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「ただ褒めるだけの実況なんて本当のファンは求めていない」 ウーゴ・ルッソの魂【名ラジオ・アナウンサーの矜持】

フットボールチャンネル 8/18(木) 10:20配信

 サッカー中継に欠かすことのできない実況アナウンサー。イタリアで人気ラジオ番組の実況に生涯を捧げたウーゴ・ルッソ。彼はその声と魂で何を伝えてきたのか? イタリア全土のサッカーファンから深く愛された声の主を訪ねた。(『欧州フットボール批評special issue 02』より転載/取材・文:宮崎隆司)

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圧倒的な知識量と深いサッカーへの愛情

 随分と冷え込みが厳しくなっていた昨年(2014年)10月12日、午後にラジオから流れてきた彼の震える声を耳にした時、私は熱く込み上げてくるものを留めることはできなかった。

 ちょうどイタリア人の同僚記者たち4人とトスカーナ州の田舎町へユースの試合を取材するために車で移動していた最中だった。ラジオを聞き終えると、同乗していた彼らは「ちょっと休憩でもしようか」と言い、運転している私にサービスエリアで停まるよう求めてきた。

 彼らもまた涙をこらえきれず、かといって何か別の話でもして気を紛らわせることもできず、タバコでも吸いながら心を落ち着けるより他なかったからだ。両隣の車からも同じラジオ実況の声が聞こえてくる。そして車を降りると、外では30代後半の男がこう呟いていた。

「48年だよ、48年。あのオッサンの渋い声、生まれた時から聞いてきたんだよなあ。でももう次の日曜日から聞けないのか……」

 その「オッサン」改め声の主は、ウーゴ・ルッソという名の記者、正しくは、ラジオの実況に生涯を捧げたアナウンサーである。ローマ出身、1950年生まれ。18歳になる前から「レコード」という名の地元の小さな新聞に寄稿し、74年にはローマ初のラジオ局でも働くようになった。

スタジアムでラジオ放送を聞きながら試合を見る文化

 以降、テレビ放送の開始にも携わりながら、94年に国営放送局(Rai)へ入社。そして98年から、イタリアで最も愛されるラジオ番組『ミヌート・ペル・ミヌート(minuto per minuto)』を受け持つようになる。

 この『ミヌート・ペル・ミヌート』とは、ローマをキー局として週末の全スタジアムを繋いで国営放送局(Rai)が放送するリレー方式のサッカー中継である。その歴史は1959年に始まり、第一回目の放送はミランvsユベントス、ボローニャvsナポリ、アレッサンドリアvsパドヴァの3試合だったという。今日のような衛星放送はもとよりテレビ中継そのものがなかった時代、とりわけ70~80年代には実に2500万超とも言われるリスナー数を誇った番組である。

 週末、日曜の午後3時。試合が始まると、ある人々は昼食後の散歩をしながら、またある人たちは近所の公園に集まり一台のラジオを囲みながら、そして実に多くの人々がラジオを持ってスタジアムへ行き、試合を観ながらその実況を聴く。もちろん時代の流れとともにテレビの力に押されているとはいえ、それが今日にしてもなお、この国ではすべての街でおよそ当たり前の光景として広がっている。その番組は、ウーゴの説明によると次のような形である。

「2000年までキー局はミラノだったんだが、現在はローマでね。そこと各スタジアムに派遣されたアナウンサーたちを繋いで順に実況のリレーをやっていくという実にシンプルな構成なんだよ。ユベントス対ミランのようなビッグカードがあれば、その試合に最も長い時間が割り当てられるんだが、それでも1回あたりの中継時間は約90秒で、その他の試合は50~60秒毎にリレー方式で継ながれていくんだ」

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最終更新:8/18(木) 10:20

フットボールチャンネル

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