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オリンピック発祥の地で誰もが知っている日本人

BEST TIMES 8/17(水) 12:00配信

古代オリンピック発祥の地であるオリンピア。遺跡の取材で初夏の町を訪れたカメラマンの佐々木芳郎さん。思いがけず見つけた日本人の銅像の由来を知ろうと、オリンピア市長のゴジャスさんのもとを訪ねた。オリンピアの誰もが知っている最も有名な日本人は、果たしてどんな人物だったのか……。

<オリンピア市庁舎前にある日本人の銅像は誰か?>

首都アテネからオリンピアまでは約330km、高速バスで片道約5時間かかる。以前は鉄道で直接行くことが出来たそうなのだが、経済破綻の影響なのか、現在は工事などで鉄道では行けない。一番便利なのは高速バスの旅だという。朝、7時半に出発して、オリンピアに着いたのは午後1時頃。
オリンピア市は端から端まで10分も歩けば行きあたる小さな町だった。オリンピア遺跡の入り口に一番近い、オリンピアパレスホテルにチェックイン。ホテルの向かい側の庭にはギリシャ国旗が風になびいている。そこはオリンピア市庁だった。カメラ機材以外の荷物をフロントに預け、すぐに遺跡に行こうと庁舎前の庭園を横切ろうとしたとき、その中央に、鎮座する日本人の胸像を見つけた。

「オリンピック発祥の地に日本人の胸像があるなんて!」

驚いてよく見ると、「国分敬治」の名が刻まれていた。

オリンピア名誉市民の功績を讃える高さ約2メートルの胸像は、ブロンズ製。正面の胸像基底部には「国分教授の御遺志によりここに眠る」と私がギリシャに来てから初めて見た日本語の刻まれた文字、そして、ギリシャ語と英語でも併記されている。
側面には「哲学の教授であられた国分敬治氏はオリンピアを尊び古代オリンピックに関して多くの寄稿をされました。ギリシャ国そして日本国より授章された格別なる名士であり、奥深い畏敬の念をオリンピック発祥の地に抱きつつ、その発展に多大なる御健闘をされました」と記されていた。

また反対の側面には、「オリンピア市が教授の愛したオリンピアの地に胸像を建立されましたことに感謝申し上げます。オリンピア市と稲沢市は国分教授のご尽力により1987年8月22日ヘラ神殿前にて姉妹都市となりました。ここに感謝の意を込め教授のご冥福をお祈りいたしますとともに、両市の友好発展および世界平和を祈念します。2002年3月愛知県稲沢市」と記されている。 

<オリンピアで最も有名な日本人•国分敬治とは?>

私は詳しい事情を知ろうと、オリンピア市長のエフティミオス・ゴジャス市長さん(65歳)を訪ね、国分氏の胸像にまつわる話を聞いた。

国分敬治氏は古代ギリシャ哲学やヨーロッパ哲学を専門とする研究者。特に古代ギリシャ、オリンピアについての研究の功績が認められ1981年オリンピア市から名誉市民の称号が与えられた。さらに国分教授は文化交流の趣旨から姉妹都市締結プロジェクトを立ち上げ、オリンピアによく似た愛知県稲沢市に着目し、1987年8月22日オリンピア市と稲沢市は姉妹都市提携を調印するまでに至った。

オリンピア市での個人顕彰の像の建立は珍しく、近代オリンピックの父クーベルタン男爵以来の画期的なことだという。制作費も含めてすべてオリンピア市が負担し、オリンピア市では最も有名な日本人で皆知っているという。

<「はだか祭り」とオリンピックの共通点とは?>

国分教授による提携の発想は「両市ともに、紀元前からの歴史を持つ都市で、多くの遺跡や文化財があること。古代オリンピック競技は裸で行なわれ、ゼウスに捧げた奉献競技であった。「はだか祭」も767年称徳天皇が、「全国の国分寺に悪疫退散を祈れ」と勅命を発したことから始まった神事で(正式名称が「儺追神事」=なおいしんじ)、共通している。そして、両市とも非核平和都市宣言をしていることだった。

国分敬治と国分寺の名前の一致、裸競技とはだか祭りに共通項を見出すなど、少し強引にも思える結び付けの発想は、彼の出身地が大阪であると聞いて、同じ出身地の私はなるほどなあと思う。

ヘルメス像と同じように、国分氏の功績がこれから2000年以上も先でも語り継がれることになるだろうと思った。

<ヘラ神殿は聖火リレーが始まる場所>

そして、この姉妹提携都市から始まった文化交流は、稲沢市の中学生によるオリンピアでの聖火リレーの参加につながる。北京、そしてロンドンでのオリンピックに続き、今年の4月オリンピア遺跡で行われたリオデジャネイロの採火式にも、中学生たちは日本から、オリンピア市内で聖火のトーチリレーに参加した。

この聖火の採火式。ゼウス最後の妻であるヘラを祀ったヘラ神殿の前で行われる。太陽光から凹面鏡によってトーチに点火され、リレーによってオリンピック開会式当日のメイン競技場の聖火台に点火される。

<参考文献>「ギリシャ記」パウサニアス著 飯尾 都人 翻訳 1991龍渓書舎「驚異のオリンピック」(THE NAKED OLYMPICS)トニー・ペロテット著 矢羽野薫 翻訳 2004 川出書房新社「古代オリンピック」 桜井万里子・橘馬弦 編 2004 岩波新書「古代ギリシャ遺跡事典」 周藤由幸・澤田典子 2004 東京堂出版「ソークラテースの思い出」クセノフォーン著 佐々木 理 翻訳

 

特別展『古代ギリシャ ―時空を超えた旅―』日時/9月19日(月•祝)まで 休)月曜日※9月19日は開館。時間/9:30~17:00※土日•祝は午後6時まで。※金曜日および8月の水曜日は午後8時まで。※入館は閉館の30分前まで。場所/東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)観覧料/一般1600円、大学生1200円、高校生900円(いずれも当日券)※「長崎展」=10月14日(金)~12月11日(日) 「神戸展」=12月23日(金•祝)~2017年4月2日(日)

文/取材•撮影/佐々木芳郎

最終更新:9/8(木) 15:06

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