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「本当は金が欲しかった」錦織圭がリオの銅に見いだす大切なこと

webスポルティーバ 8/19(金) 12:33配信

 南米のリオデジャネイロで掴んだ銅メダルは、北米大陸の北東に位置するシンシナティに向かう途中、フロリダの自宅に数時間だけ立ち寄り、大切にしまってきたという。

【写真】「成長を測る存在」のナダルを撃破した錦織圭

「誰も盗まないといいんだけれど……」

 メダルの居場所を明かした後、彼は笑って付け加えた。

 メダルをかけたラファエル・ナダル(スペイン)との死闘から24時間も経たぬうちに、錦織圭の姿は、次の戦地であるシンシナティにあった。8月16日の昼からは会場でファンが見守るなか、練習も行なっている。オリンピックには同行しなかったダンテ・ボッティーニ・コーチとも談笑し、軽くではあるがコートの感触を確かめるようにボールを打つ姿からは、連戦の疲労以上に、軽やかな解放感が感じられた。

「ホッとしたというのが、勝ったときは一番大きかったですね」

 銅メダルを決めた一戦を終えたときの心境を、錦織はそう振り返る。嬉しさは、もちろんあった。だが、それ以上に、「気持ちをすごい奮い立たせて、最後はがんばった」がための脱力感のほうが大きかった。

「まあ……、やっぱり本当は金が欲しかったので……」

 多少の苦みが混じる笑みを浮かべた口もとから、本音がポロリとこぼれ落ちる。それでも時間が経つにつれ、オリンピックでメダルを手にした事実は、喜びを伴ない心に染み込んだ。

「実感は沸いてきましたね。いろんな方からメッセージをもらったし、LINEは溢れ返るくらいになっていた。とても嬉しい反響でした。銅メダルではありますが、最後にメダルをかけて戦うのは滅多にできない経験ですし、有意義な時間を過ごせました。個人戦とはまた違った重みだったり、反響の大きさなどたくさんのものを感じながら、1週間オリンピックで過ごしていました」

 今回のリオ五輪は、勝ってもランキングポイントは与えられず、スケジュールも過酷を極めた。シングルスで金メダルに輝いたアンディ・マリー(イギリス)や、ダブルス金・シングルス4位となったナダルらも、9日間で競われたテニス競技のスケジュールについて、「あまりにタフ。2週間は欲しかった」と口をそろえたほどである。

 それでも、錦織の五輪出場の決意は固く、そこに関してはチームスタッフたちも、「相談の余地はなかった」という。それほどの覚悟で向かったリオの地から、理想の色ではないながらもメダルを持ち帰った感慨や安堵は、周囲が思っていた以上に大きかったのかもしれない。

 しかし、その余韻に浸る間もなく、ATPマスターズ1000の戦いはすでに始まっている。マスターズでの優勝は、錦織が今季最大の目標として掲げてきたものだ。実際、今シーズンはマスターズで2度決勝に進出し、実現可能なところまで迫っている。とはいえ、今回のシンシナティ・マスターズに関しては、「絶対に無理はできない」との迷いを抱えながらの戦いになるのは間違いない。

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最終更新:8/19(金) 12:33

webスポルティーバ

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