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やっていいのか?生命の操作が作り出す新たな生物

JBpress 8/16(火) 6:00配信

 (文:村上 浩)

 科学の進歩は、地球に生命が誕生して以来の数十億年どこにも見られなかった奇妙な生き物を生み出している。バイオテクノロジーによる遺伝子操作だけでなく、電子工学とコンピューター技術の進歩も生命に新たなカタチを与え始めているのだ。

 キラキラと光る魚、薬の入ったミルクを出すヤギ、遠隔操作が可能なロボット昆虫。SFの世界でしか見られないと思ってい生き物は、既にこの世に存在している。

 本書『サイボーグ化する動物たち-ペットのクローンから昆虫のドローンまで』(https://www.amazon.co.jp/dp/4826901909? tag=mrkmhiroshi-22&ie=UTF8)で紹介される衝撃的な生物の事例の多くは起こりうる未来ではなく、私たちが気づかずに通りすぎた過去のものなのだ。

■ 伝統的な改良よりも望ましい? 

 生命を直接的に変化させるテクノロジーの発展は、倫理的問題を避けて通れない。ブルーライトやブラックライトで美しく光るグローフィッシュは、イソギンチャクやサンゴのDNAが入ったゼブラフィッシュであり、2004年からアメリカのペットショップで購入することができる。

 このアメリカ初の遺伝子組み換えペットの誕生には、技術以外の多くのハードルがあった。カリフォルニア州がグローフィッシュ発売直前に遺伝子組み換えの魚の生産と販売を禁じたのだ。また、多くのマスコミによるグローフィッシュをモンスター扱いする記事で、遺伝子組み換えペットに対する拒否反応は野火のように広まってしまった。

 著者は、伝統的な選択的品種改良による観賞用金魚はほとんどものが見えていないことを引き合いに出しながら、こう問いかける。

 “倫理的な立場からすれば、人為選択による品種改良で重い障害をもつようになった魚より、遺伝子組み換えで生み出された機能上まったく問題のない魚のほうが望ましいのではないだろうか?  ”

 カリフォルニア州の決定後すぐに、FDAはグローフィッシュが「環境に大きい脅威を与えるという証拠はない」ことを踏まえ、それを規制する理由はない旨の声明を発表した。こうして、グローフィッシュは無事アメリカのペッショショップに並ぶこととなったが、より規制の厳しいEU諸国では事情は大きく異なり、その販売は違法とされている。生命を操る分野の発展は純粋な科学の力だけでなく、各国の規制や倫理に大きく影響される。

 遺伝子組み換え動物は私たちの目を楽しませるだけでなく、多くの命を救っている。例えば血栓の防止に使用できる薬であるアトリンは遺伝子組み換えヤギのミルクからつくられており、科学者たちは様々な動物の遺伝子を操作して人間に役立つ化合物を取り出そうとしている。

 ただし、「動物の遺伝子と人間の遺伝子を混ぜあわせること」には、人命のためという大義名分がある場合でも、欧州の人々の半数以上が反対しているという。アフリカでは人間の遺伝子が入ったヤギを口にすることは、食人の一種とみなされてしまう場合すらある。

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最終更新:8/16(火) 6:00

JBpress

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