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「シン・ゴジラ」こそ、「3.11」後の新たな国民映画だ!

週刊文春 8/19(金) 12:01配信

 公開17日で230万人を動員し、興行収入33億円突破という大ヒット映画「シン・ゴジラ」に、稀代のサブカル評論家であり、覆面コラムニストの小石輝が熱いオマージュを捧げる!

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「シン・ゴジラ」が熱い。公開直後からネット上では「凄すぎて泣いた」(一般人)「ここ10年ぐらいの邦画のナンバーワン」(評論家・宇野常寛氏)など絶賛の嵐。一方で「日本人=日本国家への信頼と鼓舞ばかりが語られ、不気味だった。ニュータイプの国策映画だ」(批評家・杉田俊介氏)など、作品の「右傾化」を批判する論調も少なくない。

 要するに、観た人の多くが「オレはこう思う!」と熱く語り始めたくなるような、日本人にとって切実な問題提起、深い謎かけをしている映画なのだ。

 私自身、仕事をさぼって公開初日の朝9時から鑑賞したが、正直打ちのめされるような思いを味わった。「今、日本でゴジラを作るとはどういうことか」「怪獣映画を、極上の大人向けエンターテインメントに仕立て上げるには何が必要か」ということを、庵野秀明総監督を始めとする作り手たちが考え抜き、持てる限りのアイデアと力を注ぎ込んだことが、画面の隅々から伝わってきたからだ。映画作りと物書き。ジャンルは違えど「自分はこれほど誠実に仕事に取り組んできただろうか」と、考え込まざるを得ないほどの衝撃だった。

ネットで話題の「蒲田文書」に感じる気迫

 ネット上では、ゴジラが大田区蒲田に上陸して群衆が逃げ惑うシーンを撮影する際、スタッフがエキストラたちに配布した説明文、通称「蒲田文書」が話題になっている。「皆さま、本日は各々方の想像力を目一杯稼働させていただき……、皆さまお一方お一方にしか出来ないお芝居をしてください」「この映画を1ミリでも質の高い映画にするために、何十年、百年単位で語り継がれる映画にするために、皆さまのお力をお貸しください」。多少の暑苦しさはあるものの、作り手たちの気迫がにじみ出た文章と言えるだろう。

 そもそも、1954年に公開された第一作の「ゴジラ」こそ、一般の大人向けに作られ、記録的な大ヒットをした作品だった。

 圧倒的に強大で異質な存在が突然現れ、自分たちの住む街を、社会を蹂躙し、日常生活を破壊し尽くす。私たちはそれに対して為す術もなく逃げ惑うか、立ち尽くすしかない――。その絶望感と無力感を観る者に体験させることが、初代ゴジラのすごさであり、当時の日本人にはそんな物語を求める切実な時代背景があった。先の戦争における大空襲や原爆投下の体験、水爆実験による第五福竜丸の放射能汚染事件、そして冷戦下での核戦争への恐怖……。

 逆に言えば、「怪獣」という徹頭徹尾荒唐無稽な存在が、生々しいリアリティーをもって人々から受け入れられるのは、極めて特殊な状況下に限られる。戦争の記憶が薄れ、冷戦が終結する中で、怪獣映画が子どもや一部のマニア向け作品へと退行していったのも、自然な流れだろう。

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最終更新:8/19(金) 12:06

週刊文春

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