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オバマ政権肝入りの製造ハブ作りで国力回復狙う米国

Wedge 8/17(水) 12:20配信

 米国に製造業を取り戻そう。オバマ大統領のこんな掛け声の下、政府が中心となって米国内の製造ハブ作りが積極的に進められている。その一環として今年6月、ロサンゼルスに本拠地を置く「スマート・マニュファクチャリング・イノベーション・インスティチュート(SMII)」がエネルギー省から7000万ドルの政府融資を受け、スマートセンサーとデジタル化による製作工程管理のシステム作りに取り組むこととなった。

SMIIが目指す製造システムとは

 SMIIは200以上の大学、非営利団体、民間企業などからなる集合体で、全国に5カ所の地域センターを持つ。カリフォルニア州ではカリフォルニア大学ロサンゼルス校とロサンゼルス市が協力、メキシコ湾岸ではテキサスA&M大学が石油ガス産業と提携、北東部ではレンセラー工科大学がガラス、セラミック、マイクロエレクトロニック産業と提携、北西部ではパシフィック・ノースウエスト国立研究所が中心となり、ノースカロライナ州では州を挙げて南東部のハブ作りに参画する。

 SMIIが目指すのは、スマートセンサーと製作工程管理のデジタル化によって、大企業のみならず、中小企業をも含む製造業者がエネルギー効率を上げ製造時間を短縮させること。

 それだけではない。各地域の研究成果を結集させ、オープンソースのプラットホームを導入。オンライン上での技術者同士の意見交換や、技術の販売を可能にし、製造工程管理のデジタル化と一体になった製造システムの構築を図る。

 米国の製造業は安いシェールオイル、ガスの利用により00年から回復基調にあり、従業員数は8万人増加。オバマ政権はこれを加速させるべく、アジア諸国に対抗できる「世界をリードするスマート・マニュファクチャリング」を推進してきた。

3Dプリントでは既に実績も

 卓越した技術と革新的アイデアを持つ製造ハブへの政府融資は14年に始まり、これまでSMII含め9つのハブが合計8億ドルの融資を受けた。今後も新たなハブに6億ドルを融資する計画があるという。

 過去には3Dプリンターハブがイリノイ州に作られ、ゼネラル・エレクトリック社(GE)からの融資を引き出して一大プリンターハブとなった実績などがある。このハブから派生したニューヨーク州ロチェスターの施設では、米国初となる米国食品医薬品局認可の医療用デバイスの3Dプリントも行われた。これにより企業などから合計14億ドルの投資が集まった。

 政府と学術団体が中心となって計画した製造ハブだが、民間企業からも投資が集まり、これまで1000社以上がハブに参画してきた。米政府は、例えばデトロイトのような従来型の製造ハブではなく、デジタル時代に対応したイノベーションを中心としたものづくりを推進し、その分野で米国を世界のトップにしよう、というものだ。今後もロボティクス、人工臓器など5つの分野でのコンペが予定されており、全国から優れたアイデアを募集する。

 もともとTPP合意に積極的なオバマ政権は、輸出を前提に世界と競合できる製造業を強化し、国力を回復させるのが狙いだ。ただし次の大統領候補はどちらもTPP批准には否定的。巨額の融資により行われてきた製造ハブ作りは過去の遺産となるのか、あるいは本当の意味での米国の製造業復活の基礎となるのか。答えが出るのはまだ先のこととなる。

土方細秩子 (ジャーナリスト)

最終更新:8/17(水) 12:20

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