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リベラル派日本人の自己欺瞞 --- 井本 省吾

アゴラ 8/17(水) 16:30配信

前回の本ブログのように「安倍晋三を孤立させるな」(http://agora-web.jp/archives/2020854.html)などと書くと、極右の典型のように思い、多くのリベラル派日本人は眉をひそめる。

「国家」を強化するような反動的なことを言わない。逆につねに「反権力」を標榜するのが知識人であり、柔軟な言論を尊ぶリベラルだ、と思う傾向が偏差値の高い学校の卒業生を中心に強い。それが戦後の日本を彩り、いまも根強い。

鳥越俊太郎氏のような粗雑で破綻した論理を振りかざして「戦後民主主義」を唱える人間を都知事にしようとする都民が135万人もいることが、それを物語っている。

彼らの特徴は、理想的なことを言い募り、自分で実務に手を下すことを毛嫌いすることだ。なぜか。実際の仕事に手を出せば、100点満点は在りえず、必ず問題点が発生し、批判にさらされる。

待機児童、女性の社会進出、年金、介護負担、金融緩和、財政出動、そして安全保障……何をやるにしても問題は発生する。問題を起こさず、批判にさらされないようにするには自分は何もせず、まさに批判する側に回っていた方が良い。

つねに旧社会党に典型的に見られる万年野党の立場に立ち、与党のやっている政策を批判する評論家的行動がベストである。

かつての社会党委員長にして総理大臣も努めた村山富市氏などはその代表だろう。阪神淡路大地震が発生し、その粗雑な処理で総理としての馬脚が表れた。急いで辞任したのは、「これ以上手が汚れるのを防ぐ」という意思の表れだったのではないか、と疑っている。

リベラル派は与党が日々行っている政治の問題点を批判し、自分は手を汚さずに済むのだから、これほど気楽なことはない。

大学や小中高校、役所の職員などがリベラル派の典型だ。これらの人々はよほどの事がない限り、クビになることがなく、定年を迎えるまで給料がもらえる。

また、新聞、放送などの大手メディアも様々な規制と行政の保護によって、新規参入の壁が高く積み上げられている。本来の競争にさらされたらつぶれても不思議のない企業が生き残り、リベラル派はその中でぬくぬくと生活できる。

大手メディアの職場を失ったら、気楽なことを書いたり言ったりして、十分な収入が得られるか心もとない人間が数多い。

その分、半永久的なモラトリアム人間で、人間的に成長、成熟することができない。いわば半人前である。

リベラル派の多くは旧ソ連の崩壊によって破綻が明らかとなった共産主義や社会主義にシンパシーを感じていたが、今もどこに問題があったか、自分は間違っていなかったか、という厳しい自問を課していない。自己欺瞞によって回避している。それでやっていけることもモラトリアム人間の半人前が維持されている理由だろう。

理想通りには行かなくても次善、三善の策を打ち出して何とかやる。うまく行かない分「手は汚れる」。それが実務に携わって苦労している、モラトリアムではない普通の人間の営みである。

だが、リベラル派はそうした営みを嫌う。主体性が欠如しているのだ。温情的に自分の立場が保護される世界にとどまることを望み、自ら行動しようとしない。

私は憲法9条や憲法前文を改正しなければならないと思っているが、前文の以下の点は概ね賛成している。

“われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ”

“いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、……(これは)自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ”

安倍首相は南シナ海、東シナ海で中国の無法、力の行使が通るような状態は打破しなければならないと考え、法の遵守を唱えている。集団的自衛権の行使は国際法の秩序を維持することを目的としている。

中国の「専制と圧迫」を除去しようとする国際社会で「名誉ある地位」を占めたいという主体的な意思の表れであろう。

それは戦争勃発の危険を伴う困難で緊張を強いられる営みである。だが、自分は手を汚さず、リスクの高まりそうなことは避けたいと「自分のことのみに専念して他国を無視する」リベラル派とは根本的に考えが違う。

そうした安倍首相を孤立させてはならない、と考えるのは自然であり、日本人としての責務ではないか。

井本 省吾

最終更新:8/17(水) 16:30

アゴラ

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