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『GAP』低価格ブランド『オールドネイビー』日本撤退はCEO交替の影響が大きかった

HARBOR BUSINESS Online 8/16(火) 9:10配信

◆ラーソンCEO退任後、明らかに業績が下降

 5月19日、米衣料品大手「GAP」は、自社低価格ブランド「オールドネイビー」が日本で展開する53店舗の年内撤退を発表した。

⇒【資料】GAPブランド別既存店売上高変化率

 オールドネイビーはセール品に関しては1ドルからという激安ぶりで、日本店舗でも同様の値段で展開してきた。特筆すべきは、その商品群はGAPやその他のファストファッションとほぼ変わらないデザイン性を保っていたということだ。それがなぜ、日本ではわずか4年での撤退を余儀なくされたのか。

 国際評論家の岡本泰輔氏によれば、ブランド躍進を支えたカリスマの退任がその最大の理由だと指摘する。

「オールドネイビーは、GAPが展開するブランドの中でも安定した業績を残していた“売れ筋”でした。その裏には同ブランドのグローバルプレジデントであったステファン・ラーソン氏(現・ラルフローレンCEO)というキーマンの存在が大きかった。ラーソン氏がトップに就任したのが’12年の10月ですが、‘15年10月の退任以降は、いきなり大幅なマイナスに転落した。直近で少し回復しましたが、いかに彼の影響が大きかったかのかがよくわかります。それでも業績自体はそこまで悪かったと思いません。ただトップが入れ替わり、大幅なテコ入れを行う中で、他のアジア市場と比べて『日本は魅力が少ない』と判断されたのでしょう」。

◆「低価格=売れる」時代の終焉を象徴した撤退劇

 実際、ラーソン氏が就任してからは、同社ブランド「GAP」と「Banana Republic」がマイナスである一方、オールドネイビーだけが業績を伸ばしている。

『ユニクロ』のジーンズのようなブランドを代表するヒット商品がなかったのも痛手となった。

「赤ちゃん商品のラインナップが豊富であるという強みもあり、参入時点で一部の層からは支持はありましたが、全体的なインパクトは弱かった。ファストファッション業界では、『いかにインパクトを出すか』ということに注力しますが、その点に関しても競合他社との明確な差別化ができているとは言い難かった。品質に関しても、ユニクロで例えられる”日本基準”からは一段も、二段も落ちる」。

 同価格なら、質に勝る国産ブランドを選択するという消費者心理が働いたこともマイナスに繋がった。GAP、オールドネイビーともにユニクロ、GUと競合する価格帯。ファストファッションへのこだわりがない中国市場では成長が見込めても、成熟しきった日本市場を勝ち抜く競争力は持ち得ていなかった。

◆母体であるGAP以上の値下げが出来なかったことも敗因か

 さらにGAP本体の価格設定も足かせとなった。セールでGAPの価格を下げることはできても、オールドネイビーはもともと“超低価格”商品が中心となるため価格を下げることが困難で、プロモーションやマーケティングの選択肢が限られていたのも事実だ。

「全店舗撤退という潔さは、ブランド全体の閉塞感を打破するための打開策でしょう」と岡本氏はいう。

 そんな日本のファストファッション業界で、今後成長を見込める企業はあるのだろうか。

「今一番注目されているのが、『しまむら』です。セントラルバイイング制(本部一括仕入制)の導入など新たな自動化システムの稼働を積極的に行っています。今後のファストファッション業界で伸びる企業の特徴として、ITをうまく活用できる企業に可能性を感じます」。

 国内市場に風穴を開けるためには、価格や質を上回るインパクトが必要となるのかもしれない。

【岡本泰輔】

南カリフォルニア大卒。4か国語を駆使してマルチリンガル国際評論家として積極的に活動中。ルーマニアに会社も持つ。http://www.okatai.com/blog/

<取材・文/HBO編集部>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/16(火) 9:10

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