ここから本文です

縮む日露貿易が膨らます日本への憧れ

JBpress 8/18(木) 6:10配信

 昨年来、私たち日露貿易関係者の最大の心配は、貿易量の減少、特に日本からの輸出の減少である。

 日本から輸出金額で最大の割合を占める自動車は、2014年度から継続して対前年度比マイナスが続いている。特に中古車の輸出は2015年からは壊滅的とも言える状態に陥り、廃業する輸出企業も多い。

 こうした数字もさることながら、私たちの心配はもっと深いところにある。

 経済制裁を主因とする不況であれば、経済制裁が中止されれば、ロシア経済は元に戻る。しかし、2014年夏に始まり、この夏でいよいよ3年目に突入する西側の経済制裁とこれに対抗するロシアの自主的輸入制限は、ロシアの産業構造を変えつつある。

■ ロシアの産業構造が激変中

 一例を挙げると、長らく死に体だったロシアの機械産業は、2014年以来、長い睡眠から目覚め、企業数も大きく伸びている。

 これは国家運営のため、必要不可欠な機械、部品は国産化してでも、供給を絶やすことはできない、という輸入代替の必要性から生じた復活と見ることができる。

 本年5月に開かれたロシアの工作機械関連の展示会としては最大級のモスクワ国際金属加工展には、記録的な数のロシア企業が参加した。

 商品的にはソ連時代に逆戻りしたような古典的な機械が新製品として展示されてるなど、技術的に見るものは少なくても、この精神的独立性の復活は大きく、このまま行けばかなり短期間で西側先進国並みの機械を製造することが可能になるだろう。

 日露貿易関係者の心配はここにある。

 ロシアが西側と同等と言える商品を今後数多く生み出すようになると、その分、日本からの輸出は減少、現地生産の必要性も低下していくのではないか、ということである。

 その結果としてのロシア人の西側への関心や憧れの低下、「西側離れ」という現象を恐れているのだ。

 JNTO(日本政府観光局)が毎年発表する訪日外客数推移という来日者数上位20カ国のランキング数字を眺めていたところ、ロシアに特徴的な傾向を認めることができた。

 ランキング表にあるすべての国において訪日者数が伸びていた2015年に、ロシアの数字だけが例外的に減少しているのだ。実数を並べてみよう。

■ 記録的な訪日観光客、ロシアだけ例外

 2008年 6万6270(統計開始後の最大値)
2011年 3万3793
2012年 5万176
2013年 6万502
2014年 6万4077
2015年 5万4400
2016年 2万5400(1~6月までの数字)

 経済制裁が始まったのは2014年の夏である。その影響が出てきたのが2015年、さらに2016年度の上半期は2万5400という数字で、このペースで年度末まで推移すると、年間訪日者数はせいぜい5万人程度での着地となる。

 記録的な来日者数で賑わう統計の中で、ロシアが唯一マイナスの影を落とす存在になっている。

 JNTOでは、ロシアからの訪日者減少について、次のように述べている。

 「その主原因は西側による経済制裁とエネルギー価格の低下であり、具体的には(1)円に対するルーブル価値の下落、(2)ロシア経済全般の低迷、である。したがい、この原因が除去されれば、ロシアからの来日者は再び増加が見込まれる」

 上記JNTO説を簡単に検証してみたい。

 まず(1)円/ルーブル換算レートの推移である。

 2014年夏までは1ルーブル当たり3円というレートをほぼ維持できていたが、ウクライナ上空でのマレーシア航空機撃墜を契機とする、西側による経済制裁が始まる2014年7月以降、ルーブルは急激に対円レートを下げていく。

 現在は1ルーブル1.6円見当なので、2014年初頭から見ると約半額にまで下がっていることになる。安いルーブルは、航空運賃、日本における宿泊代、土産代などすべてに影響し、その結果として1万人もの来日旅行者の減少となって現れたと言える。

1/4ページ

最終更新:8/18(木) 6:10

JBpress

記事提供社からのご案内(外部サイト)

JBpress PremiumはJBp
ressが提供する有料会員サービスです。
新たな機能や特典を次々ご提供する“進化
するコンテンツ・サービス”を目指します。