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世界中の時事とエンタメが繋がる驚き――南キャン・山里亮太さんが語る「町山智浩論」 『「言霊USA」特別LIVE アメリカ大統領選2016』(町山智浩 著)

本の話WEB 8/18(木) 12:00配信

映画評論家でアメリカ情勢にも詳しい町山智浩さんが、アメリカ大統領選のポイントを解説した電子書籍『「言霊USA」特別LIVE アメリカ大統領選2016』。発売を記念して、TBSラジオ「たまむすび」で町山さんと共演している南海キャンディーズ・山里亮太さんに、町山さんの魅力について伺いました。

――「たまむすび」では、山里さんは火曜日パートナーとして出演されていますね。

 はい。もう4年以上になります。火曜日の「たまむすび」には、町山さんの「アメリカ流れ者」というコーナーがあるんです。町山さんにはその中で、最新の映画評論や、その時々の時事ネタを喋ってもらっています。

――山里さんは、町山さんの映画評論を聞いて、その後実際に映画を観にいかれることがよくあるとお聞きしました。

 ほとんどそうですね。僕は元々映画を観る習慣がなかったんですが、町山さんが紹介してくれる映画って、すぐに観に行きたくなるんですよ。町山さんはとてもピュアで自分の信念に忠実なので、「この映画はこういうところが凄いんだ!」という気持ちを全力で伝えてくれる。だから、ものすごい人の心に刺さるんですよね。それはラジオでも文字でも同じだと思いますが。

 最近だとディズニーアニメの『ズートピア』を観にいきました。色々な動物たちが暮らす街が舞台で、新米警官であるウサギの女の子と詐欺師のキツネが出会って、お互いに成長していく話です。『ズートピア』では、今までだったら普通に流しているシーンが、町山さんの話を聞いてから観ると、何十倍も引っかかるようになったというか。警察署の受付のチーターが、主人公のウサギに「かわいいねえ」と喋りかけると、ウサギが「ウサギがウサギに『かわいいね』と言うのはいいけど、あなたから言われるのはちょっと……」と答えるシーンがあるんです。町山さんの話を聞いていなかったら、生意気なウサギの演出かな、と流すところなんですが、実はこのやりとりには人種差別の話が隠れていて。同じ人種の人たちの間では使ってもいいけど、他の人種の人が使ってはいけない言葉があるんですよね。アメリカの抱えている問題がズートピアに凝縮されていると分かると、見方がまた変わって本当に楽しい。

 町山さんの喋りが上手すぎて、本編を超えてしまうという事件も起きるんですよ。町山さんの話を聞いて、「めちゃくちゃ面白いじゃん!」と思って、公開を待って待って待って、いざ映画館で観たら、「町山さんの話のほうが面白いな」という(笑)。

 あと、よく覚えているのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。過激なカーチェイスシーン満載のアクション映画で、日本でもヒットしましたよね。『マッドマックス』を観た後、僕、「ただただ狂ったバトルが続く!何も考えないで観れた!」とTwitterで浅い感想を言っちゃったんです。そうしたら、熱狂的な『マッドマックス』ファンたちから、「『マッドマックス』は女性が自由を勝ち取る映画なのに、何もメッセージがないように言うのはサイテーだ」とめっちゃ叩かれて。

 僕はよく炎上してしまうので、「またネットが燃えてんな」と放置していたんですよ。そうしたら、いきなり果敢に戦い出す人がでてきて、誰かと思ったら町山さんだった(笑)。町山さんはTwitterで、「山ちゃんは映画をこう捉えていて、こういう意味で感想を述べている。女性蔑視の意図があるわけではない」と、僕の代わりに反撃してくれて。気づいたら、町山さんが誰よりもキレていました(笑)。

――最初におっしゃられた、「自分の信念に忠実」という部分と繋がるところもありますね。

 そうですね。僕がすごいなと思っているのは、町山さんが本当に怒ったり、感情をあらわにして、人にモノを届けられるところ。大人だし地位もあるんだから、デーンと構えていればいいのに、本当に好きなモノが間違った見方でバカにされると、全力で怒るし、全力で叩き潰しにいく。「これはこんなに面白いところがあって素晴らしいのに、どうしてそこに目を向けないで表面的におとすんだ」と。

