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リオ五輪ボクサーたちが「ヘッドギア」を着けなくなった理由

WIRED.jp 8/17(水) 7:30配信

今年のオリンピックのボクシングには何かが欠けている。お気づきになっただろうか? 男性ボクサーたちの顔が見えやすくなったのだ。つまり彼らが、オリンピックの舞台であざけたり、しかめ面をしたり、微笑んだりしているのが。今年のオリンピックでは、1984年以来初めてボクシングのヘッドギアが廃止され、よりプロボクシングのように見えるようになった。

【以前を振り返る】2012年ロンドンオリンピックの男子ボクシングの写真

国際ボクシング協会(AIBA)によれば、これは安全性の観点から決まったことだという。AIBAの調査によれば、ボクサーたちがヘッドギアを着用しているときのほうが、脳しんとうなどの頭部の負傷を理由にレフリーが試合を中断する頻度が高いのだという。意外にも思われるかもしれないが、ヘッドギアを廃止することでボクサーたちの安全性は増したのだ(とりわけ脳しんとうを起こしにくくなった)。

「このルール変更は、多くの人を驚かせたでしょう。もっと多くの研究がされなければなりません」と、南カリフォルニア大学のバイオメカニクスの研究者で、アメリカで使われるボクシング装具の評価にもかかわったシンシア・バーは言う。実際、女性のボクシング選手は(ヘッドギアがないほうが安全だという)データの不足により、いまだにヘッドギアを着けている。

▼なぜヘッドギアは役に立たないのか?

スポンジのパッドは、脳しんとうを起こしたりノックアウトをさせるほどのパンチを防ぐことはできない、ということはほとんどの人が認めている。パンチが強ければ、スポンジがエネルギーを吸収する能力を超えてしまうのだ。「そうするとヘッドギアの効果が減り、役に立たなくなってしまいます」と、オタワ大学で頭部の負傷を研究しているブレイン・ホシザキは言う。

たとえヘッドギアをしていても、ボクサーはあごへのパンチには弱い。あごへのダメージは頭を素早く揺さぶり、脳しんとうの原因になりやすい。「ボクサーは、ノックアウトを取るには相手の頭を回転させる必要があると知っています」。南カリフォルニア大学のバーは言う。「ジャブは(ノックアウトのためには)あまり効かないのです」。脳は液体の中にあり、頭部が素早く揺さぶられれば脳も揺さぶられ、組織が伸縮する。これが脳しんとうを引き起こすのだ。

しかし、なぜヘッドギアの装着が脳しんとうを起こしやすくなるのか? AIBAは、いくつかの理由を推測している。ひとつはヘッドギアで視界が狭まること。これによってボクサーはパンチを避けにくくなる。あるいは、ヘッドギアによって「守られている」という感覚が過剰に生まれ、ボクサーたちはよりリスクを犯しやすくなるのかもしれない。さらに、ヘッドギアによってボクサーの頭をより大きなターゲットにしてしまうのだ。

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最終更新:8/17(水) 7:30

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