けている。さらには木の芽を食べるもの、木の葉を食べるものもいる。生態系においてそれぞれの役割を担っているのだ。この役割を、生態学では「生態的地位(ニッチ)」と呼んでいる。

 ポケットモンスターも、森の中でそれぞれ別々の生態的地位を占める形で、多様な種類に分かれているという見方ができるのだ。ポケモンデザイナーの皆さん、よく勉強されていると、とても驚いた。

 ただし、ポケモンの「進化」には違和感がある。もちろん、あれは「変態」なのだから。

 近年、中学校の理科で進化を教える際には、「これはポケモンの“進化”とは違うからね」という念押しから始める必要があるという、現場教師の証言を聞いたことがある。

 ここで「進化」の語を導入していなければ、イスラム圏でもポケモンが普及したかもしれない。

■ 宗教観と進化の受容

 ポケモンの話は別にして、生物の進化をタブー視するのはイスラム教だけではない。共にユダヤ教に起源を持つキリスト教も、地上の生物は天地創造時に創造されたものとされ、生物の進化は経典たる旧約聖書の記述に反する。そのため、旧訳聖書の記述を文字通りに信じるキリスト教原理主義でも、生物の進化はタブーなのだ。

 アメリカ合衆国南部には、特にキリスト教原理主義の信者が多い。毎年のように行われる世論調査では、合衆国成人のおよそ半数は、生物の進化を否定ないし疑問視しているという結果が出ている。

 それに引き替え、仏教思想の輪廻転生という考えが浸透しているせいだろうか、日本の反進化思想はマイナーである。

 2001年には日本、アメリカ合衆国、EUで、共通の質問票による科学リテラシー調査が実施された(日本では文部科学省科学技術政策研究所が実施)。その質問の1つに、「現在の人類は原始的な生物種から進化したものである──イエスかノーか」という項目があった。正解はもちろんイエスなのだが、正解率は、日本78%、EU諸国の平均69%、合衆国53%だった。

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最終更新:8/16(火) 6:15

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