 しかも、町山さんが怒っている時って、怒りの温度はあるんだけど、話す内容はものすごく論理的なんですよね。感情に動かされて怒っているのに、文字に起こすとものすごく論理的になっています。それで、ずっと論理的に主張を積み上げていくんだけど、最後の最後、ここはもういいよねっていうところで、とたんに口が悪くなる。「もうバカですよ、みんな」とか、ラジオでもよく言っています。

 でも、そういう風に真面目に語っているかと思ったら、「ここで?」というタイミングでいきなり下ネタを挟んでくるところもあって。「たまむすび」では、しょっちゅう嬉しそうに映画俳優のお尻の話をしていますよ。あとは、町山さんが勝手に、どうオブラートに包んだらラジオで女性器の名前を言えるか挑戦しているんです。いつも言っているのは、インカ帝国の初代国王、マンコ・カパック。「あの初代国王の名前みたいにね」って、毎回楽しそうに言っています(笑)。

――そのようなところも、町山さんの魅力の一つですね。さて、今回発売された電子書籍は、アメリカ大統領選に関するものですが、町山さんが語るアメリカ政治の面白さはどこにあるんでしょう。

 町山さんの政治への切り込み方は、ジャーナリストとは違いますよね。ジャーナリストの人は、出来事を忠実に説明していくことが多い。だけど、町山さんは、歴史・文化・ゴシップの3つをギューッと凝縮して、時事にコーティングして説明してくれる。だから、聞いていて、すごく楽しいんです。

 トランプに関する話でもそうです。ワイドショーでは、不動産王としての経歴や、イスラム教徒やヒスパニック系の移民への暴言といった、目立つ部分だけがクローズアップされているので、本当に色物にしか見られない。予備選が始まったとき、世間は「こんな色物候補が絶対勝つわけない」と思っていて、僕自身も、「トランプは変なおじちゃんだけど、まあ、自分たちの国が一番であればいいという気持ちは分からんでもないな」くらいに思っていました。

 でも、この電子書籍にも書いてある通り、町山さんはアメリカの文化や、いままさに現地で起こっている出来事を絡めて、トランプ現象を解説してくれる。町山さんによると、トランプは昔から今のような暴言キャラだったわけではなく、過去に選挙で人種差別的な候補者に負けたことや、アメリカンプロレスにお客さんが熱狂している様子を見て、共和党支持の白人にウケるキャラクターのあり方を学んだみたいなんですね。そういう話を聞くと、トランプが自分の政策に目を向けさせるために、わざとドラマチックに道化を演じているとすればカッコイイな、と思ったりもします。

――なるほど。では、どのような方に町山さんの書籍はおすすめでしょうか?

 アメリカ大統領選の話であれ、戦争の話であれ、国の緊張状態の話であれ、どんな話でも、その中に下ネタを入れられる人ですから。読んでいるときは、「またバカなことを言って」と思ってしまうんですけど、全部読み終わったあとは、ものすごく考えさせられてしまいます。堅苦しくないのに、物事を楽しむ感受性が育っていくというか。だから、みんなが同じようなものを報道している、今のワイドショーやニュースに飽きてきている人たちには、ぜひおすすめしたいです。物事をちょっと違う角度から知りたい、という方にはぴったりかと。

 勉強をしたり、本を読んだり、テレビを見たりして、人はそれぞれ引き出しを増やしていくと思うんですけど、町山さんの話を聞かないと増えない引き出しって、絶対あると思うんですよね。世界中で起こっている出来事とエンターテインメントを、全部繋げて見られるような目線。そういう目線を与えてくれるのは、町山さんぐらいしかいないんじゃないかな。

山里亮太(やまさと・りょうた)

1977年千葉県生まれ。2003年、お笑いコンビ「南海キャンディーズ」を結成。以後テレビ、ラジオ、ライブなどで幅広く活躍している。主な出演テレビ番組に、「スッキリ!!」「アウト×デラックス」「ナカイの窓」、ラジオ番組に「水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論」「赤江珠緒 たまむすび」など。著書に「天才になりたい」(朝日新聞社)、「ニュースの読み方教えます!」(三田村昌樹との共著・ヨシモトブックス)などがある。

聞き手:「本の話」編集部

最終更新:8/18(木) 12:00

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