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【人工知能まかせ投資】でどれだけ儲かる?

HARBOR BUSINESS Online 8/19(金) 9:10配信

近頃、AIという言葉をやたらと目にするようになった。「人工知能」を意味する英語の略称だが、企業経営の判断にも活用される日が近く、資産運用の世界でも人智をはるかに超えた手腕を発揮することが期待されているという。果たして、本当にAIによる運用は万能なのか? 徹底検証してみたい

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 今年5月9日、夕刊とはいえ、日本経済新聞の1面トップ記事に、「運用 人工知能が台頭」というセンセーショナルな見出しが掲げられた。かいつまんで説明すれば、「世界の金融市場でAI(人工知能)が自動的に運用するファンドが急速に普及しており、実際に高実績を達成している。日本でも、AI運用の投資信託が設定され始めた」といった内容である。日本での具体的な動きは後述するが、こうした風潮を盛り上げようというメディアの熱意はムンムンと伝わってくる。

 しかも、その3か月ほど前には新聞紙上やネット上で異彩を放つ広告が話題を集めた。「9つの質問に答えるだけで、ロボアドバイザーがあなたに最適な資産運用プランを提案します」――と、いまだかつてないメッセージの内容だ。そのインパクトは絶大で、2月16日のサービス提供開始からわずか3か月間で5000人超の申し込みがあったという。これは「THEO(テオ)」というAI運用のサービスで、提供するベンチャー企業「お金のデザイン」COO(最高執行責任者)である北澤直氏は次のように答える。

「『THEO』は最新の金融工学を用いた当社独自開発のアルゴリズムによるロボアドバイザーによって、プロと同じように個々の状況に応じて最適で本格的な国際分散投資を実践できるものです。広義ではAIの範疇かもしれませんが、ロボと命名しているように、私たちはそのように意識していません」

 AIと同義の表現でアルゴリズム、ロボのほか、過去の統計的データをもとにコンピュータを用いて機械的な売買を行う手法としてシステムトレードや自動売買という呼び方もよく耳にする。そもそも投資AIとシステムトレードは何が違うのか。システムトレードの開発を手掛けている、投資家の西村剛氏はこう説明する。

「まず、ロボはシステムトレードのことを言い換えて表現しているケースが多いようです。自動売買についても、同じような意味合いで用いられがち。そして、アルゴリズムはシストレの一種であり、現状のAI運用はほぼそれと同義だと言えるでしょう」

◆AIもしょせんは生身の人間が組んだプログラム

 近年、頻繁に耳にするようになったアルゴリズムという言葉の真意もなかなかピンとこないのが実情だろう。過去のデータをつぶさに解析して最適な取引パターンを見つけ出し、それを機械的に執行するというものだ。西村氏はさらに説明を続ける。

「AIもしょせんは人間が組んだプログラムであり、自ら学習を繰り返すとはいえ、日を追うごとに新たなデータを交えて再検証を行っているにすぎません。その意味では、過去のデータから最適なパターンを導き出して運用しているアルゴリズムとさほど大きな違いがないわけです。強いて言えば、アルゴリズムの多くはスキャルピングのような超短期売買を仕掛けるプログラミングになっているのに対し、AI運用のほうは比較的長いスパンの売買が中心となっているようです」

 とはいえ、言葉の響きが斬新なせいか、国内でもAIが運用する投資信託が設定されるなど、にわかにブーム化しつつある兆しもうかがえる。それでも西村氏は過剰に期待すべきではないと指摘する。AI運用には「過剰最適化」という落とし穴にはまりかねないという致命的な弱点があるからだ。

「検証期間中における最安値で買って最高値で売り抜けるという非現実的なケースを最善策と判定し、そのパターンに基づいた売買ルールを作ってしまうのです。しかも、将来もその最高値や最安値の水準でピタリと流れが反転するとは限りません」(西村氏)

 SBI証券の株式アナリストで電子工学科出身の藤本誠之氏も、AI運用と名の付く金融商品には慎重な姿勢を崩さない。

「本当にいつでもとことん儲かるパターンを解明できるAIを開発できたとしたら、投資信託などを通じて一般の投資家に広く提供するよりも、その金融機関の自己売買部門だけで独占活用したほうがはるかに儲かるはず」

 実は、AI運用投信の前身とも言えるものがすでに存在しており、足元では意外に苦戦中だ。マネックス証券などが販売する「日本株ロボット運用投信」がそれで、投資信託協会のデータによれば、過去5年間における同じカテゴリー内の投信の平均リターンが82%超であるのに対し、わずか9%弱に甘んじている。

「AIの学習がコンスタントに的確であったことが立証されたとしても、おそらくそれは何年も先の話になるでしょう。AI運用の商品を選ぶとしても、それなりに実績を残したうえで判断したほうが無難です。高実績を記録するAI運用も出てくるでしょうが、その手法は未来永劫にわたって通用するわけではないことも知っておくべき。過去の相場で有効であっても、将来の相場でもつねにそうであるとは限らないのが投資の世界なのです」(藤本氏)

 非常に有効な手法が見つかれば、おのずと誰もが同じことをやり始める。すると、相場の動きに変化が生じてしまい、そのパターンが当てはまらなくなってしまうのだ。こうしたことから、システムトレードを手掛けているトレーダーたちも必要に応じてストラテジー(投資戦略)の修正を行っている。

「AIのように最適化を追求するケースよりも、もっとザックリとしたルールに基づくシステムトレードのほうが利益を狙いやすいのが現実。たとえば、3日連続でストップ安を記録した銘柄に買いを入れるパターンなら、60~70%台の確率でヒットします。売りが一巡し、相場の需給関係が改善してくるからです。もちろん、暴落後のリバウンド狙いなど、局地的に通用するAI運用はあるでしょうが……」(西村氏)

 頭からAIを否定する必要はないにせよ、その近未来的なイメージに惑わされて過信することは禁物だろう。

【西村剛氏】

フェアトレード代表取締役社長。システムトレードの開発や投資情報の提供を手掛ける。短期急騰銘柄を言い当てる夕刊フジの「株1グランプリ」グランドチャンピオン大会で3連覇の偉業を達成したことでも知られる

【藤本誠之氏】

SBI証券シニアマーケットアナリスト。的確な銘柄選びと歯に衣着せない本音トークが好評で、「相場の福の神」との異名も。関西大学卒業後、日興(現日興SMBC)、マネックス証券などを経て現職に。Allaboutにて「株式ガイド」執筆中

【北澤直氏】

お金のデザインCOO。’75年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。ペンシルベニア大学大学院修了。モルガン・スタンレー証券に6年間在籍。以前は弁護士として、日本とニューヨークで金融・不動産関連の法律業務を手掛ける

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最終更新:8/19(金) 9:10

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。