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タクシー会社がタクシー会社でなくなる!? 「コグニティブ」が新しいビジネスモデルを生み出す

HARBOR BUSINESS Online 8/18(木) 16:20配信

「コグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)」が、急速に普及しつつある。これは、コンピュータの処理の蓄積をふまえ、コンピュータ自体がコグニティブ(認知的)な判断をして、新たなアクションをし始めることを指す。コグニティブの普及は、ビジネスモデルを抜本的に変革するパワーを持ち、そのためには働き方の変革が欠かせないと、この分野の第一人者であるKPMGコンサルティングの林泰弘氏は語る。

「コグニティブにより、例えば、タクシー会社は、輸送サービス業ではなくなり、ホテルは宿泊業ではなくなるのです」と林氏は言う。いったい何を言っているのかと思う読者も多いに違いない。詳しく聞いてみた。

「これまで、タクシー会社は、お客さまを、ある地点から希望する地点まで、輸送することを生業としていました。しかし、そのお客さまがどのようなタイプのお客さまで、どこからどこへ行ったのかなどいう情報は、全く蓄積されていません。

 それが、IoT(Internet of Things/もののインターネット)の普及により、どこの国のどこにお住まいで、最近何を買ったお客さまが、どこからどこへタクシーで移動したということが、瞬時にわかるようになります。加えて、コグニティブ・コンピューティングにより、その情報が蓄積され、例えば、お客さまのタイプ別に、どこからどこへ行く傾向が高いかを、コンピュータ自体が認知するようになり、その認知に基づいて、タクシーの配車や、タクシーサービスのキャンペーンを実施することができるようになるのです。

 そして、その情報は、コグニティブを使っていない、他のサービスを提供する会社や、ある地域に出店している会社にとっては、のどから手が出るほどほしい情報です。それがわかれば、格段に確度の高いマーケティングができるからです。こうなると、もはや、タクシー会社は、輸送サービスの会社ではなく、マーケティング情報を提供する会社ということになるのです」 

 さらに林氏は、「想像してほしい」と語り、別の例も挙げる。

◆非物流から物流へのトレンドがビジネスを変える

「例えばホテルもそうです。ホテルは単なる宿泊サービスを提供するのではなく、どのタイプの人が、いつ、どの場所のホテルに宿泊するか、その前後にどこに行くかというマーケティング情報を蓄積して販売する会社になるのです。そして、その情報を認知して、宿泊前の行動パターンに応じた宿泊サービスや、宿泊した後の行動に関するサポートという新たなサービスを、コンピュータ自体が発案していきます」

 既存の輸送サービス、宿泊サービス自体が大きく変わっていくということなのか?

「そうなのです。輸送や宿泊をトリガーとしたかなり確度の高いマーケティング情報を売る会社に変質していくと、私は思います。これまで、輸送サービス会社は、輸送サービス会社、マーケティング会社はマーケティング会社と明確に役割と専門性が分かれていました。これが融合していくことになります。まさにロジスティックスにおけるビジネスモデルのパラダイムシフトが起きると私は確信しています」

 輸送や宿泊だけでなく、他のビジネス形態もマーケティングと結びつくことはないのだろうか?

「確かに他の小売やアパレルのビジネスもマーケティングと結びつきやすいでしょう。しかし、私は、次のビジネスモデルの変革は、輸送や宿泊サービスだと思います。なぜならば、人が動くと言うこと自体が、人の行動の変化を示しているわけで、その人の行動を読み取ろうとするマーケティングに一番結びつきやすいと思うからです」

 なるほど、となると、いわゆる物流ビジネスへの参入者が増大するのではないだろうか?

「コンビニエンスストアや、ファスト・フード店も宅配サービスを開始するところが出てきています。まさに、非物流会社が、物流サービスに参入して、マーケティング情報を蓄積して提供するようになる。これは、大きな変革です」

◆「日本の強み」を活かした新しいビジネスモデルの可能性

 コグニティブの普及は、グローバルなトレンドになりつつある。我が国のビジネスにとって、特にインパクトのある点は何なのだろうか?

「日本のタクシーのサービスや安全性の高さは、グローバル随一です。宿泊においては、グローバルチェーンホテルも普及していますが、日本固有の高いサービスを誇るところも数多くあります。また、日本のコンビニは、日本発祥といってもいいほど独自進化を遂げている。まさに、日本の強みを生かした分野で、日本が新しいマーケティング情報提供を実現するトップランナーになり得ると思います。

 私は、5年前ではありますが、国土交通省のCIO補佐官として、IT活用によるワークスタイル変革、働き方の改革に取り組んでいました。地方事務所における現場の仕事から本部機構における政策、企画の働き方の変革を分析、支援した当時の経験をふまえると、国の発展や国民の自己実現を果たすことに最も重要なことは、ビジネスモデルのパラダイムシフト、そこには働き方の変革が不可欠だと確信しています。そしてそれが実現できるタイミングが、すぐ目の前にきているのです」

<取材・文/HBO取材班>

はやしやすひろ●KPMGコンサルティング株式会社ディレクター。コンサルティング会社で官公庁、公共系システム等に従事した後、KPMGコンサルティング株式会社ディレクター。元・国土交通省CIO補佐官。コグニティブを活用したビジネス伸展、社会構造変革をリード。IT戦略・計画策定、情報システム構築・管理、ITガバナンス、業務プロセス改善などに取り組む。慶應義塾大学経済学部卒。趣味は、サッカー(審判3級、指導者D級)。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/19(金) 14:10

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