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新しい世代にザ・ビートルズを伝えるテレビアニメ『ビートバグズ』

ローリングストーン日本版 8/18(木) 12:00配信

Netflixのアニメ番組が、ファブ・フォーのバック・カタログを使って子どもたちに人生の教訓と音楽の素晴らしさを教える。

【動画あり】新しい世代にザ・ビートルズを伝えるテレビアニメ『ビートバグズ』

杖とシルクハットを持ったバッタのジャスパー。プラスチックの箱に捕らえられているが、これはチャンスだと思っている。「この豪華なパノラマカーに飛び乗るんだ」と、外から彼を見つめ返している5匹の小さな虫に語りかける。「目を見張るようなマジカル・ミステリー・ツアーに出発だ!」 興味をそそられたこの小さな生き物は、Netflixの子ども向けアニメの新シリーズ『ビートバグズ』のスターたち。――さあ、出発だ!

祖父母世代なら、ジャスパーがミュージカル『ザ・ミュージック・マン』の詐欺師に違いないと気づくだろう。親世代なら、ジャスパーが『マジカル・ミステリー・ツアー』を歌うのを聴いて、エディ・ヴェダーの声だと気づくだろう。そして何より重要なのは、子どもたちがビートルズの音楽を体験しながらジャスパーと仲間たちと一緒に冒険の旅をすることだ。パパもママも、おじいちゃんもおばあちゃんも思いもしなかった方法で。

「明確なビジョンがあるアイデアでした」と、Netflixの最高コンテンツ責任者テッド・サランドスは話す。「音楽を通じてコミュニティと自我を学ぶ2~5歳児を対象にした番組で、ビートルズの曲とはすぐには結び付きそうもないですが、ジョシュ・ウェイクリーは実に巧みにまとめていました」

『ペニー・レイン(Penny Lane)』『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ(Lucy in the Sky With Diamonds)』『マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)』などのビートルズの曲をアニメで使用する権利を獲得した3年前、ウェイクリーはオーストラリアの無名の脚本家兼プロデューサーだった。各話11分の『ビートバグズ』のストーリーは、大まかにはファブ・フォーのシングル曲の歌詞に基づいている。「錬金術のようなものでした」――先に思いついたのは曲なのかアニメシリーズのコンセプトなのかという質問に、彼は答えた。「車の中で『愛こそはすべて(All You Need Is Love)』を聴いた時、メロディ的に完璧な曲だと思ったんです。曲に込められた愛のメッセージに、若い親として共感しました。これは子どもたちに伝えたいメッセージだと」。

--{新しい世代にザ・ビートルズを伝えるテレビアニメ『ビートバグズ』(2)}--

ウェイクリーは、曲を確保するために3年を費やした。最初に交渉したのは、バンドの曲のカタログを管理している音楽出版社、ソニーATVオーストラリア部門のダミアン・トロッターだった。「ビートルズの版権を獲得するにはどうすればいいか聞きました。すると、『無理ですね。彼らは許諾しませんよ。版権の保護に徹底しているんです』と言われました」。

しかしウェイクリーにとって、ビートルズ自体をテーマにしたシリーズを作る気がなかったことは幸いだった。ビートバグズの中には小さなビートルがいるが、彼の名前は、ポールでもジョンでもジョージでもリンゴでもなく、ジェイだ。「『ビートバグズ』は、ビートルズのイマジネーションとメロディにインスパイアされました」とウェイクリー。「彼らの作品を使って常に全く新しい世界を作ることが狙いでした」――そのコンセプトを聞き、ソニーATVは企画に賛同した。

楽曲の使用権を確保したウェイクリーは、グローバル・ディストリビューション・パートナーとして、Netflixに企画を売り込んだ。パートナーシップが結ばれると、彼はまず、パール・ジャムとエディ・ヴェダーのマネージャーをしているケリー・カーティスに電話をかけた。「彼は、『エディと話してみないと。でも、素晴らしいアイデアですね』と言ってくれました。そして、エディが承諾してくれて、幸先のいいスタートを切れました」――ほどなくして、ザ・シンズ(『愛のことば(The Word)』)、シーア(『ブラックバード(Blackbird)』)、P!NK(『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ(Lucy in the Sky with Diamonds)』)、ジェームズ・コーデン(『アイム・ア・ルーザー(I’m A Loser)』もオファーを承諾した。「音楽が異なる世代をひとつにするのを見てきたけど、ジョシュがやったことはその好例だ」と、ヴェダーはローリングストーン誌へ宛てたEメールで述べている。(シーズン2には、ロッド・スチュワート、ジェニファー・ハドソン、クリス・コーネル、オブ・マイス・アンド・メンが参加している)

--{新しい世代にザ・ビートルズを伝えるテレビアニメ『ビートバグズ』(3)}--

『ビートバグズ』シーズン1は、Netflixで配信中。 各話でフィーチャーされた26曲に加え、シリーズのテーマ・ソング(『愛こそはすべて(All You Need Is Love)』)と数本のミュージック・ビデオがApple Musicで独占配信されている。11月4日以降はほかの音楽配信サービスでも購入可能となり、ベストコレクションとしてCD化される予定だ。11月18日には、シーズン2全26話がNetflixで世界同時配信される。『ビートバグズ』を観る子どもたちは、60~70年代にビートルズを聴いて育ったベビー・ブーマー、またテレビCMやボックス・セット、リマスター盤、2007年の『アクロス・ザ・ユニバース』などの映画で彼らの曲を聴いたことがあるジェネレーションXの人々に次ぐ、ビートルズ・リスナーの第三世代になるだろう。

「あの映画が公開された頃、娘は14歳でした」と、Netflixのテッド・サランドスは話す。「友達と一緒に5回も劇場へ観に行きました。6回目は私が連れて行ったのですが、映画が始まろうという時、娘が身を乗り出してこう言いました。『映画の中の曲は全部ビートルズが書いたのよ。彼ら、すごく有名になるわ』。娘にしてみれば、初めて聴く曲ばかりだったんです」。

2本の音楽をフィーチャーしたテレビ番組の企画が現在進行中のウェイクリー。まずは、スモーキー・ロビンソンを音楽総指揮に迎え、モータウンのヒット曲をフィーチャーしたNetflixの子ども向けアニメシリーズ第2弾。もう1本は、Lionsgate TV製作の、ボブ・ディランの曲から登場人物を描くAmazonのドラマシリーズだ。いずれもタイトルおよび公開日は未定。3歳の息子が『ビートバグズ』の編集作業を見て、たくさんの曲を覚えたと分かっただけで、今は満足だという。

「『アイ・アム・ザ・ウォルラス、クー・クー・カチュー』って歌いながら家中を歩き回るんじゃないかな」とウェイクリー。「子どもの頃、イエロー・サブマリンの中ってどんなだろう、エリナー・リグビーって誰だろう、歌がいつまでもずっと続くってどんな感じだろう、って空想していた記憶があります。そんなイマジネーションが今の私を作ってくれたんです」。

Translation by Naoko Nozawa

Scott Porch

最終更新:8/18(木) 12:10

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