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怪物松坂にノーヒットノーラン。京都成章キャプテンが振り返る98年【夏の甲子園決勝の記憶】

ベースボールチャンネル 8/20(土) 12:20配信

厳しい練習が雑草軍団を強くさせた

 2009年、ボルチモア。ボストン・レッドソックスの松坂大輔が、オリオールズ戦のマウンドに立った。メジャーリーガーの風格を漂わせながら投げるその姿を、澤井芳信は特別な思いで見つめた。

「俺もこいつが投げた打席に立っててんなぁ、と。メジャーまで来てくれてありがとう、って思いましたね」

 松坂と対峙した、あの夏。
 1998年、甲子園。京都成章のキャプテンだった澤井にとって、それは決して忘れることのない夏だった。

平安を筆頭に、当時の京都は強豪揃いだった。ボーイズリーグやシニアリーグで名を馳せた選手たちが北嵯峨や京都西(現京都外大西)に入学、京都成章は軟式経験者ばかりで、エリートと呼ぶには程遠い雑草軍団。そんな自分たちが甲子園へ行くために何をすべきか。奥本保昭監督(現塔南監督)は「強豪校と同じことをしていても勝てない」と、メンタルトレーニングや体幹などのコンディショニングトレーニングに重きを置いた。

「3カ月に1回、体力測定があるんです。腹筋は体重が60~64kgの人は6kg、65kg~70kgならば7kgのおもりを頭の後ろに持って45度キープで1分間耐える。それが終わったら次は足を上げた状態で、足の上におもりを乗せてまた1分間。さらに背筋も同じく頭の後ろに持って1分間、足の上に乗せて1分間。これがクリアできないと基礎体力がないということでレギュラーになるための一つに基準になります」

 大会が近づいて来れば、必ず取り入れられるのが「27アウト」という伝統練習。ベンチ入りメンバーのバッテリーと内野手が守備につき、外野手はランナーとなり、ファーストへの送球で9回、ダブルプレーで9回、バックホームを9回、計27個のアウトを連続して取るまで終わらない、エラーをすると全員でベースランニング1周をするという、まさに地獄の練習だ。

「26アウトを取った後、ショートの僕がホームに大暴投して最初からやり直したこともありました。あと1つ、というところでエラーですから。周りは露骨に嫌な顔をするし『何しとんねん』と怒号も飛んでくる。でもね、仲良しクラブじゃ勝てないですから。そうやってお互いの感情をぶつけ合って、ある一定の数をやるとどうすると終われるか、どのように声をかけると良いプレーができるかと考えだすんです。みんなでクリアするから達成した時のワーッという感じは、ものすごく大きい。ほんまにいい練習でしたよ」

 どれほど厳しい練習も「やらされている」とは思わず、それが当たり前だと思って取り組んだ。野球だけでなく、生活面でも約束事を設け、きちんと守ることができればきっと野球にもつながると信じ、炭酸飲料は禁止、赤信号は渡らない、など、独自のルールも設けた。

「ちょっとヤンチャやったヤツが、朝6時に1人で交差点に立っていたんです。誰もおらんのに、赤信号が青に変わるのを待っていた。5mくらいの横断歩道だったんですが、誰も見ていない、車も来ていないとなれば渡ってしまう人もいるじゃないですか。でも渡らずに信号が変わるのを待っていた。彼は試合に出るメンバーじゃなかったけど、同じ気持ちで、当たり前のように信号を待っている姿を見たら、これがウチの強さや、って思いましたね」

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最終更新:8/20(土) 17:52

ベースボールチャンネル

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。