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世界遺産の美術館へ。決定後初の展覧会の楽しみ方を教えます!

Casa BRUTUS.com 8/17(水) 15:00配信

祝「世界遺産」決定! その〈国立西洋美術館〉で現在開催中の企画展が『聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画』。

細かい線でびっしりと描かれた宗教画から、くすっと笑える男女の機微までが並ぶ。じっくり見たい版画や工芸をご紹介します。

フランスの〈ロンシャンの礼拝堂〉など7か国、17施設が「ル・コルビュジエの建築作品」として世界遺産に登録される。大陸をまたいで複数の物件が登録されるのは初めてのこと。〈国立西洋美術館〉はル・コルビュジエが日本に唯一残した建築だ。

『聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画』は世界遺産登録後に初めて開かれる展覧会ということになる。15世紀後半から16世紀初頭のドイツで活躍した銅版画家、イスラエル・ファン・メッケネムの作品を中心に工芸なども含めて約100点が並ぶ。メッケネムの版画はどれも1点ものだ。当時は1つの版で100枚程度刷られたと思われるが、残っているものは少ない。また近年、発行されたカタログ・レゾネ(全作品リスト)には約500点が収録されているが、実際はもっと多かったと思われる。

メッケネムは銅版画家として大きな成功を収めた。40代のころ、街の中心に家を構えていたとの記録が残っている。また彼の没後2年後に出された書籍には「ヨーロッパ中で人気」と書かれている。メッケネムの銅版画に色をつけたものなども残っているが、彩色されたのは約100年後のことだ。刷られてから1世紀たっても彼の銅版画が大切にされていた証だ。

展覧会タイトルの「聖なるもの」は宗教画を、「俗なるもの」は世俗画を指す。宗教画は聖書に基づくモチーフを描いたもの。メッケネムの銅版画も、お祈りの時に使う祈祷画として人気を得たようだ。商売上手なメッケネムはここで、似たような図柄で大中小とサイズを変えて制作したりしている。「お求めやすいお値段のものもございます」というわけだ。12の聖人を2人ずつペアにして6点シリーズにしたものも。宗教画には病気の治癒など、お守り的な役割も期待されていた。「セットでお持ちになるとご利益が」などというセールストークが行われたのかもしれない。

さらに、メッケネムの作品の中には「この絵の前で祈れば2万年分の罪が許される」などというものもあった。こういった免罪符的な銅版画を手がけたのはメッケネムが最初だとされる。いつの世にもこんなちゃっかりしたビジネスマンと、ラクして救われたいと願う人はいるものだ。

メッケネムの時代の宗教画では先人たちの絵をコピーしたものが多く見られる。左右反転(版画なので)しただけの丸写しに近いものもあれば、複数の作品からちょっとずつ引用してコラージュしたものもある。当時は著作権という概念がきちんと確立していなかった。また、この頃の画家は自己表現の手段として絵を描いていたわけではなく、お祈りのためのツールとしての絵を量産していた。アーティストというよりは職人に近い立場だったのだ。

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最終更新:8/17(水) 15:00

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