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勝負は試合前から。甲子園の主将たちが語る「じゃんけん必勝学」

webスポルティーバ 8/20(土) 18:50配信

「勝負はじゃんけんから始まってんの。監督にはプランがあっからね」

 甲子園での優勝3回を誇る常総学院の木内幸男元監督の言葉だ。

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 相手との戦力を比較して、こちらが有利と思えば後攻、相手に分があると思えば先攻を選択するというのが木内元監督の考え方だった。取手二の監督時代、決勝で桑田真澄、清原和博を擁するPL学園を破ったときは先攻で初回に2点を先行。先手必勝で流れを作り、延長戦を制して“番狂わせ“を演じている。常総学院で常勝チームを作った後は、「ウチより弱い方が後攻を取ってくると、『おっ、この野郎』と思った」とも言っていた。

 木内監督が最後に優勝した2003年夏にキャプテンを務めていたのが、松林康徳部長だ。その夏、先攻後攻を決めるじゃんけんで松林は無類の強さを発揮。茨城大会から甲子園の決勝まで、なんと10勝2敗という成績を残した。松林の必勝法は、じゃんけん前の握手で強く握り、“最初はグー“を自分の声で始め、間髪入れずに「じゃんけんポン」に持っていくというもの。

「人間の心理として、強く握ると、グーは消えるんです。“最初はグー“の後にパッとやれば、相手はパーを出すので、チョキを出していました」(松林)

 握手後、自分の声で“最初はグー“を始めれば、じゃんけんをするタイミングはこちら側が主導権を握ることになる。間を与えないことで、相手は一番出しやすいパーを出す確率が上がるというのだ。

「2敗は柳ヶ浦の吉良(俊則、元近鉄=初戦の相手)と東北の片岡(陽太郎=決勝の相手)なんです。どっちも左利きなんですよ」(松林)

 利き手ではない右手を強く握る効果はなかったようだ。ちなみに、現在はじゃんけんに立ち会う審判員が“最初はグー“のかけ声をかけるため、この方法は使えない。

 今夏の甲子園初戦・近江戦では常総学院は初戦でじゃんけんに勝って先攻を選択した。茨城大会では後攻を選んでいたが、なぜ先攻だったのか。

「『甲子園の初戦はあがる(緊張する)から攻めてからがいい』というのは木内監督が言ってました。それと、今回は県大会が終わった後、疲れをとることをメインにしたんです。紅白戦とか実戦練習はあまりやれてなかったので、(緊張感のなかで先に守るよりも)先攻がいいと思っていました」(松林)

 ただ、指導者から「先攻を取れ」と指示はしなかった。先攻を選んだのは、キャプテンの中村迅の考え。その理由はこうだ。

「自分は後攻の予定だったんですけど、(佐々木力)監督に『ピッチャーに聞け』と言われて。(エースの鈴木)昭汰が『先攻がいい』と言ったので先攻にしました」

 なぜ、投手の意見を聞いた方がよいのか。その理由は、常総学院の相手・近江の伊東洋部長の言葉を借りたい。

「ピッチャーはまっさらなマウンドに上がった方がいいタイプと、そうでないタイプがいるんです。(先発した)深田(樹暉)は後者なんです」

 深田は立ち上がりの初回に2安打1四球などで2点を失ったが、緊張だけでなく、まっさらなマウンドの影響があったのかもしれない。

 埼玉大会37回無失点の最速152キロ左腕・高橋昂也を擁する花咲徳栄は“先攻派“だ。今夏は2戦目となる埼玉大会3回戦からすべて先攻。好投手を擁する場合、「守りからリズムを作る」と後攻を選択することが多いが、あえて先攻を取って「攻撃の姿勢を前面に出す」(岩井隆監督)のが狙いだ。

 先攻を選ぶようになったのは、高橋が背筋痛で登板できなくなった春の埼玉大会から。「昂也が戻ってきたときに強いチームになっていよう」を合言葉に攻撃力を高めようと取り組んだのがきっかけだった。夏になり、高橋が戻ってからも「昂也が先発で投げれば守りは今までより安定するので、攻撃でも先攻を取って攻守ともに攻めの姿勢を出そうということです」(村上直心部長)と先攻を続けている。

 とはいえ、じゃんけんに勝たなければ選択権はない。キャプテンの岡崎大輔の勝率は5割程度。本人も村上部長に「弱いんすよ」とこぼすほど、じゃんけんは悩みの種だった。そんな岡崎を救ったのが学生コーチの清川旺。岡崎から相談を受け、アドバイスしたところ、その日のじゃんけんで勝利。以来、信頼を得て、埼玉大会3回戦からすべて清川が指示をしている。

「あいこになったときのために、『最初がチョキで次はパーな』とか2つぐらい言います。根拠? 勘ですね(笑)。自分はじゃんけん強いんです」(清川)

 甲子園の初戦でも見事に勝って先攻を選択。初回に1点を先制して勝利につなげた。

 じゃんけんの弱さに悩むキャプテンは意外と多い。

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最終更新:8/20(土) 18:50

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