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今宮健太、後輩のために潜在能力を爆発させた圧巻の10球。「絶対に負け投手にしたくなかった」【夏の甲子園の記憶】

ベースボールチャンネル 8/20(土) 17:00配信

良くも悪くも高校生らしからぬ選手

 第一印象は“いいかげんなヤツ”だった。
 
類いまれなポテンシャルをちらつかせ、確かに逸材ではあったが、その第一印象から、今の彼を想像することはできなかった

 ソフトバンクのショートストップを務める、今宮健太を初めて見たときのことだ。
 
 場所は神宮球場。高校1年生秋のことである。

 神宮大会高校の部1回戦に登場した今宮は、「1番・投手」として出場。
 高校野球でも、その役を務める選手はなかなかいないが、その起用をされているだけで、彼がどれほどの選手であるかは理解ができた。

 とはいえ、そのプレースタイルは、とても高校生らしいとは言いがたかった。
 というのも、今宮はシングルヒットを放つと、さも自身がプロ野球選手であるかのように、トロトロとした走塁で、一塁へ到達したのだった。

 走者になっても、彼のやる気のなさは顕著だった。
 第二リードを取らない、打球がボールに当たるのを待っているだけだった。

 小さい体でも振り負けることのない力強いスイングやマウンドでのパワーピッチは見るものを魅了するものがあったが、精神性がまるでなかった。ただ好き勝手に野球をやっている選手にしか映らなかったのだ。

 もっとも、結果は想像通りだった。
 確かに1年の秋に県と九州大会を制覇し、神宮大会へ進出してきたが、翌年春のセンバツでは初戦敗退。印象に残るような活躍はしていない。2年夏の甲子園を逃し、翌春のセンバツでも甲子園には出てきたが、2回戦で菊池雄星(西武)のいる花巻東に完敗。今宮は何も残すことなく、甲子園を後にしていた。

高校3年で見られた今宮の変化

 今宮に変化が見られたのは高校3年の夏からだった。
 走塁のやる気のなさは変わらずだったが、初戦の興南戦では、劣勢の試合展開から、8回に口火を切る二塁打を放ち、後続の適時打で同点ホームを踏んだ。当時2年生だった島袋(ソフトバンク)を打ち崩す痛烈な打球だった。2回戦では秋山拓巳(阪神)と対戦。投手として、怪物と言われた男に投げ勝った。3回戦では同じ150キロ右腕と騒がれていた庄司隼人(広島)と対戦、これも勝利した。

 その才能を発揮したと同時に感銘を受けたのは、彼のコメントだった。
 必ずといっていいほど、相手を称えていたのだった。
 秋山についてはこんな風だった。

「以前から対戦したいと思っていたピッチャーでした。彼の得意球のストレートを狙っていきましたが、個人的には完敗です。あんな重い球は初めてです」

 その謙虚な姿勢は、いいかげんなプレーや、やんちゃに見える立ち居振る舞いとは違って、彼の精神性の成長を感じさせるものだった。

 そして、準々決勝戦。
 センバツとの再戦となった花巻東との戦いで、今宮は眠っていた本能を見せた。

 花巻東はエース・菊池が先発し、今宮もマウンドに立った。しかし、4回3失点を喫すると、今宮は一度、三塁へ着いた。

 試合は点の取り合いになり、明豊のリードで9回表を迎えたが、花巻東の反撃を浴びて同点に。その時のマウンドには、1学年下の山野恭平(元広島)が立っていたのだが、試合が同点になると、その山野がマウンド上で半べそをかいて泣きだしてまったのだ。

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最終更新:8/21(日) 9:22

ベースボールチャンネル