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ななつ星の乗客はなぜ出発前から泣いてしまうのか

JBpress 8/18(木) 6:10配信

 本連載ではこれまで「営業強化を科学する」と題して、営業やサービスの強化のためのサービスの本質と方法論をご紹介してきました。今回はこの考え方をもとに、優れたサービスのポイントをひも解いてみたいと思います。

 書籍や講演などで、これまでにも様々な優れたサービスの事例に触れた方は多いと思います。しかし、そうした事例の施策や手段をそのまま真似ようとしても、期待通りの成果を得られないことが少なくありません。業界や会社ごとに、抱えている課題や進みたい方向が全く異なるからです。

 「事例は興味深いが、自社でどのように生かしたら良いか分からない」「業界や事業モデルが違うので、自社で同じことをしても役に立たないのではないか」という声をよく聞きます。そこで、優れたサービスの事例から業種や業界の枠を超えた気付きや学びを得ていただくために「優れたサービスのポイント」をひも解いてみたいと思います。

■ 半年間のコミュニケーションでサービスを「共創」

 今回取り上げるのは、「第1回 日本サービス大賞」(※)を受賞したサービスです。

 (※)サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度

 栄えある第1回日本サービス大賞の最高賞である内閣総理大臣賞を受賞したのは、JR九州が運営する日本初の豪華寝台列車であるクルーズトレイン「ななつ星in九州」です。

 贅をつくした豪華な列車というハード面だけにとどまらず、鉄道を“輸送事業”から“感動を呼ぶサービス事業”へと大きく転換させた点が高い評価を得ました。列車の豪華さやサービスの概要はすでに様々なメディアに取り上げられているので、説明はそちらに譲ることとして、ここではななつ星ならではの特徴的なサービスに焦点を当てて、そのポイントをひも解きたいと思います。

 ななつ星のサービスを利用するお客様の中には、列車が出発する前から駅のホームで涙を流している方が大勢いるといいます。これから旅が始まるという段階で、すでに感動が生まれているのです。

 ななつ星はサービス開始以来高い人気を集めており、サービスを利用するためには抽選に申し込んで当選しなければなりません。見事当選したお客様は、当選直後(出発の半年前)から出発当日まで、ななつ星専門のツアーデスクとコミュニケーションを重ねて、旅のプランを決めていきます。

 ツアーデスクはお客様ごとに旅への思いや要望を聞き、それに合わせて旅をコーディネートしていきます。また、出発までの半年の間に、ななつ星や立ち寄り先の地域を紹介した季刊誌、担当クルーからの自筆の手紙なども届きます。

 このようにななつ星は、お客様とツアーデスクが旅の半年前から何度もコミュニケーションしながら、サービスをお客様向けに仕立てて、作り上げていくのです。まさに、お客様と一緒にサービスを作る「共創」を体現しています。お客様は出発日が近づくにつれて、徐々に期待とワクワク感が高まっていきます。

 こういったプロセスを経て、いよいよ出発のときを迎えます。そして、サービススタッフから温かい出迎えの言葉をかけられたときに、思わず感動の涙が流れるのです。

 お客様の旅への思いは乗車するサービススタッフ全員にも共有されているので、旅が始まってからももちろん心温まるサービスは続いていきます。

 この「ななつ星」の事例から学ぶべきなのは、ただ単にサービス利用前にお客様とたくさんコミュニケーションを取りましょうということではありません。一方的にコミュニケーションを取ろうとしても、それが嫌なお客様は、やればやるほど去って行ってしまいます。

 では、ななつ星の事例のどんなポイントを押さえて理解したら良いのでしょうか。次回は、業界や会社が違っても生かせるように、この事例のポイントをひも解いてみたいと思います。

松井 拓己

最終更新:8/18(木) 6:10

JBpress

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