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移民ビジネスの経済効果は20兆円!? 専門家に聞いた

HARBOR BUSINESS Online 8/16(火) 16:20配信

◆日本国に移民の明確な定義が存在しない

 いまだ国民を二分する議題となっている移民受け入れの是非。移民解禁によるビジネスチャンスというところに落とし込めれば、前向きな議論もできそうだが……。

⇒【資料】外国人労働者受け入れによるGDP上昇効果(試算)

 国連の定義では移民の定義について、「出生あるいは市民権のある国の外に12か月以上いる人」としている。この中には難民、難民(亡命)庇護申請者、外国人留学生およびその他の長期滞在者に加え、正式の入国手続きをしていない外国人、合法的な移民、帰化した市民なども含む。日本においては、ある程度長期にわたって定住する外国人を指すほかに明確な定義はなく、自民党内の議論でも「帰国を前提としない長期の労働者や、日本人配偶者を持つ永住者」とされている。

 以上を前提とした場合、移民ビジネスはどういったものが考えられるのか? 日本国際交流センター執行理事・毛受敏浩氏に尋ねた。

「移民のもたらす新たな文化によってダンス、スポーツ、レストランなどのほか、貿易など世界と直接つながる産業が地方でも発展するでしょう。またそれを機に異文化に関心を持つ人が飛躍的に増える可能性があります。移民自身のためのビジネスも起こります。日常生活を支えるもの、日本社会適応を補助するものの2種類です」

◆移民ビジネスの商機はトラブルシューティングにあり?

 現在新宿区には34万人の外国人が住み、こうしたビジネスは不可欠となっているが、移民が増加すれば日本各地で需要が生じる。

「後者の代表は日本語学校などの教育ビジネスですが、群馬大学が養成している『多文化共生推進士』が脚光を浴びることも考えられる。生活・労働習慣の違いから生じるトラブルを調停したり、移民と地元民が交流するイベントを企画したりするのが主な業務です」

 文化や習慣の違いは移民、日本人双方にとって損失を招きかねない。顕著な例が、三菱重工が‘11年に受注した大型客船「アイーダ・プリマ」建造現場での一件だ。日本人、欧州の技能者、アジア人技能実習生5000人規模で動員された一大プロジェクトだったが、完成が1年遅れ、累計で1800億円以上の特別損失が生じた。三菱重工は顧客からの設計変更の要望が多かったことなどを理由に挙げているが、外国人と日本人の労働習慣の違いが軋轢を生み、工期に影響したという指摘がある。

 一方で、移民が持つ独自の視点は斬新なビジネスや地域の新たな価値の創出に繋がるケースもある。

「北海道のニセコ町が好例です。ここのオーストラリア移民が地元住民が気付いていなかった雪質の高さを海外に発信し続けた結果、’02年には6000人弱だった観光客数が’14年には約15万人に増加しています」

 とはいえ、ヨーロッパの現状を鑑みれば移民がもたらす治安の悪化や国内労働者との競合は無視できない問題に思えるが……。

◆移民300万人受け入れで経済効果20兆円の試算

「本来移民とはその国に必要な人材を選択的に受け入れるもの。カナダ、オーストラリアでは正規に受け入れた移民の犯罪を心配する声は全くありません。実際、カナダなどが州毎に異なる移民政策を持つのはそれぞれ欲しい人材が異なるため。現在、秋田県は農業後継者が20%しかいないことが問題になっていますが、農業に適性のある移民だけを徐々に受け入れるなどすれば一般的にイメージされる混乱が生じることはない。慶應大学の後藤純一教授の試算では、移民の経済効果は300万人の移民を受け入れた場合で20兆円に上るともいいます。世界的有名企業の創始者は皆移民1世、2世であることが示唆するように、異なるバックグラウンドの人材を受け入れること自体が社会にとって飛躍のチャンスです」

 日本社会の現状打破のためにも、移民受け入れ成功に導く具体的な議論が求められるだろう。

【毛受敏浩】

日本国際交流センター執行理事。新宿多文化共生まちづくり会議会長なども務める。移民の可能性を指摘した近著に「自治体がひらく日本の移民政策」(明石書店)など。

<取材・文/HBO編集部>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/16(火) 16:26

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