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“NO BUSINESS, NO MUSIC.”――タワーレコードは生き残れるのか

HARBOR BUSINESS Online 8/18(木) 9:10配信

◆“NO MUSIC, NO LIFE.”でお馴染み、タワーレコード

 タワーレコードは“NO MUSIC, NO LIFE.”のキャッチコピーでも有名な、米国サクラメントに本社を置く音楽販売チェーンです。日本国内でも、HMVや新星堂等と並ぶ大手チェーンとして全国に展開しています。ただ、後述の通り、2002年にMBOにより米国本社から独立しているため、現在では資本関係はありません。

 タワーレコードの発祥は、創業者ラス・ソロモン氏が、1939年開業の映画館「タワーシアター」の建物内にあった、父親の経営するドラッグストアで中古レコードを販売したことに端を発しています。なお、企業名もこちらに由来しており、お馴染みの黄色に赤字のロゴはシェル石油のカラーリングを参考に作られています。

◆本場のスタイル×洋楽ブーム×シャワー効果で、日本でも大人気に

 そんなタワーレコードが日本に上陸したのは1979年。最初は小売ではなく、米国本社の一事業部として輸入レコードの卸売からのスタートでした。しかし、卸売業はあまりうまくいかなかったため、米国と同様店舗での小売に方針を転換、1980年に第1号店を札幌に、1981年には第2号店を渋谷(移転前、現在の東急ハンズの向かい辺り)にオープンします。

 本場米国の雰囲気を持ち込んだ、広大なフロアに整然と並べられた豊富でリーズナブルな品揃えのレコード、店員による手書きPOPのレコメンドなど、スーパーマーケット型のスタイルは当時の音楽ファン達の注目を集めます。また、当時の日本ではレコード店というと、あまり良いイメージを持たれていなかったため、好条件のテナント等への出店は困難だったのですが、ややマニアックな存在だった輸入レコードが80年代の洋楽ブームで爆発的に売れ始めると状況は一転、タワーレコードには上層階でのシャワー効果を期待したテナントから出店依頼が相次ぎます。

 1985年以降は、仙台、京都、大阪、福岡等、全国の主要都市に店舗を展開、1990年からはJポップやクラシック等も本格的に取り扱うようになり、大量の試聴機設置やインストアイベントの開催等、現在の音楽ストアのスタンダードとも言えるスタイルを築き、1995年には渋谷店が現在の神南一丁目に移転、音楽商材に加えて映像や書籍フロアも新設され、売り場面積1500坪、在庫枚数70万枚を誇る世界最大級の旗艦店が誕生しました。

◆米国本社が倒産後、日本法人はNTTドコモと7&i傘下に

 こうして日本で大きく成功を収めたタワーレコード、日本以外でも世界17カ国に展開するなど積極的な事業拡大を図ったのですが、89店舗を展開した米国本社では、1980年代半ばから、ウォルマートやベスト・バイなどの総合スーパーや家電量販店による、来店促進を兼ねたCDやDVDの廉価販売(定価販売を原則とする再販制度が無いため)で顧客を奪われ続けていました。

 さらに、90年代後半からはAmazon等のインターネット通販にも侵食を受け、業績は大幅に悪化、遂に運営会社であるMTS社は2004年、2006年と立て続けに倒産へと追い込まれます。この流れの中で前述の通り、日本法人のタワーレコードは2002年にMBOによって米国法人から独立したわけですが、2005年にはNTTドコモが42%、2010年にはセブン&アイホールディングスが44.6%、それぞれ株式を取得して筆頭株主となり、2012年からは再びNTTドコモが50.3%まで株式を取得して子会社化し、現在に至っています。

第35期決算公告:6月1日官報96頁より

売上高:524億5500万円

経常利益:4億6600万円

当期純利益:2億2200万円

利益剰余金:△30億500万円

過去の決算情報詳しくはこちら http://nokizal.com/company/show/id/1130737#flst

◆“NO MUSIC, NO LIFE.”と“NO BUSINESS, NO MUSIC.”の最適解はあるか?

 インターネットの普及により、単純に提供手段が店舗でのCD販売からダウンロード、ストリーミング配信へと変化したことに加え、Youtubeのようなサービスの登場や個人の嗜好性の変化により、転換期を迎えている昨今の音楽産業、今回取り上げたタワーレコードにしても、その豊富な品揃えとリーズナブルな価格帯により音楽の普及に大きく貢献したわけですが、その裏で少なくない個人経営のレコード店が消えていき、そうして獲得したパイも米国ではウォルマートやベスト・バイに思わぬ形で奪われ、最近ではそのウォルマートやベスト・バイもまた、Amazonに食われています。

 その流れを見ていると、きっと音楽というものは踊りや絵画同様、人間の原初的活動といった意味では、まさしく“NO MUSIC, NO LIFE.”と表現されるだけの魅力を持ちうる一方で、現代において膨大な人間に多様に進化した音楽を流通させるには、“NO BUSINESS, NO MUSIC.”である商業面もやはり否定しきれず、今後本質的にそこのバランスを取れるようなサービスやプレイヤーが登場するのか、はたまたタワーレコードのような既存のプレイヤーが時代とともに進化を遂げるのか、注目ですね。

決算数字の留意事項

基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。

【平野健児(ひらのけんじ)】

1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『SiteStock』や無料家計簿アプリ『ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。

<写真/MiNe>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/18(木) 9:14

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。