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民泊から考える、ホテル業界の未来と地方創生

Wedge 8/19(金) 12:30配信

 少し前までは聞き慣れなかった「民泊」という言葉が、最近は普通になってきた。本書は、その民泊についての理解が進む本である。筆者も仕事柄、出張が時々あり、各地のビジネスホテルに泊まることも多い。最小限の機能しかないものの、必要なものは大抵そろっており、1万円前後で安全かつ快適な部屋に泊まれるスタイルは、日本ならでの良さだと思う。実際、欧米の先進国の主要都市で、日本のビジネスホテル並みの部屋に宿泊しようとしたら、当節は最低でも1泊200ドルから300ドルをかけないと泊まれないというイメージである。それでも多くの場合、費用対効果の満足度は日本のビジネスホテルには及ばないことが多い。

 ところが折からの訪日外国人の増加に伴って、日本国内でも出張の際の宿探しに困る事が多くなってきた。宿泊のみ(素泊まり)でも価格は高くなる傾向が続いており、会社の規定の出張旅費では足が出る場合もある。今からこんな状態では、4年後の東京五輪・パラリンピックの時にはきっと大変なことになるだろうと、この分野に詳しくない身でありながら実感する。

利用者のマナーによるトラブル続出

 そこで民泊を活用しようというのが現在の流れであろう。個人的には、他人が所有する、あるいは、現在住んでいる家に泊まるというのは、親戚や友人など、よほど親しい人でもない限り抵抗があるものだと思うが、外国人にはそれをいとわない人も多い。双方で合意し、安くて快適に過ごせればいいということであれば、それはそれで合理的なのだろう。しかし、本書でも指摘しているように、民泊には課題も多い。なんと言っても利用者のマナーに起因するトラブルである。

 〈宿泊した外国人は、ゴミ出しなど入居者の共通ルールがわかりません。ゴミを平気で廊下に放り出すわ、夜中まで大騒ぎはするわ、お客さんどうしで喧嘩になるわで、クレームが続出して管理組合が対応に追われたのです〉

 自分も経験があるが、賃貸マンションでは契約書や管理規約などで「転貸禁止」をうたっている。転貸といってもいろいろあるが、今の時代でいえば、「民泊させるのはダメ」ということに直結するのだろう。本書でも紹介されているように、マナーを守る意識の希薄な外国人が、マンションの共用スペースで騒いだり、ルールに関係なくゴミを出したりすることは既に起きており、問題にもなっている。これからも広がることは十分考えられ、相応のルール作りは当然、必要であろう。

 ただ、本書を読むと、当面の間、日本のホテル不足は相当深刻であり、民泊を進めることは合理的な選択である。そこにあまり規制を強くかけすぎると、うまく回らないという点も確かである。本書で指摘するように、空き家対策としての民泊の活用などはおおいに考えられていいし、特に地方での空き家対策には有効な一打になる可能性がある。

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最終更新:8/19(金) 12:30

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